--.--.--(--)
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
2012.09.08(土)
怜が弾くのを明羅は顔を真っ赤にして聴きながら譜めくりした。
なんでエロい…の?
そして怜の弾き方がまたヤラしくて…。
弾き終わった譜面を明羅は丸めた。
「や!これだめ!」
「なんでぇ?いいじゃん。俺に合ってるでしょ?俺は初めてワルツが楽しく弾けたぞ~」
「でもだめ!……怜さん、弾き方ヤラしすぎるっ」
「仕方ないじゃん?曲がエロい」
怜がにやにや笑ってる。
「だからだめっ」
「いや、まじでいいとは思うぞ。ジュ・トゥ・ヴよりよっぽど欲しい感が出てて…<あなたに捧げるワルツ>なんてどぉ?ナニ捧げちゃうんだろぅ~?流行りそ~」
ぶぶぶっと怜が笑うのに明羅は唸る。
「だめだめっ!」
「いいって。俺が許す。お前、ダメなんじゃなくて恥かしいだけだろ?」
明羅は紅潮させた顔を俯けた。
「芸術家なんて自分をさらけ出してナンボだろ?出せ出せ」
「だって…軽やかで、華麗なワルツになるはずだったのに~」
「俺には合わないって事だ」
怜はずっと笑ってる。
「お前ほんと俺の事わかってるよな」
「……そう?」
「そ。この焦燥感たっぷりなスケール。まさしくさっきの俺?」
「…は?」
「したいのに~、させてくれない~」
てれてれと軽やかに怜の指が鍵盤の上を駆け下りる。
「そ、そんなんじゃ…っ」
だめだ、これは聴いてられないかも。
「明羅、今のはおふざけだが…。もう一度弾くからちゃんと聴け」
「ええ!…いい、いらない」
明羅は首を振った。
「いいから。今度は崇高に弾いてやる」
そういって怜がもう一度弾き始めた。
あ、今度はまともに聴こえる。
同じ音なのに、なんで別な曲のように聴こえてしまうのか。
さっきはあんなにヤラしくてエロく聴こえたのに今度はそうじゃない。
「な?」
引き終えて怜が同意を求めてくるのに明羅は頷いた。
「全然違う」
「でも!俺がお前に弾く時は前のやつな!すっげ気に入った」
怜が笑いながらまたねとりとエロく弾き始めて明羅は耳を塞いだ。
「やだ~~~」
怜は気に入ったのかしばらくそれを色々試して弾いていた。
明羅は改めてやっぱり怜のピアノはすごい、としか思えない。
明羅が弾いたってあんなに音色は変わらない。
ただきっと淡々と弾くだけだ。
なんであんなに自在に音を操れるんだろう?
「何?」
じとりと怜が楽しそうに弾いてるのを明羅は凝視した。
「…ずるい」
すると怜がくすくすと笑い出す。
「お前がそういう曲にするからそう弾けるだけだ」
「俺は弾けないのに」
明羅はむくれた。
「お前が自分で弾けたらきっと俺は用なしだな」
「………そんな事ない」
「いや、そうだろ?お前が始めから追い求めた音を自分で持ってたら俺のコンサートに来たってそれこそ普通にしか思えないだろ?」
それはそうかも。
「じゃ、やっぱり怜さんだけ特別なんだ」
「だといいけどな」
自嘲気味に言う怜に明羅は首を傾げた。
「怜さん?」
「ずっとそうであれればいいが…」
明羅はくすっと笑った。
「でも多分ピアノなくても平気だよ?怜さんだけが特別なんだ。だって学校始まって会えなかった時なんて…ピアノなんてどうでもよかったから。ただ声聞きたくて、会いたかった、だけ…だったから。ピアノの事なんて何にも思ってなかった。今だって…ピアノ聴くのは勿論好きだけど。でもただくっ付いてるのも好き…だし…その時にピアノいらない、し…」
怜が明羅にちょんとキスした。
「ほんと、俺浮上させるのうまいよな」
「?」
「いや、なんでもない。俺もお前がいてくれればどうでもいいんだ。いい大人がこんな事いっちゃいけないが」
くっと怜が笑った。
「今更か。明羅を掻っ攫うように連れてきちゃうし?」
「なんで?俺も嬉しいから…」
明羅は怜のTシャツを掴んだ。
「欲しいの、怜さんだけ、なんだ」
怜が明羅の唇を啄ばんだ。
「俺もだ。まったく自分に驚きだ。10歳も年下の男の子にこんなに翻弄されるなんて思ってもなかった」
男の子って…。
そりゃ怜さんよりずっと年も下で身体だって華奢だけど。
「子供じゃないし」
「子供にこんなことするか」
怜の舌が明羅の舌を絡め取った。