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焔の扉の前。 5

 「尚先輩?どうしたの?さっきから外ばっか見て」
 「え?ああ、いや…」
 といいつつ尚の視線はつい外を向いてしまう。
 だいたい具合悪くて休んだのなら外歩いているはずないだろう。
 つい目で遥冬が通らないかとまた外を見てるのに自分で苛立ってくる。
 はぁ、と短く溜息をついたとき、その人が通った。
 一瞬すぐ外に出て、と思ったら、またあのスーツの男と一緒だったのに、舌打ちしそうになった。
 
 「………帰る。じゃあな」
 「は?何しに来たの~?変なの」
 岳斗の顔を見たのに全然気分が晴れなかった。


 「おはよう」
 「……うっす」
 長い机の隣の席にいつもと変わらないように遥冬が座って尚に声をかけてきた。
 「…昨日は?具合悪いとかじゃなかったのか?」
 歩いて外いたのは見たから違うとは思うけど。
 「ああ。昨日はちょっと急用が出来たんだ。……ノート、あとで昨日の分見せてもらってもいい?」
 「…ああ」
 尚は頬杖ついたまま答えた。

 あのスーツの男は何だ?
 …と聞いてみたい気もするが聞きたくもない気もする。
 それより、と周囲の雰囲気が遥冬が姿を見せた途端に変わったのに尚は怪訝にした。
 遥冬をちらちらと見ているヤツが多い。
 男も女も。
 …なんだ?
 遥冬を見れば別にいつもとなんら変わりはないと思うが…。
 「?」
 分からなくて尚は首を捻る。
 当の本人はまったく気にならないのかいつもと同じように無表情だ。
 誰かとっ掴まえて聞いてみるか。
  
 でも講義がほとんど一緒の遥冬がいては何となく聞けない雰囲気で、なかなか機会がない。
 だがやはりおかしな雰囲気だ。
 「遥冬、便所行ってくるから学食の席とっといて」
 「ああ、分かった」
 同じ学部のわりと話すヤツがトイレに入ったのに尚がチャンス、と遥冬が何の疑問も持たないように歩いていったのを確かめて、トイレに駆け込んだ。

 「おい」
 「あ?なんだ?」
 小用を終えて手を洗ってたやつを捕まえた。
 「なんなんだ?今日の雰囲気は!?」
 「え?ああ…加々美、だろ?」
 「ああ。なんかしたのか?」
 「いや、なんか…って…。アレなんだろ?」
 「アレ?」
 アレ、ってなんだ?

 「加々美って男捕まえてだれでもやりまくりって…」
 「ハァっ!?」
 尚は素っ頓狂な声を上げた。
 「え!?お前もすでに…って…」
 「……んなわけあるか!」
 尚は頭を抱えた。
 なるほど…。昨日の学食の話が広がってそんな事になってたのか。
 「え?ちげぇの?」
 「ちげぇよ。女の嫉妬だろ。ったく!ばかくせぇ…」
 「もう尚はすっかり加々美に夢中で食われたって」
 「食われた~~~~!?どっちかっていったら食うの俺だろうが。なんだ?食われたって!」
 「…いや、そういう問題でもないと思うけど」
 「まぁ、そうだな。…ったく。ほんっとばっかくせ…」

 どっと疲れた。
 「…誘いまくって男食い漁るってさ」
 「遥冬が~!?どうやって誘ってんだぁ?あんな近づくな、話しかけるなオーラ出しまくってるのに?」
 「……だよな」
 「ほんとだよ」
 やれやれ、と尚はそのまま足早に学食に向かった。
 席に定食を前にして箸もつけず、座ってる遥冬を見つけてすぐに声をかけた。

 「わり。なんだ?待ってたのか?別に待ってなくてもよかったのに」
 「…え?あ、ああ」
 遥冬の顔がいつにもまして青白く強張っている気がする。
 「食ってていいぞ。俺もすぐ買ってくるから」
 「……ああ」
 箸を取った遥冬に安心して尚は自分の分を買いに行った。
 その間にも遥冬に視線が集中しているのが分かった。 
 それに尚が思ったよりもさらに遥冬はその綺麗さ故に目立っていたらしく、どうやら噂が学部内だけじゃなくて学校内まで広まっているらしい。

 「う~~~~ん……」
 こんな中にいたらいくらなんでも落ち着かねぇよな、とは思う。
 さすがに遥冬も何かは察知して顔を強張らせていたのだろう。
 どうせそんな噂なんかすぐ飽きる事だろうけど、それまではちょいとキツそうな感じも拭えない。
 綺麗なヤツは大変だ、と思わず遥冬に同情してしまう。

 尚がランチを買って遥冬の隣に座ると遥冬がほっとしたような顔をしたのに尚はおや?と遥冬の顔を思わずじっと見た。
 「何?」
 「…いや?」
 どうやら少しは尚は遥冬の中ではましな方に分類されているのかもしれない。
 なんだ、そっか、と昨日の苛立った気分はどこかに消えていた。
  


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拍手コメントお礼です^^ 
HRN様
 ブログはそうなのですね~!分かりました^^
 その時は是非^^b
 あ、出張お疲れ様です^^
 ウチはよく帰ってきた気がすると言われます(笑)
 尚お気に入りでしたか~(^m^)
 かっこいいのに残念感を残しつつ…^^;
 ありがとうございます^^
 

AH様
 ウチの方は涼しいので大丈夫です~^^
 AHさんもお体ご自愛くださいませm(__)m
 ありがとうございます^^

okw様
 こちらこそかえってありがとうございます~^^
 岳斗にほんわか、ありがとうございます(^m^)
 尚が男前に見える(笑)
 何故か笑いたくなります^^;
 ありがとうございます^^

S様
 それは何故でしょうね?
 実体験?(笑)
 でもいるでしょ?必ず~(笑)
 いつもありがとうございます^^

AHN様
 毎回ですか…?^^;
 嬉しいですが、次のプレッシャーになります~(笑)
 といってももう次のも書き終わっているので
 今更変えようがないのですが…(--;)
 ありがとうございます~^^
 

テーマ : BL小説
ジャンル : 小説・文学

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