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熱視線 円舞曲~ワルツ~9

 続き行きます、と声がかかってまた始まって、始めにCMの2曲を弾き、伊藤さんは驚いた顔をしていた。
 聴いたことがあったらしい。
 思わず明羅は小さくなる。

 そしてソナタだ。
 怜が上を仰いで見てそして息を吐き出し、そして始まった。
 ああ、やっぱり震える。
 初めて弾いてくれた時よりずっと音に深みが増した。
 いくらでも怜さんの自由でいい曲。
 ぞくぞくと背中を駆け上がる戦慄は止まることがない。
 身体はがくがくと震えてくる。
 音がステージのピアノからホール全体に広がっている。


 音の洪水。
 二階堂 怜の世界だ。
 これは明羅が作ったんじゃなくてやっぱり怜が作ったんだと思う。
 だって怜の音がなければ出来なかったものだ。
 涙がどうしたって頬を伝ったって仕方ない。
 だって怜さんが弾いている。
 明羅の曲を。
 長い曲。
 激しい第1楽章、緩やかな第2楽章、そして怒涛の第3楽章。 
 ぼたぼたと涙が流れるままで明羅はそれを聴いた。
 

 怜さんが弾き終えても誰も動けなくて。
 「…………終わり、だけど?」
 怜さんが起ち上がって手を上げた。
 録音の人たちも怜の声にはっとしてばたばたと動き出した。
 「明羅」
 ステージから軽やかに降りてきて明羅の顔を見てふき出すと手で涙を乱暴に拭った。
 「泣きすぎ」
 「だって!!」
 う~、と怜の胸に抱きついて泣いてしまう。
 「演奏は?大丈夫だったか?」
 こくこくと何度も頷いた。
 「よかった!ぞくぞくきた」
 「…そっか」
 怜が安心したように頷く。
 「伊藤さん…?生方、まで?」
 二人ともまだ動けなくてやっとのろのろと動き出した。

 「…なんですか?これは?」
 伊藤さんが怜と明羅を見た。
 「これ、明羅くん…が?」
 明羅は怜から離れてこくりと頷いた。
 「……これは、私はとんでもない所にご一緒させていただいたみたいです」
 伊藤さんはまだ呆然とした様子だったが怜は満足気だった。
 「生方は?寝てないの珍しいな?」
 「寝る!?」
 「こいつはクラシックで5分以上の曲は寝る。確実に」
 「……最悪~」
 「だから、それが寝てないから」
 驚いた、と怜が生方を見ていた。
 「……怜」
 「ん?」
 「これ、やばいかも…」
 「は?何が?」
 明羅と怜は顔を合わせた。

 

 結局取り直しもなく一回でOKという事でこの日は終了した。
 お昼は過ぎてたけど、と怜と明羅、生方、伊藤さんも一緒にお昼を食べることにした。
 「俺が眠くならないほどすごい曲で、すごい演奏だった」
 「…お前の言葉は信用ならんけど、確かに寝なかったのはすごい」
 怜が笑った。
 「本当に寝るの?」
 「そ。即効で」
 じゃ、きっと間違いなく明羅の演奏だったら寝てしまうだろう。
 「…やな感じ」 
 「え?なんで?」
 「ううん?別に」
 生方がきょとんとして、怜は明羅が思った事が分かったのか笑っていた。
 「まるでラフマニノフを髣髴させるようなソナタでした」
 伊藤さんが突然口を開いた。
 「うん。ラフマニの2番貰ったから…意識した、かなぁ…?」
 「タイトルはあるんですか?」
 「えと…」
 明羅は怜を見た。

 「ハッピバースデイ」 
 「は??」
 伊藤さんがきょとんとした。
 「ほら見ろ」
 「怜さんっ」
 「お前が言ったんだろうが。…<献呈>だ」
 「…ああ」
 伊藤さんが納得した。
 「あれを聴いたら納得です。あれ以上弾きこなせる方はいらっしゃらないでしょうね」
 そこで怜と明羅が顔を合わせてふっと笑った。
 「伊藤さん、出来ればコンサートも聴きに来てください。生方さん、チケットって貰えるのかな?」
 「え?ああ、大丈夫だ」
 「じゃ、是非!ね」
 「そうだな」 
 怜が頷く。
 「…なにかあるんですか?」
 「内緒」
 ふふふ、と明羅が含み笑いをした。

 「CDの発売とコンサートの日程は決まっているんですか?」
 「CDが11月。コンサートは12月23日」
 「え!そうなの!?」
 明羅まで驚いた。
 「あ?言ってなかったか?」
 「聞いてない!…コンサートはクラシック入れる?」
 「さぁ?まだ決めてないな」
 「じゃ、入れて!聴きたいから」
 「12月でクリスマスだかエロワルツにするか?」
 怜がくつくつ笑いながら言うのに明羅は怜の肩を叩いた。
 
 
 

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