「あつ~~~いっ」
シャワーを先に借りて上半身裸のまま桜はぱたぱたと手で顔を扇いだ。
もうすぐ理人が帰ってくる時間だ。暑くてTシャツも着たくなくて桜はそのままエプロンをつけてキッチンに立つとすぐにがちゃりと診察室へ行くドアが開いた音がして桜が出迎えの為廊下に喜んで出て行った。
「おかえりなさいっ!」
「ただい………っ!!!?おま…なんて…カッコ……っ!ああ、…なんだ下は穿いてるのか…」
ほうっと理人が息を吐き出している。
格好…?
桜は首を傾げて自分の姿を見てはっ、とすると茹蛸のように真っ赤になった!
前から見たら見た目裸エプロンじゃんっ!
「ちげぇって!!!暑くてっ!シャワーしたしっ!キッチン立つと暑いんだぞっ!」
あわわわと桜は慌ててエプロンをはずしてばたばたとリビングに戻り、置きっぱなしになっていたTシャツを着た。
下は勿論短パンを穿いてる!
穿いてるけど!チョーー恥ずかしいっ!!!
「り、理人も先!シャワーしてくるっ!?」
「ん…?あ、ああ…そう、だな…」
理人の視線が彷徨っている感じがする。
そして桜の言葉に頷いて浴室に消えたのにほうっと桜は安堵の溜息を吐き出した。
料理の準備!
今の恥ずかしい事は忘れて!
桜はそう思いながらそっと引き出しを開けてケーキについていたピンクのリボンを眺めた。
何も結局プレゼントを用意出来なかった。
そしてまだ誕生日おめでとうも言ってない。
理人も誕生日だなんて一言も言わない。
料理は一応ステーキ!肉はそんな高いやつじゃないけど。
でもそれ以外はいつもとあんまり代わり映えしないと思う。
なんかなんとなく落ちこんできてしまう。
やっぱり桜じゃ子供すぎるだろうか…。
ぶんぶんと桜は頭を振って気持ちを切り替えて理人の為の晩御飯の用意に取り掛かった。
料理におや?というような顔を理人がしたけれど何も言わずにご飯を食べた。
いつ誕生日おめでとう、と言おうかと桜は頭がぐるぐるして自分で作っておきながら味も分からない位だった。
それにプレゼント。
誕生日おめでとうだけで、プレゼントなしってやっぱありえない。
どうしてもリボンが頭を過ぎってしまう。
ケーキも昨日の残りが冷蔵庫に入っててもうお膳立てしてあるようなものだ。
味も分からずどこか落ち着かないまま食べ終え、片付けを済ませる。
理人はダイニングテーブルからリビングに場所を移動してカルテを眺めていた。
どうしよう、ばかりが桜の頭をくるくる回っている。
「理人、ケーキ食う?早く食べないと悪くなっちゃうよ…?」
「ああ、そうだな」
片付けを終えて桜が声をかけると理人は何の疑問もないみたいに頷いた。
「コーヒーは?」
「さすがにいらないかな。ケーキもって桜、おいで」
「う、ん…」
桜は冷蔵庫からケーキを取り出し、皿に取り分け、そして引き出しからリボンも取り出した。
心臓がどきどきする。
理人がテーブルに広がったカルテを片付けたのでそこにケーキを置き、ソファに並んで座った。
ちゃんと言わないと。
「あの…理人…」
「うん?どうした?顔真っ赤だぞ?」
「ケーキ、は昨日貰ったやつだけどっ!……誕生日、おめでとっ」
理人がびっくりした顔で目を見開いて桜を見た。
「…知ってたのか?」
「知ってたっ!免許証見せて貰った時にっ」
「ああ…」
なるほど、と言わんばかりに理人が納得したような声を上げた。
「俺なんか桜がコーヒー入れてくれた時に思い出した位で自分でも忘れてたのに…。ありがとう」
理人がくくっと笑ってそして桜の頭を撫でた。
「そ、れでっ!…その、何かプレゼント…って思った、んだけど…」
「いいよ、別に」
ぶんぶんと桜は頭を振った。そして真っ赤な顔のままリボンを取り出して理人に渡した。
「?」
薄いピンクのリボンになんだ?と理人が首を傾げた。
「結んで?」
桜が手を差し出した。
理人は無言で桜の手首にリボンをかけた。
「理人はいんないかも、しんない…けど…っ」
「……………こんな事されたらもう止めらんねぇぞ?」
「いい、よ……いらないっ、って…言われるより…いいもん…っ。なんかプレゼント買うのも俺、自分で稼いだお金じゃないし…違う、と思って…。だからっ…」
理人が怖い真剣な目で桜を見、そして桜の身体をがばりと抱き寄せるとソファに押し倒しながら激しくキスを求めてきた。
何度も何度も荒々しく。
「り、ひと…」
い、今すぐ!?な、の…っ!?
「ま、…て…」
「待てない」
桜の訴えはすぐに却下されてしまった。
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お知らせ♪
イラストギャラリーに坂崎若様さまよりいただいた
桜と理人upしました~^^
テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学