結局買い物をしないまま、桜は理人から離れず、そのまま理人の家まで帰ってきた。
泣いてたから顔は上げられない。
泣き顔見せていいのは理人にだけだから。
「桜…ごめんな?」
何度も何度も理人が謝る。
夏の暑い時にへばりついてるなんてそれだけで汗でべたべたになるけれど離れる事が出来ない。
「理人のばかっ」
「うん。わりぃ」
玄関が閉まってやっと桜が顔を上げると理人が軽くキスした。
まだ手は理人から離せない。
さすがに落ち着いて身体の震えは止まったけれど離したら消えそうで怖かった。
トラウマにはなっているんだろうとは思う。
頭に響く車のブレーキ音を思い出すとまた身体が震えてしまう。
「桜」
震えた桜を理人が抱き上げた。
そのままリビングまで理人に抱きついて移動する。
ソファに理人の膝に乗ったようにして座ってもぎっちりと抱きついた。
何度も何度もブレーキ音が頭に鳴り響いてしまう。
理人の温かい体温と心臓の鼓動を何度も何度も確かめてしまう。
桜は携帯を出した。
「もしもし撫子?俺、今日理人んとこ泊まるから。じゃ」
言うだけ言ってぽいと携帯をテーブルに置き、また手は理人を掴む。
いつもだったら泊まっていい?と理人に確認するけれど、今日は帰れといわれても無理だ。
またじわりと涙が浮かんでくる。
桜が電話で言い切ったのに理人は何も言わなかった。
「桜」
理人が何度も大丈夫だと桜に確認させるように、キスしてくれる。
「痛いトコとか…ない?」
「ない。全然」
本当に?伺う様に理人を見ると理人が桜の目に潤んでいる涙を拭ってくれる。
「…今日、撫子ちゃん来た」
「…え?」
「診察終わって、公園のブランコにポツンと座ってる子がいて、一瞬桜かと思ったんだが。撫子ちゃんだった。…桜がちゃんと泣いてるか、って心配してたぞ…?」
「……泣くの…理人の前でだけ…だ」
「うん」
理人が桜の目元、耳、頬とあちこちにキスするのにくすぐったくなる。
「理人…したい…」
「うん」
桜が確かめるように理人の頬を手で挟んでキスすると理人が薄く笑った。
「それは大歓迎だけど…ホント大丈夫だぞ?」
「怪我してないか全部見る」
「え~…それは俺でもちょっと恥ずかしいかなぁ…」
「いっつも理人は俺の全部見てんじゃん!今日は俺するから!理人動かなくていい」
「いや、だから別になんともないって…」
「ダメだ!」
桜が理人のTシャツに手をかけて脱がせていく。
「う~ん…シャワーいこっか?汗クサイだろ?」
「いい。くさくない。理人の匂いだ。………………俺がクサイの?」
「いいや?桜はいつもいい匂いだけど?」
理人が桜の首元にキスして舌で舐めた。
「ちょっとしょっぺ」
「………やっぱシャワーいく」
「いいって!桜がしてくれるんだろ?」
「んっ。り、ひと!動かないでよ!」
「無理」
理人の手が桜の制服を脱がせていく。
「公園にいたアイツ…ナニ?」
「え?ああ…。前に告白された事あって…。そん時俺ボロクソに貶しちゃってさ…。先週理人と買い物行ったの見られてたみたいでまた告られた」
「ああん!?じゃ、投げ飛ばしたのって!」
「ん?ああ。なんかキスでもされそうだったから」
「…桜…ガッコで何人から告られてるんだ?」
「え?知らない。もう忘れた。だって男だよ?知るか。キショ。アイツは一番最近だったから覚えてたけど」
はぁ、と理人が溜息を吐いていた。
「…やっぱ心配だよ」
「なんで?俺がしたいの理人だけだもん」
桜が理人の唇を舐めて啄ばむ。
「桜ちゃん…エロ…」
「こんなの見るも理人だけだ。…やだ?」
「全然。泣き顔もエロ顔も好きです」
「………理人…固いの当たってる、んだ、けど…?」
理人の膝の上で向かい合わせに上半身だけ裸だけど、桜の身体に理人のが当たっている。
「当たり前だ。桜ももう勃ってるだろ?」
「あぅ…」
理人が手を桜の前にふれると声が出てしまう。
「ほら…な」
くすと理人が笑って桜のベルトに手をかけた。
「理人は動かないで、って言ったのに!」
「後ろほぐしてやるだけだ。いいよ?あとは桜の好きにして」
理人がにっと笑いながらキスした。
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