ぱちっと桜が目を開けると目の前に理人の背中があった。
嬉しくなって思わずぺたりとくっ付いてみる。
桜とは違う広い背中だ。
水泳をやってたからか肩幅が広い。よく水泳をしてると逆三角形の身体になるなんていうけど本当みたいだ。
いいよな、と思いながらすりと顔を擦りつけ、満足してから桜は理人のベッドから起きだした。
ぶかぶかのTシャツのせいで肩のラインがべろんと見えるくらいすっかりずれている。
…ムカツク。
仕方ないけど。
「ん…?桜?」
「あ、理人おはよ」
もぞりと理人が桜の方に寝返りを打ってそして手を伸ばしてきたのに桜は顔を緩ませてもう一度ベッドに近づき、その理人の手を掴んだ。
「!」
すると理人が桜の手をぐいと引っ張ると抱きかかえてきたのに桜は息を飲んでしまう。
「もう起きる時間か?」
耳元に理人の声が響く。
「う、うん…」
どきどきする。
理人の腕が緩んで桜は慌てて逃げるようにベッドから降りた。
「俺、先起きてるから!用意してるっ」
じゃ!とそそくさと部屋を出て行った。
だって!朝からハグなんて…。
う~わ~…と顔が真っ赤になってるのが自分でも分かる。
昨日の好き、は夢じゃなくて本当なんだ~!
「おっはよぉ!」
ご機嫌で登校すれば黒田が呆れた顔をしていた。
「……わかりやすいヤツ。なに?うまくいったのか?」
「おうっ!」
親指を立てて桜がにっと笑うとやれやれと言わんばかりだ。
「で?何あったんだ?」
「え~…雨ん中で理人待ってたら理人が来てくれて、そんで家行って、好きって。昨日はお泊り!」
へへへ、と桜がへらへら笑っていると黒田が不思議そうに桜を見た。
「…なんともねぇもんなの?」
「ん?何が?」
「えっちしたんだろ?お前普通っぽいしそんなもん?」
「ばっ!し、し、してねぇよっ!」
したのはキスだけだ!エロいやつだけど…。
「え?してねぇの?なんだ。……普通好き好きになってお泊りになったらなだれ込みそうなもんだけどな…。大人だから我慢できんのかね?」
「し、し、知らねぇ、よっ」
えっちなんて考えてもなかった!
「………普通そんなもん?すぐ…しちゃう…?」
「いや、普通高校生はお泊りがそんな簡単にできねぇからな。俺だったら好きな子といてそんなシチュだったら我慢しねぇけど」
「そ、そ、…そう…?」
桜は理人との濃厚チューと理人からの言葉とか態度でいっぱいいっぱいになってて、そんな事思いつきもしなかった。
「……相手がお前じゃなぁ……ま、とりあえず昨日までの落ち込みようから脱出できたのはよかったんじゃね?」
「あ、うん…まぁな」
へへ、と桜は顔を緩ませる。
えっち!
全然考えてなかった!
そういや、キスしたくなったら、抱きたくなったら、好き、って理人言ってた!
どうやったって桜が抱かれる方だけど…。
理人の腕の中は気持ちがいいからそれも嫌、ってのはないけど…。
男となんか付き合った事ないって理人言ってた。
……理人は桜を、抱きたい、とか思うの?
自分の平べったい胸を思わず見てみる。
そしてクラスの女子を眺める。
女じゃなくても抱きたい、って理人は思うのだろうか?
「う~~~~ん???」
「なに?」
「理人…えっちしたい、って思うのかな?」
「……しらねぇよ。俺じゃなくて本人に聞けば?」
「だ、だ、だって、それじゃ俺がしたいみたいじゃないか!」
「したくねぇの?」
「…ってわけじゃねぇけど…」
特別したいっ!って感じでもないような…。
だって、だって、あんなとこに…?
「……入るもんなの?」
「ん?何が?」
「だから、ナニが!」
声は小さく。始業前で教室はざわついてるからこんな話を朝っぱらからしてるなんて誰も思わないだろう。
桜は顔を真っ赤にしてるはず。その桜を見て黒田はちょっと考えてああ、と頷いた。
「入るんじゃねぇの?よっぽどじゃなきゃ。だからゲイがいるんだろうし?でもお前ちっさいしな。先生デカそうだからどうだろ?でも上手そうだしな。大丈夫じゃねぇの?」
で、で、でか、そう……。上手、そう…。
こんな事学校でダチに相談ってどうよ?と思いながらも誰にも聞きようもないし、恋愛が分からない桜はどうsても黒田が頼りだ。
そんな黒田の事よりも、思わずプールの時の理人を思い出してしまう。
それと朝の理人の背中。
それに昨日理人に抱きついたこととか。
熱あった時にすっぽり抱きしめられた事も。
アレを裸で…。
しかもまだ記憶に新しくて、唇に感覚が残っているかのように昨日のエロいキスまで思い出して身体が熱くなってくる。
そういや、昨日のあのキスだけで桜は気持ちよくて身体が熱くなったんだった。
もっと気持ちイイ…?
どうしたって興味津々になってしまう。
テーマ : 自作BL小説
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