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桜誘う桜守 89

 理人にちょっと部屋に行くか?と誘われて桜は頷いた。
 理人の育った家、部屋。
 「うわ、本いっぱい!」
 「そりゃね。一応は」
 広い部屋に机、本棚にぎっしり本。
 「ね?バレてないの?」
 「ないね。…ほら、見てみ?」
 理人が鏡を桜に向けてきた。

 「う、げっ!」
 鏡に映ってたのは可愛い女の子だ。
 「マジで!?」
 「まじ」
 くくっと理人が笑う。
 鏡に映ってるのは自分なんだろうけど…。
 横向いたり上向いたり、鏡の中も同じ事をする。
 ちょっと髪をピンで留めて服変えただけなのに…。
 「……ショックだ…」
 理人が口を押さえて笑っているとコン、とノックの音が聞こえて桜は身構えた。

 理人がドアを開けるとそこには理人の妹さんが立っていた。
 「ねぇ?桜ちゃんって男の子じゃなかったっけ?私行った時理人、桜って高校生の男の子がご飯作りに来てくれるって言ってたよね?」
 ど、ど、どうしよう…、と桜は真っ青になるが理人は平然として大丈夫だといわんばかりに桜の背中を撫でてくれる。
 「些細な事気にするな」
 「気にする~。桜ちゃん、男の子?女の子?」
 ど、ど、どうしたらいいのぉ?

 桜は理人の背中に隠れた。
 「桜はやんねぇぞ?」
 「え~?男の子だったら私が欲しいんだけど。だってそんな可愛くて男の子で、ご飯の用意出来るなんて…桜クン、お姉さんのほうよくない?」
 よくない、よくない…。
 ふるふると桜は首を振った。
 すっかり理人の妹は桜を男と断定しているらしい。

 「ちゃんと結婚もできるよ?」
 「いらん。お前には桜やらねぇ」
 「桜クン、いつでもいいからね?」
 にっこりと理人の妹さんが笑った。
 桜よりも背が高い。
 なんか悔しい…。
 …でもいいの…?
 男って分かられても……。
 ちら、と理人の影から妹さんを伺う様に見た。

 「……可愛い…」
 「だろ?だから言っただろ」
 「うん。信じてなかったけど…。ホントに可愛い。理人、ちょうだい」
 「やらねぇ、って言ってんだろうが!…しまった。黙っとけばよかった…。……さ、桜、こんなとこさっさと出て行こう」
 「え~!?泊まっていかないの?」
 妹さんが声をあげた。
 「泊まるか!お前に攫われたら大変だ。」
 理人が桜の肩を抱きかかえるようにして部屋を出る。
 小さく桜は理人の妹に頭を下げた。

 「か~わ~い~い~~~」
 撫で回されそうな猫なで声でこわい…。
 本当に連れ攫われそうな雰囲気で思わず理人の服をぎゅっと掴む。
 「あいつ特に変わってるから。可愛いものに目がないんだ。これはまずいかも…。あいつ来た時はまさかこんな事になるなんて思ってなかったから桜自慢したくて可愛い!って言ってたのが失敗だったな。でも、ま、とりあえずバラす事とかはないだろうから安心しろ」
 「…うん」
 それならいいけど…。

 「お邪魔しました」
 玄関で頭を下げて理人の家族に挨拶。
 「いつでも遊びにきていいのよ?」
 「あ、はい…ありがとうございます」
 そんな事言われてもチョーーーー困るんだけど!と思いながらもはにかんで桜が答えれば皆の視線が桜に刺さる。
 
 「理人の家の人!皆こわいっ!」
 「あ?そう?ああ…食われそうな感じ?」
 「……そうかも」
 「うん…かもな。よかった。桜合格みたい。まったく可愛けりゃなんでもいいのか!?って感じだけど…。桜ちゃん可愛いから仕方ないか。ま、これでウチは大人しくなるな」
 理人は鼻歌でも出そうな位にご機嫌だ。

 「でも何年か経っていつ結婚すんだ?とか言われたら…?」
 「そん時はそん時。何回か桜つれていって慣れさせておいて、実は男の子なんです~!もアリかな…と思った。だって桜ちゃんかなりあの人たちの心掴んでるんだもん」
 「はい?」
 「杏奈はまじで桜狙いに来そうな感じだ。桜、杏奈の方いい、とかならないか?」
 「なんないから!」

 理人は理人で心配なとこもあるんだ?
 桜は気にしている理人に嬉しくなる。
 「でも女装という制限はつくけど…家公認。これで桜の家もウチも公認だ」
 理人はそこもご機嫌な理由らしい。
 確かに…本当なら隠れてなきゃいけないようなはずなのに…。
 「そしてべたべたデートも出来るし?」
 それも確かに…。
 「今度桜に服買ってやるよ」

 「………女物…?」
 「ってほどのものでもないけどそれっぽいの。俺は別に気にしないんだけど、桜、結構外だと人目気にするだろ?でもいっつもくっ付いてるけどな」
 「え?そ、そう?」
 「そう」
 確かに、理人がどう思われるかな、とかいつも思うけど…。桜が女の子みたいだ、なのはいつもの事だけど、理人はそうじゃないから、とか一応色々考えてるつもりだったんだけど。
 「桜、気にしなくていい。桜は桜だから。女の子の服着たからって女の子になるわけじゃないし、なりたいわけでもないだろ?桜がべたべたデートしたい時はちょっと男か女か分からないような格好すればそれでいいじゃん。堂々としてれば。俺の中でも桜が変わる事ないし」
 「……うん」
 なんか気が楽になったかもしれない。
 「…ありがと」
 「…そういうとこ可愛いんだよな」
 そういうとこだどういうとこか分からないけど理人が笑っていて、桜も理人のお見合いの話もなくなったようなので満足して笑顔になった。
 
 
 

テーマ : BL小説
ジャンル : 小説・文学

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