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桜誘う桜守 90

 「俺、理人笑ってるの好き。安心する」
 「ん?そうか?」
 「うん…。いつも何しても言っても笑ってくれるから…たまには面白くない笑いの時もあるけど!」
 桜がそう言えばまたくくっと理人が笑う。
 理人も桜の言っている意味は分かっているのだろう。
 「俺は桜が真っ直ぐ向いてくるのが好きだな。素直に出せるトコ。大人になってくると隠してよく見せようとか考えるけど、桜はそのままだから。我儘だってなんだってもっと出していい」
 「そう?」
 「ああ」
 ふぅん…。

 「おかげで桜にねだられると全然我慢出来なくなるけど」
 「…そ、れ…は……っ!…でも嘘だ!理人、放置したもんっ!」
 「いや、昼休みはやっぱまずいでしょ」
 「だってあれ、俺じゃなくて理人からしてきたんだもんっ!」
 「桜が可愛いからいけないんだ。瞳潤ませて声が…」
 「わぁあああっ!」
 恥ずかしい事言おうとする理人に桜が声を張り上げると理人が声を出して笑った。
 「さて、どこ行こうか?ああ…お祭やってるとこあるな…行くか?」
 「うん!」
 「確かしょぼいけど花火もあったはず」
 「うんっ!見たいっ」
 夏!って感じだ!

 お祭の屋台が並んでる。なんでこうお祭ってわくわくすんだろ。
 窓から眺めてると理人はくすくす笑いながら車を停められる所を探す。
 空いた所に車をぱっと入れて車を降りた。
 「すごい人だね!」
 理人の腕に桜はしがみつきながら一緒に歩いた。
 ちらっと見られるけれどそれは男同士で?みたいな怪訝なものとは違っている。
 「ふふ…」
 「うん?」
 「うん…嬉しいな…。やっぱ時々はこういうのもいいな?」
 だって堂々と理人にくっ付いていられる。

 「なんか食うか?」
 「食う!」
  色々買ってもらって理人と半分こしながら食べる。
  なんでお祭ってこう惹かれるのかな。
 「ゲームでもする?」
 「したいけどいい」
 「なんで?」
 「だって景品いいのないじゃん!景品のためじゃなくてただ楽しいだけでいいもん」
 金魚すくいとかも眺めるだけ。
 でもそれでも十分楽しい。

 「理人…ありがと!そういや俺、お祭ってあんま楽しんだ覚えないな…」
 「そうなのか?」
 「そ!だって小さい頃って大体撫子が一緒だったから、撫子の子守だったもん」
 「なるほど…」
 よしよしと言わんばかりに理人が桜の頭を撫でてくれる。
 「もうそろそろ花火だな…。車の方に戻りながらいこう」
 「んっ」
 ぎゅっと理人の腕に飛びつくようにすがった。

 この堂々デートやっぱ楽しいかもしんない!だってこんなことさすがにウチの近辺じゃ出来ないから。
 ドン、と腹に響く音。そして花火が始まった。
 「結構でかいじゃん!」
 ショボイなんていうからもっと小さいのかと思ってたらちゃんとした花火だ!
 「なんとか花火大会とかに比べたらしょぼいさ」
 「そんなのと比べなくていいよ!いいね…綺麗」
 花火の光りに照らされてオレンジ色に顔が染まる。
 「ね?理人…ほら、このひゅるひゅるって飛び出すやつ、あれ、俺好き。あとだぁっとこう滝みたいにしな垂れるやつも!」
 「ああ、そうだな…。桜が喜んでくれるなら俺は何でもいいけど」
 な、なに、急にそんな事…。

 周りの人達も足を止めて花火に見惚れている。
 「桜」
 くいと桜は理人に身体を引っ張られた。
 「な、何?」
 そして花火に見惚れて立っている人達の背中を向けている暗い方に連れて行かれた。
 その間もドンと夜空に咲く花火は続いている。
 「桜」
 桜達より後ろに人がいなくなった所で理人にキスされた。

 「理人…」
 こんなとこで!
 顔が真っ赤になるけど、花火の色で分からないかもしれない。
 理人の顔もオレンジに見える。
 「誰も皆花火ばっかで見てねぇよ…」
 そしてもう一度理人の顔が近づいてきた。
 桜は理人のTシャツを掴み、理人は桜の腰をぎっちりと押さえて抱きしめている。
 「り、ひ…とぉ」
 花火のドンという腹に響く音に、パラパラと花火が散る音、に舌の絡まる音が消されている。
 こんな、外で、なんて…という状況に桜はくらくらしてしまう。

 理人の舌が桜の口腔を大胆に嬲ってくる。
 「ぁ……ぅんっ…」
 誰か見てるかも、なんて意識がちょっと外を向くとそれを咎めるように理人の舌が桜の舌を吸い上げた。
 「や、…ぁ…」
 感じてしまったら…ちょっと落ち着かない事になってしまいそうだ。
 すると理人が桜を離してくれた。
 キスだけで息が上がりそうだ。
 「…行こう」
 理人が桜の肩を抱きしめるようにして車の方へと向かった。
 
 
 
 
 

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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