理人の手が桜の頭を押さえて、そして舌が理人によって捕らえられる。
「り…ひ、とぉ…」
身体が熱くなってくる。
理人の唇が桜に何度も重なってくる。
なんで…?
でも…。
「ん…ぅ……」
こんなオトナのキス、桜はどうしていいか分からなくて理人のされるがままになってしまう。
貪られるような濃厚なキスで、何度も理人は角度を変え、舌を絡めて吸われて理人の唾液と桜のものが交じり合う。
感じすぎて桜の身体が戦慄いてふるっと震え、もじもじするとやっと理人が桜の唇を解放したのに桜は思わず脱力して理人の上に倒れこむようになってしまうと、理人はくすくす笑って桜を抱きしめた。
「やっぱりお子様だ」
そうだけどっ!
抗議の意味を込めて真っ赤になっているだろう顔を上げるとまた理人がくすと笑って、手を桜の唇に添わせ、交じり合った唾液で濡れた唇を拭ってくれたのに桜はいたたまれなくてぎゅっと目を閉じる。
その唇をなぞっていた理人の指をかぷっと桜が噛み付いた。
なんとなく悔しい気がして。
すると理人がはぁ、と呆れたように大きく溜息を吐き出した。
「お前、それ煽っているのか?」
「…は?」
煽る?なんで?
桜が理人の指を咥えたまま目を開けてきょとんとするとまた溜息をつかれた。
「……仕方ねぇよな…。好きってどんな?なんて聞いてくるくらいだし…」
「だ、だ、だってっ!」
理人が指を引き抜き、そして起き上がると、桜の腰を掴んで隣に移動させられ、座らせられた。
隣でもいいけど…でも触っていたい。
桜は理人のTシャツの裾をぎゅっと掴んだ。
本当は抱きついていたい。
だってずっと会えなかった。苦しかった。
でも、どうして…キス?
桜は好き、って何度か言ったけど理人からは言葉はない。
前のキスは桜から重ねただけの拙いキスだったけど、今のは違う。
だって…理人から…舌、絡めて…。
かぁっとまた今された事を思い出してくると身体が火照ってくる。
「初めから可愛いとは思ったんだ」
「…え?」
理人が口を開いたのに桜が顔を上げ、隣に座る理人を見ると理人の切れ長の目が桜を見つめていた。
「顔が、だけという話じゃないぞ?今時の幼稚園児以下に歯医者が怖くて…俺のここをぎゅっと掴んで涙を堪えてるのが可愛いな、って。でも最初はホントそれだけ」
う…。確かに高校生だとは思えない態度だった事は認める。
「それが、意外にしっかりしてて、飯作ってくれて。それがまた美味くて。感激した。…プールいきゃあ、男が寄ってきて心配で、映画行けば妹助ける為に自分が向かっていくわで俺は心配でおかしくなるかと思った」
……そう、なの…?
桜は黙って理人の話す言葉を聞いていた。
「そしたら今度は好きだ、とキスしてくんだから…」
くっと理人が苦笑する。
「それが急に来なくなった。……正直ほっとした」
「え…っ?」
ほっと、した…?
やっぱ…俺、いらない…?邪魔だった…?
「このままいったら自分がやばいとは思ってたからな。…でもずっと気になって…お前はまだ高校生だし、どうせすぐ目移りして気持ちも変わったんだろ、と…」
「変わんないっ!だってこんなん初めてだから!今までと全然違うって黒田にも言われた!」
「…今まで?」
「うん!俺、今までちょっといいなと思う女の子何人にもに告ってきたけど、黒田がそれと全然違うって…本気じゃねぇの、って…黒田、俺ん事なんでも知ってるし」
「……何でも?」
「うん。だって小学校からずっと腐れ縁で、柔道も一緒だった。今は俺は辞めちゃったけど。だからなんでも知ってる」
「……キスも?」
「はぁ!?そんなんあるわけないだろっ!キショっ!それにそれ、は理人が初めてだって言っただろ!」
「…ああ、そうだったな。んじゃ全然なんでも、じゃないだろ」
「だ、だ、だって…」
「桜、大人の本気見くびるなよ?覚悟しとけ」
「本気?覚悟?」
「そう。お前が来なくなってそれならそれでいい、と大人だから我慢できた。でもお前は戻ってきたんだ。自分で」
「り、ひと…?」
理人の手が桜の顎にかかった。
そして理人の顔がまた近づいてくる。
「桜…もう一度言え?」
何、を…?
どきどきとずっと心臓がうるさい。だって理人の顔がもう目の前で唇が触れそうな位だ。
ちょっと唇を突き出せばキス出来る。
「理人…好き」
「ああ…俺もお前が好きだ」
嘘だ!
…と思ったら理人がもう一度キスしてきた。
何度も啄ばむように。そしてまた舌が絡んでくるのに、桜の身体は蕩けてしまいそうに力が抜けていった。
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