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2013.06.16(日)
でも満足そうな、楽しそうなお父さんに瑞希はいいか、と思ってしまう。高価なスーツはかえって申し訳ないけれど。
なんでこんなによくしてくれるのだろう?
それが不思議で仕方なかったけれどこの場で聞くことじゃない。
きっといつかは聞けるだろうか?
お父さん、と普通に呼んでいる自分がこそばゆかった。
本当のお父さんであるはずもない。施設で育って宗と出会って…こんな家族という気持ちが味わえるなんて思ってもみなかった。
ずっとどこまでも自分は一人なんだと思っていたのに…。
「電話うるさいんだけど」
明羅くんがディナーをいただきながらこそりと瑞希に耳打ちしてきた。
「…こっちも」
ポケットの中で引っ切り無しに携帯は震えっぱなしだ。
きっと宗はイライラしているに違いない。
「別に自分達のお父さんなんだから一緒にくればいいのにね」
明羅くんが小さく呟くのに瑞希も頷く。
向いに座っているお父さんの顔を見れば目尻がさがってずっと顔が笑みを作っている。
怜さんにも似てるし、宗にも似てる。
やっぱり二人のお父さんだよな、と瑞希は当たり前の事を思ってしまう。
「どうしたかな?おいしくないかい?」
「いえ、おいしいです…でもかえって申し訳ないような…」
「そんな事はないよ。この後送っていってあげるから。…なにやらずっと電話がなっているようだし?」
あ、やっぱり分かってたんだ、と瑞希は明羅くんと顔を合わせて苦笑した。
「仕方ないからテイクアウトを用意させよう」
お父さんが宗と怜さんの分まで用意してくれて瑞希と明羅は顔を合わせて笑った。
そのうちここに怜さんと宗も加わるのだろうか?
「ねえ?ここに怜さんと宗も入って食事とかになったら絶対変だよねぇ?男ばっかで!」
ぶぶっと明羅くんが笑っているのに瑞希も頷く。
「冗談じゃない。くれぐれも連れてこなくていい!」
お父さんが本当に嫌そうな顔で眉を顰めた。
「来る時は明羅くん、瑞希くんだけでいい」
「どうして?」
明羅くんがくすっと笑ってお父さんに聞いている。
「自分に似た顔が並んでたって楽しいはずないだろう!?」
「…楽しいとか、そういう問題じゃ…」
ないと思うけど…と瑞希も苦笑してしまう。
「ご馳走様でした!怜さんの分までありがとうございます」
「……仕方なく、だ」
宗と怜の分までわざわざテイクアウトを用意してくれたものを貰って明羅と瑞希は再び運転手つきの父の車に乗った。
こっちに、と言われたのは後部座席でお父さんが真ん中で両脇に明羅と瑞希だ。
そして明羅はうるさかった携帯を取り出して怜に電話をかけた。
「もしもし?今送ってもらって帰るね」
『……随分早い帰りだな?』
走る車の窓から外を見ればもう当然夜だ。
『瑞希くんも一緒だな?』
「勿論」
『宗がウチにいた。一緒に送ってもらいなさい』
怜さんの声が不機嫌…。
ま、仕方ないかな、と明羅は肩を竦める。
「宗が?うん。分かった。じゃあと少しで帰るね」
そう言って電話を切り明羅は瑞希と父を交互に見た。
「ウチに宗も来てるらしいので瑞希さんも怜さんの家でいいです」
「宗が?怜さんの所に?」
瑞希さんも驚いた顔。
「………」
お父さんは呆れ顔だ。
「…君達は本当にウチの息子達でいいのかね?あんなのよりももっと綺麗な娘さんとか可愛い娘さんとか、度量の大きい野朗でもいいが、いるだろう?」
なんで自分の息子なのにお父さんはそんなに嫌そうなのかな?
明羅と瑞希は笑ってしまう。
「怜さんがいい」
「宗しかいらない」
声を揃えて言うとお父さんは目を見開いてそして苦笑。
「怜さんと似てるお父さんもかっこいいよ?」
「宗のお父さんで…俺の…俺なんかの…お父さんに…なってもらって…嬉しい、です」
「……!」
お父さんが明羅と瑞希さんを両わきに掴まえて抱きかかえ、それぞれよしよしと頭を撫でられた。
そこで怜さんの家に到着。
「何してるっ!!」
がばっとドアを開けられ宗は瑞希さんを怜は明羅を父からひっぺはがした。
「お父さん、ご馳走様でした」
怜の腕が明羅の身体を縛りつけている中、明羅はくすっと笑いながら言った。
「いつでもまたおいで。瑞希くんも。私のほうこそありがとう。今日は思いがけず楽しかった。これは大切に使わせてもらうよ」
「もう行かなくていい!」
怜と宗の声が重なると明羅と瑞希は声をたてて笑ってしまう。
明羅と瑞希がお父さんからテイクアウトの分をそれぞれ受け取ると、父は息子達には声もかけず車を出して行ってしまう。
「…何で自分のお父さんなのにこうなのかな?」
じろりと明羅は怜を睨む。
「ね、瑞希さん?そう思うよね?お父さんは大人でかっこいいよね」
こくんと瑞希さんも宗に捕まれたままで頷く。
「ほう…そういう事を言うんだな?早く帰るって言ったのに約束を破って。さ、家に入ろうか?宗、そのまま帰るだろう?」
「当然。じゃ」
宗はそのまま瑞希さんをぐいぐいと引っ張りながら帰っていってしまう。明羅と瑞希は視線を合わせて苦笑しながら手を振ってまたね、と挨拶。
「ええと…?怜さん?」
「なにかな?」
……振り向いた今のその顔がお父さんそっくり、なんて言ったらショック受けちゃうから黙っておこう…。
fin
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一部の方から二階堂父に嫁達とのデートをプレゼントしたって!
…と言われてたので^^;
ちょうど父の日じゃ~ん!と思って急遽書いちゃいました♪
P数短いのであんまりデートシーンは書けてませんけど~^^;
こんなんでもよいですか~?(笑)