理人が帰って桜は自分のベッドに横になって色々な事を考えてしまう。
父親の事を自分から話したのは理人が始めてた。
ご近所も皆知っている事だけど、桜自ら話した事はなかった。
父親からの言葉も。
桜が、自分の為に父親が事故に合ってしまったと思っている事も。
理人がいないのでタオルケットをかぶる。
「りひと…」
小さく名前を呼んで潤んだ瞳を我慢する。
今までこうして一人で涙を我慢した日はいったい何日あるんだろう?
ずっとこうして我慢していくんだ、と思ってたのに。
理人は桜を子供のように言うけれど、だからといって全部を子ども扱いしていない事は分かる。
考えてくれている事も。
だからこそお墓参りを一緒に、なんて言ってくれるんだ。
まだ高校生だから…。
それが理人の頭に常にあるんだと思う。
分かってるけど。
本当にそうだから仕方ないけど。
早く大人になりたいと思う。
そしたら理人はずっと桜を捕まえてくれるのだろうか?
そういえばキスは理人からもしてくれるけど、えっちはほとんど桜からしかけて、が多い。
理人はしたい、と思わないのかな…?
エロいとか、そんな事言うけど、でも理人から…は…。
でもちゃんと考えてくれてる!
そう自分に言い聞かせる。
お見合いも、断るため、って。
「…お見合い…」
理人は30だからもう結婚して子供いたって全然おかしくない歳だ。
かっこいいし、歯医者なんてしてる位で、もしお見合いなんてしたら絶対相手の女の人は理人を好きになってしまうはずだ。
お見合いする位じゃ、相手だってきっと大人だ。
高校生で枷が多い桜とじゃ比べられない。
それに一番は桜が男だって事だ。
理人は男と付き合った事ないって言ってた位で女の人と普通に付き合ってきたんだ。
いくら女みたいだって言われたって桜は胸もないし、ちゃんと、一応は、立派とはいえないけど、ついてる。
黒田はついてる時点で恋愛は問題外ときっぱり言ってる位。
やっぱ男となんかそんなしたい、なんて思わねぇ、かな…とずんずん凹んでくる。
断りに帰るって言ってるけど、もし断りきれなかったら?
それが綺麗な、大人な女の人とかだったらやっぱりそっちいっちゃうよな、と思ってしまう。
桜の事を考えてくれているのは分かるけれど、でも対等な関係ではないはず。
だって桜がまだ子供だから…。
「ああ!もうっ!やめやめっ!」
桜は声を上げた。
ぐだぐだ考えるのなんか性に合わない。
桜は理人が好きだ。
どうしようもないくらい。
理人もとりあえず桜の事は考えてくれている。
それでいいだろっ!
だってお墓参りだって一緒に行くって母親にまで言ってくれる位だ。
母親にばれた、と言った時だって理人は潔く母親に挨拶してくれたんだ。
ちゃんと真面目に考えてるって!
それにプロポーズの予約だって!
…予約だからキャンセルされるかも、だけど…。
またマイナスの方にいきそうで桜はぶんっと頭を振った。
「寝よ」
キスしたい。
大丈夫だって言って欲しい。
安心出来る腕が欲しい。
桜だって男なのにそんな事思うなんて。
他の誰にもそんな事なんて思いもしない。
理人にだけなんだから。
「声、聞きてぇなぁ…」
桜って呼んで欲しい。
自分の名前、それこそ女みたいで好きじゃなかったのに、理人に呼ばれると嬉しいんだから。
電話したいけど…さっきまで一緒いたのにそんなのしたらバカだよなぁ。
朝から一緒にいたのにまだ足りないなんて。
学校に行ってる時よりずっと一緒にいる時間は長いはずなのに。
だって、一緒にいるけど、仕事してるからやっぱり足りないんだ。
それ考えると休みの日がどうしても待ち遠しい。
あんまり好き好きもウザイかなぁ、と自分でも思ってしまうくらいだから理人だって思ってるのかも。
だから帰れって言うのかな?
理人の事考えるのやめて寝よう!と思ったばかりなのにまた理人の事ばっか考えている。
だめじゃん!と思ったってどうしても考えてしまうんだから。
一人でいるとバカな考えに向かっていってしまう。
これが理人が目の前にいればそんな事を思わない位に自分を見てくれているのが分かるのに。
「…理人は分かってない」
絶対。
テーマ : 自作BL小説
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