う~~わ~~~!キスしちゃった!
寝ぼけてたからだけど。
昨日の夢の続きかと思ったら違ってた。
顔がどうしてもにやけてしまう。
理人に顔をひっぺはがされたけど、でもしたに変わりない。
「それに…全然嫌そうな顔してなかったし!」
だからって理人からもっとという事もなかったけど。
階段を下りながら桜はそっと自分の唇に触れてみる。
きゅっと心臓が嬉しくて締め付けられた。
今日はいい日だ~!と桜は思いながらリビングのカーテンをざっと開ければ明るい陽射しが入ってくる。
…なんかすっかり自分の家みたいにしている自分自身に少し呆れる気もしないでもないが、理人に桜を拒絶している所は全然ないので好き勝手にしてしまう。
天気いいからあとで理人の布団を干してあげよう!
ホント自分で言うのもなんだけど、いい嫁になれるかも。
桜は自分に心酔しながらキッチンに入った。
理人が階段を下りてきて洗面所の方に行く気配を感じ、それだけでも顔はにやけてくる。
一晩中理人の腕の中にいて朝起きてチューなんて恋人みたいじゃないか!
実情は理人が熱出てて寒くて桜は湯たんぽ代わり、チューは寝ぼけて自分からだけど。
それでも何もないより全然嬉しい。
桜の身体がすっぽり入るような感じですごく安心して眠っていた気がする。
最初は心臓がどきどきしてうるさかったけど、でも理人の寝息を聞いているうちに桜も落ち着いてきたのだった。
理人の熱も下がったし、よかった、とどれもこれもに桜は朝から上機嫌になってしまうのだった。
理人が仕事に隣の診察室へ行くのを見送り、桜は洗濯したり、掃除機かけたりと自分でも甲斐甲斐しいと思う位動く。
自分の家じゃこんなに動かないのに。
……だってしてあげたい、んだ。
ほんと自分でも驚く位だけど。
陽射しが強くなってきたので理人の部屋の窓を開けて布団を干す。
空気の入れ替えも気持ちがいい。
二階の窓からよその家を見れば布団を干してる家が多い。
天気がいいし土曜日だし!そりゃそうだ、と桜は何でも笑いたくなってしまうくらい気分がいい。
理人のマットだけになったベッドにころりと桜は横になった。
ここで昨日はこうして…と思い出しながら身体を丸めて照れくさくなる。
どうしよう…。
やっぱ好きだ。
「理人…」
下の診察室からはいつもと同じようにキュイイインと桜が顔を顰めたくなるような音が響いてくるけれど、慣れたのか今は拒否というほどでもなくなっていた。
慣れるもんなんだ、と暢気に思ってくすっと桜は笑った。
「桜?」
ぺちぺちと頬を軽く叩かれてはっと目を開けると理人の笑い顔があった。
「…え?…あれ?」
きょろっと周りを見渡すと理人のベッドだった。
布団を干して横になってたらそのまま気持ちよくなって眠ってしまっていたらしい。
「え?理人もう終わったの?」
「ああ」
口を押さえながらずっと理人が笑ってる。
そのまま白衣を脱いで着替えを始める理人の背中を桜はじっと見た。
プールで理人の裸は見てるけど…。
やっぱいい身体だよなぁ…。
肩幅広くて筋肉がついて背中も綺麗だ。腹は割れてるし。
桜は自分のTシャツをぺろんと捲って自分の腹を見た。
………なんでこんなに違うんだろ。
「…………何してんの?お前」
理人が後ろを振り返って桜を呆れたように見ていた。
「え?なんで腹がそうなるかなぁ?と思って」
「普通なるだろ?」
「俺なんねぇんだもん!」
「……………」
理人が桜の顔をじっと見て桜のめくってた腹を見ると近づいてきて桜のTシャツに手をかけてさっと下げた。
「お前の顔と身体で筋肉ムキムキはある意味悪夢で恐怖だ」
「ひでぇ~~~~!」
「お前自分で考えてみろよ!マジでこえぇ!」
ん?と桜が頭で自分の姿を思い浮かべると確かにちょっと、いや、かなり変だ。
「う~~~ん……」
「な?」
でもうん、とは言いたくない。
「いいんだよ。お前はそれで!」
前に身長高いのも考えて自分の顔にそれは変だとは思ったが、とにかく男らしいのが自分にはまったくもって合わないらしい。
「……理人具合は?」
「大丈夫だ。プール行くか?」
「まさかっ!今日はいい。昨日8度7分も熱あったんだぞ!」
桜はベッドから降りて着替えを終えた理人と一緒に階下に降りた。
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