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桜誘う桜守 91

 車に乗って花火を見て、そして無言で理人は車を走らせた。
 どこ行くの?なんて桜も聞かなかった。
 はじめから1泊って言われていたし。
 それより身体が熱い。
 理人も同じ?
 欲しい、と思ってくれてる…?
 
 身体を火照らせたまま理人の車はしばらく走って立派なホテルに入っていった。
 ちゃんとしたホテルをとってた?
 わざわざ?
 車寄せに車を停めると理人が降り、助手席に回って桜を降ろす。
 「ちょっと待ってろ」
 ロビーのラウンジに桜を座らせ、理人はフロントで受付を済ませていた。
 こんなホテル、なんて…。
 いや、あの理人の家みたら納得するけど。
 いつもの桜の家のご近所さん相手にして、近くのスーパーで惣菜や弁当買ってた人とは思えない豪華さだ。
 なんとなくそんな理人に相応しくない、と思われないようにと桜はおどおどしないように背筋をしゃんと伸ばした。

 「桜」
 理人に呼ばれ、一緒に部屋に案内される。
 理人はこんなホテルにふさわしい立派な大人だ。自分はまだただの高校生。でもその理人が恥じないようにしなくちゃ。
 なんとなく桜が気を張っていると理人が優しくトンと背中を叩いた。
 はっとして理人を見上げると瞳が大丈夫だ、と言っているように見えた。
 いい、のかな?桜が子供で理人は恥かしくないかな…?
 そんなちょっとした事で理人がちゃんと桜を見てくれていると分かる。

 桜は小さくこくんと頷いた。
 やっぱ理人のこういう何気ないところが好きだ。
 さっきの花火を背にしてのキスの名残で身体はまだ仄かに熱い。理人の腕の、手の熱がまだ桜の身体の上に残っている気がする。
 部屋は上階。
 最上階ではないけれど、かなり上の方だ。
 豪華なホテルになんか泊まった事のない桜だって上階がいい部屋というのは分かる。
 部屋は大きなガラス張りの窓で眼下にはビルや車のライトが煌々と光る夜景だ。

 「う、わ」
 思わず窓際に寄って見入ってしまう。
 田舎の町じゃ考えられない光景だ。
 「桜、何か食べるか?」
 「…ううん。いらない」
 屋台で摘んだ分でお腹いっぱいだ。それにこんな現実離れした中でお腹がすかない。
 理人の実家に行って挨拶して、お祭行って、このホテル。
 夢みたいだ。
 ぼうっとして夜景に見惚れているといつの間にか理人が隣に立っていた。

 「綺麗か?」
 「うん…。こんなの初めてみた」
 「…桜」
 理人が桜をガラスの窓際に押し付けるようにしたので桜は理人にしがみついた。
 「や!こわいよっ!」
 だって夜の真っ暗のなかのライトはきれいだけど、ガラスは透明で吸い込まれて落ちてしまいそうだ。
 「怖い?ああ…ガラス?大丈夫だろ」
 「見てるのはいい、けど」
 くすと理人が笑う。そして桜を抱き寄せた。

 「まだ見てたいか?」
 「………ううん」
 桜が満足するのを待っていてくれたのか?
 そんなのどうでもいいのに。
 桜は自分から理人の首に腕を絡めた。
 理人がキスしながら桜の身体を抱き上げ大きな一つしかないベッドに桜の身体を横たえる。
 もう身体は理人を待って期待でさらに熱く火照ってくる。

 「りひと…」
 理人の手が桜のひらひらの服を脱がせていく。そして桜も理人の服に手をかけた。
 貪るようなキス。
 「あ、…っ」
 息が漏れる。本当に熱に浮かされたようだ。
 「熱い…っ」
 「ああ…俺もずっと…熱かった…桜。お前が欲しくて、な…」
 「理人っ」

 嬉しい。
 こんな所に来るといかに自分が子供かと思い知らされるようだった。
 けれど、それでも理人が欲しい、と言ってくれる。
 女でもない、ただの子供に。
 「俺も…理人…ほし…い……いっぱい…」
 いつも理人は桜を大事そうに扱う。目もいつもいつも気遣ってくれている。

 でも今日の理人はちょっと怖い位だ。
 …なんでもいい。
 理人が桜を欲しいと思ってくれるなら。
 家族にまで紹介してくれて、本当にちゃんと桜の事を考えてくれている。
 なんでも桜の事を思ってくれている。
 それが全部見えるんだ。
 生意気な口を利くときだってあるのに理人は全然そんな事なんとも思っていないように大きく桜を包んでくれている。
 全部だ。
 「理人っ」
 互いの身に着けていた物を全部脱ぎ捨て桜は理人に抱きついた。
 
 
 

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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