「お盆の時、お父さんのお墓参りっていつ行く?」
「え?ウチ?決まってないよ?母親の仕事の関係とかもあるし。まぁ大体13、14、15日のどっかだけど」
「…お寺って遠いのか?」
「ううん。車で20分位」
「………」
理人が考え込んでいる。
「理人は家…実家戻んないの?」
「いや、一応戻る。戻るけど休みの全部を向こうにいる気はないから。1泊か2泊位」
「…ふぅん」
理人の家で夜ご飯を作って、一緒に食べて、そして桜は家に帰る。
夏休みでも泊まるのは金曜か土曜。
もっと泊まっていたいのに理人がうんと言ってくれないから。
桜は一緒にいたいと思うんだけど理人はそこまで一緒にいたいとは思ってくれないのかな、とちょっと凹み気味になってしまう。
「ウチは誰もお客さん来るわけじゃないし、わりとお盆て暇。ああ、黒田が泊まりに来てることが多いかな」
「…なんで?」
「前にも言ったろ?あいつ兄弟多くて、おまけに親戚とかも集まるらしいんだよね。それで避難しにくる」
理人の眉間に深く皺が寄る。
「あのね。ほんとにアイツはダチだけだってば!」
「やっぱ戻りたくねぇな…いや、ダメだ…戻らねぇと。今回は絶対」
「?」
なんかあんのかな?
どうして?という意味をこめて理人を見たら理人が苦笑した。
「勝手に見合いさせられそうなんだよ。戻ってこなかったら話進めるとか、勝手に選ぶとか!」
…お、み、あい…?
結婚を前提にってやつ…?
桜は大きく目を見開いて理人を凝視した。
「桜?」
はっと桜は目をしばたかせた。
「ちゃんと断るために行ってくるんだ。…気にするか?言わない方が良かったか?」
「ううんっ!言ってくれた方がいい!」
ちゃんと桜の事を真剣に考えてくれているって事だ。
「……メールとか…電話…ちょうだい、ね…」
いつも歩いても5分の距離なもので普段はメールとか電話が極端に少ない。
学校帰りは直接理人の家に来ちゃうし、大体メールはコーヒー入ったよ、がほとんどだ。
帰りも理人が桜の家まで送ってくるし、家の前でおやすみって言っちゃえばそれで終わりだから。
「ああ、勿論。あんま電話とかした事ないからな」
「…うん」
なんか桜ばっかり理人を好きな気がする。
いや、ちゃんと桜の事考えてくれているのは分かるけれど、桜の方がずっと、いっぱい好きだと思う。
「……なんかずりぃ」
「ああ?何が?」
「……なんでもないっ!」
理人は桜と13も違う大人だから、仕方ないけど…。
普段がこんなだからえっちする時に理人の目が変わるのが見たくて桜からねだるようにしてしまうのかもしれない。
片付けを終えてソファに座る理人の膝に乗って抱きつきキスする。
「なんだ?」
「べつにぃ」
すぐに笑いながらキスを返してくれるけど…。
「送ってく」
……ほらね。
ちゃんと勉強しろとか…。そりゃ桜が高校生だから仕方ないけど、なんとなく子ども扱いな気がしてしまう。
仕方ない!けど、さ…。
面白くない気分のまま家に理人に送られて帰る。
たった5分だし、送るのなんていらないっていってるのに理人はダメだと言い張って桜が帰る時はいつも送ってくれる。
…理人の家の玄関でばいばいされるよりは桜の事が心配だから、というのが分かってちょっとは嬉しいかも、だけど。
なんかもうホント理人の事ばっかじゃん!と桜はふるっと頭を振った。
「桜?」
夜の道で隣を歩く理人がくすっと笑っている。
5分の距離なんてホントすぐ着いちゃう。
走れば5分かからないとこなのにわざわざ理人がついてきてくれるんだから。
「桜、お母さん呼んで?」
「うん」
なんだろ?なんか用事かな?
玄関先で理人が桜の母親に挨拶してるのがなんとなく照れくさい。
「お墓参り…俺も一緒に…いいですか?」
え?
「……先生、実家には?」
「帰ります。でもその前に」
母親がちょっと考えて、そして頷いた。
「ええ、…どうぞ」
理人の言葉に桜が泣きたくなってくる。
「ありがとうございます。………桜?……ダメだぞ?」
理人が桜の顔を見て苦笑した。
泣いてダメって事?理人だけじゃないから?
「分かってる」
じゃあちゃんと責任とれよな!って思ってしまう。
今泣きたいのは理人の所為なのに!
お墓参りに一緒に、なんて…。
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