ご飯を食べて理人が帰って行った。
明日は朝早くに車で実家に行くとの事。1泊か2泊で帰ってくるっていってたけど。
そういやお見合いの話が、って言ってた…。
断るため、と言っていたけれど…。
理人の事は信じられる。
…信じられるけど、歯科医なんかしてて、祖父ちゃんからお父さん、妹までみんな歯科医なんて家で、30なのに結婚まだではお見合いっていわれるのも納得出来る気はする。
納得はするけど、でも理人は桜のだ。
一緒に行けるものなら行くのに。
こっちにいれば桜の家のお墓参りまで一緒に行ってくれる。
ご近所だって本当の所はどう思われているかは謎だけど、一緒に買い物行っても、どこ行っても、桜が理人にじゃれついていても奇異な目は向けられない。
きっと理人の実家に行ったら絶対そんな事はない。
だって桜は外見は女の子みたいでもちゃんと男だ。…一応。
1泊か2泊で帰ってくるって言ってたけど…。
離れた途端にどうしても不安は襲ってきてしまう。
理人は信じられても、状況がどんななんて桜には見えないんだから。
朝に行ってくる、と理人からメールが入って、気をつけて行ってらっしゃい、と返した。
メール一つで桜の事をちゃんと思ってくれていると分かればやっぱり嬉しくなって気分は上向きになる。
お昼近くに無事着いたとメール。
よかった、とほっとする。
電話が鳴って理人かと思ったら黒田だった。
「もしもし?」
『桜、忙しい?』
「え?全然?理人実家帰っちゃったし」
『行っていい?まじキツイ!』
電話の後ろでぎゃーぎゃーっと子供の騒ぐ声が聞こえてくる。
「いいよ。どうせ暇だから」
黒田はすぐに電話を切った。
きっと自転車に飛び乗って家から逃げてくるんだろう。
電話口でさえも凄まじい声が聞こえてきていた。桜には耐えられないかも、と思わず黒田に同情してしまう。
まもなく汗だくの黒田登場。
「うす。まじキツイ!毎年の事だけど」
げんなりした様子の黒田はおじゃまします、と言って入ってきて桜の部屋に行く。
昨日は部屋に理人がいたのに、今日は黒田か。
はぁ、と思わず溜息を吐き出す。
「何、先生実家戻ってるって?」
「そう。なんかお見合いの話きてるらしいよ?」
「まぁ、年も年だろうしなぁ」
「う……」
やっぱり誰でもそう思ってしまうのか。
…だよなぁ。
「桜ちゃん凹んでるの?」
「いや、そこまでじゃねぇけど。理人、断るため、って言ってたし」
「え~?断れんのかぁ?」
う…、と桜はまた言葉に詰まる。
それもちょっとは思ったんだけど…。
「だっていい年してお見合いもしません、なんてなぁ?家が医者なんてやってる家系でそれはダメなんじゃねぇ?確か実家も歯医者だよな?」
「らしいね」
田舎な小さい町は他所の家でも皆事情を知ってたりする。歯医者なんてしてるくらいだから理人の家の事は皆知ってるんだろう。
「理人の妹も歯科医だよ」
「まじで?すげぇな。実家も病院で、祖父さんの病院やって、先生と妹さん、将来どっち継ぐんだ?」
「さぁ…?でも理人は住所こっちに移動する、とか言ってたことあったけど」
こっちならいいけど、実家の方だったら…?
「う~~~~…」
なんか黒田の所為で余計な事まで考えてしまいそうだ。
「…お前帰れ!」
「え!?ひでぇ!」
「だって!」
「ああ、わりぃわりぃ!お前が安穏と幸せそうだから意地悪言っただけだって!先生はちゃんと考えてる、だろ?」
「…しらねぇ」
おざなりな黒田の言い方にむっとする。
「…お墓参り一緒行くって言ってたの…行ったのか?」
「…うん。昨日行った」
黒田が苦笑していた。
「普通墓参り一緒にいくなんて結婚してからだろ?それ一緒に行く位なんだから。まして先生は年もいってるんだし」
「……年いってる、いってるってうるさいっ!理人はかっけぇもん!」
「あ~はいはい、そうですねぇ~~」
「…………やっぱお前帰れ!」
馬鹿にしたような黒田の言い方にむっとする。
「ごめんって~~!俺もストレス溜まりまくりだったんだよぉ」
「だからって俺で発散させんじゃねぇよっ!」
そう言いながらもこんな風に喋っていればやっぱり気が紛れる。
一人だったら余計な心配に凝り固まっていたかもしれない。
…とちょっとは黒田に感謝する。
ちょっとだけだけど!
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くりぼさんが桜と理人描いて下さいました^^
えろぉ注意なので背後にお気をつけ下さいませm(__)m
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ありがとうございます~
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