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熱視線 円舞曲~ワルツ~6

 なんとなくいたたまれない。
 明羅は朝食をそそくさと食べて後片付けする。
 「俺あっち籠もってくる、からっ」
 じゃ、とパソコン部屋に引っ込んだ。
 なんか二人が並んでいると威圧感を感じる。
 そこにあのお父さん加わったら…?
 怖い…。
 明羅は頭を振ってヘッドホンをした。

 
 怜さんのワルツ。
 燕尾服で…。
 「あっ」
 明羅は写真を貰ったことを思い出してバッグから取り出すとそれを眺めた。
 かっこいい…。
 明羅が持っていないものを全部持っている人。
 音が聴こえてきそうだ。
 写真を傍らに置いて明羅はパソコンに向かった。

 ふぅと息を吐き出して後ろを振り向いたら怜が部屋のカウチソファで寝てた。
 明羅は集中しちゃうとどうも世界がシャットアウトされるらしく夢中になってしまうのに、その間怜はこのカウチで譜面をみたりしてる。
 「…怜さん…」
 そっと明羅が近づいたけど目を覚ます気配はなくて…。
 あの燕尾服とは違う普段の怜だ。
 練習のピアノも全部明羅のもので…。
 「…いい、かな…?」
 そっと明羅は怜に顔を近づけた。
 ちょんと唇を重ねて恥かしくなった。
 「…なんだ?それだけ?」
 「っ!!」
 怜の腕が伸びてきて明羅の身体を捕まえて、横になった怜の身体の上に乗っかった。
 「お、…起きて、たのっ!?」
 「起きたの」
 顔は真っ赤になっているはず。
 「ん?」
 怜が自分の唇を人差し指でちょんちょんと指差した。
 「もっと」
 明羅は怜の身体に跨って、怜の肩に手をついて顔を近づけた。
 いつも怜さんからのキスを待ってるけど…。
 きゅっと目を閉じて怜にキスした。
 「足らねぇな…もっと、だ」
 何度も何度も明羅から重ねて、そして怜にいつもされるように唇を啄ばんだ。
 「んぅ…」
 そしたら頭を押さえられて怜の舌が明羅の口腔に襲ってきた。
 絡められて、吸われて…。
 唾液が伝っていく。
 「ゃ……」
 ぞくっと明羅の身体に官能が走りそうになった。
 もうすぐに反応してしまう身体が恨めしい。
 「………っ!……れ、怜さんっ…!」
 「んあ?何?」
 唇を離したけど顔は真っ赤で、耳まで熱い。
 もじ、と身体を捩ると怜の硬くなったものを身体に感じた。
 「ん?分かった?当然でしょ…お前可愛いから」
 「ぁっ…」
 ぐいと怜の熱くなった腰を当てられれば思わず声が漏れて口を押さえた。
 「本当に…困ったチャンだなぁ。……する?」
 明羅はぶんぶんと首を振って怜の身体から降りた。
 「なんだ。残念」
 そう言いながらも怜は明羅を逃してくれた。
 やる気満々ではなかったらしいのにちょっとほっとして、ちょっと残念に思う。
 「…えと、宗、は?」
 「とっくの前に帰った」
 怜は苦笑しなから身体を起こした。

 
 「何その写真…」
 パソコン脇に置いてた写真に怜が気付いた。
 「え?生方さんに貰ったやつ。かっこいいから」
 「…………それはどうも」
 怜の眦が仄かに染まってるのに明羅の顔が弛んだ。
 可愛い。
 「俺練習してくる。お前はまだ、だろ?」
 「うん」
 怜は照れたのかそそくさといなくなって、少ししてからピアノの音が聞こえてきた。
 幸せすぎる、と明羅は口元が上がった。
 怜の為の曲。
 それを認めてくれるのが嬉しい。
 弾いてくれるのが嬉しい。
 誉めてくれるのも。
 もう全部。
 しばらく怜の音を聴き、そして再びヘッドホンをつけた。
 

 ワルツ…。
 だけど…。
 明羅は首を捻った。
 軽やかな前半。
 なんだけど…。
 なんか真ん中がこうねっとり感がして…どうもヤラしい、感じがするのは何故…?
 最後は華々しい感じになったけど…。
 華麗な、ではないような…?
 でもちゃんとワルツだし?
 怜さんに聴いてもらってみて直せるようなら直そう。
 「怜さん、ちょっといい?」
 「おう」
 明羅が顔を出して呼ぶと怜が来た。
 プリントアウトした譜面と機械で作った音を流す。
 怜は黙って譜面を追って聴いていたが中間部で顔がにやけてて、やっぱり変だよなぁ…と明羅は怜の反応を見た。
 「………お前さ…」
 怜の口元が弛んでる」
 「面白ぇな…」
 「真ん中…変、でしょ?」
 「いいやぁ?いいと思うけど?」
 「え?」
 「ヤラしくていい感じ~」
 かっと明羅の顔が火照る。
 やっぱりそう聴こえるんだ!
 「いや、そう聴こえるのは俺とお前だけだ。どれ」
 怜が譜面を持ってピアノに移動するのに明羅も後ろをついていった。
 
 

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