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桜誘う桜守 59

 家公認で家出中。
 一体何の冗談か。
 桜的には全然いいけれど!
 いい、はいいんだけど…。
 あんなに母親に煽られて、えっちい事が桜の頭を過ぎってたのに結局理人とはただ一緒にベッドに入って寝ただけ。
 土曜日も日曜日も。
 必要な荷物を取りに家に戻っても母親にも撫子にも止められる事もなくじゃあね~と軽く言われただけ。

 いったいどうなってるんだ?
 それに理人も!
 理人は全然えっちい事する気ねぇのかな…?

 「おっす。どうした?また問題か?」
 黒田が桜がむぅっとして席に座っているのに声をかけてきた。
 黒田とは小学校から一緒だけど、学区が広くて結構家は離れているので同じ駅を使っているわけではなかった。
 いちいち約束なんてのもしないし一緒に登校なんてした事も用事がなければしない。

 「問題っつうか…俺また家出中」
 「また?今度はなんで?また撫子ちゃんと喧嘩?」
 「ちげぇよっ!」
 「また先生ん家?」
 「そ…。だって……」
 桜が思わず言いよどんでしまう。
 「だって?」
 黒田が自分の席に座りながら促した。

 「うん…理人との事…母親にばれて…いや、バレてっていうか、自分で口滑らせたんだけど…」
 「…………マジ?」
 「まじ」
 「そんで家から追い出された?」
 「それが、ちげぇんだ……」
 あったことを話すれば黒田は豪快に笑い出した。
 「まじすげぇ!桜のお母さん!いや!でも分かるっ」
 「分かるってなんだよっ」
 「だってお前に女なんて考えられねぇもん。あの先生といる方が年は離れてっけどお似合いだ」
 怒っていいのか喜んでいいのか複雑だ。

 「う~~~ん、でもまだだな…」
 「何が?」
 「男は結婚は18だろ。お前まだ17じゃん」
 「ばかかっ!」
 そもそも男同士で結婚できねぇだろ!
 何言うのかと思ったら!
 「お祝い何いい?ゴム?」
 馬鹿にするように笑いながら言う黒田をじろ~りと桜は睨んだ。
 「最低!」
 「あ、なんだ、まだ必要じゃないのか。一緒にいてまだ…」
 かわいそうに、と言わんばかりの目で黒田が見る。

 「……普通…する…?」
 「あ、なに?そこで悩んでたのぉ?」
 「べ、べ、、別に、悩んでた…ってほどじゃねぇ、けど…」
 だって理人がしないから…。
 やっぱ男なんてヤかなぁ、とか…思ってしまう。
 「お母さんに挨拶までするんじゃ軽い気持ちで、ってなわけでもねぇだろ。先生は高校生とも違うんだし」
 「……あ…そ、っか…」
 「だろ。して、って可愛く言えばいいじゃん。せっかく顔は可愛いんだから?」
 「い、い、言えるか!それに別に俺、何が何でもしたいわけ、でもねぇ、し…」

 「……だからじゃねぇの?」
 「え?」
 「お前がそんな状態だから?」
 …そう、なの…かな…?
 「でもしたくないわけ、でも…ない…」
 だってキスは気持ちイイし。
 「お前がそんなぐだぐだだからじゃねぇ?っつっても俺だったら速攻どうにかしていただいちゃうけど」
 「…………やっぱ撫子やらねぇ」
 「は?なんで撫子ちゃん?」
 「なんでもねぇよっ」
 はぁと桜は溜息を吐き出した。
 
 理人は優しい。ずっと桜といると笑っている。
 たまに苦笑の時があるけど、それは桜がガキだから?
 まだ高校生でガキだから…?
 でもキスしてると桜だって気持ちがよくなってもっと、って思ってしまうのに…。
 それでも理人はいつもそこで桜を離してしまう。
 子供はここまで、と言われているようで、拒絶されているように思えてしまう。
 そうじゃない、とは思うけれど…。
 じゃあ黒田が言ったように桜から?
 でもなんかそれも…。
 そのうちなるようになるかな…?


 …と思ったんだけど、毎日同じ。
 変わらない。
 一緒にいられるのは嬉しい。
 キスも。
 桜がキスで感じてしまってもそれまでだ。
 理人は感じない、のかな…?
 なんかそればっか気にするようになってきてしまった。
 どうして理人はしてくれない?
 色気ないから?
 したくないから?
 ガキだから?
 どうして?なんて聞けない。
 家出て一緒いるようになってからそればっか頭をぐるぐるしてる。
 
 「桜、もうそろそろ帰った方いいんじゃないのか?」
 「…帰らない!」
 夜ソファでテレビを見ながら理人が促してくる。
 毎日だ。
 桜がいたら邪魔なんだろうか…?
 
 
 

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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