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熱視線 円舞曲~ワルツ~10

 「うわぁ……」
 土曜日に生方がデモのCDを持ってきた。
 「ま、ゆっくり聴いてみて。あと全部出来たら持ってくるから。明羅君は何枚CD欲しい?」
 「…貰えるの?…じゃあ4枚」
 明羅は指折り数えて顔を紅潮させる。
 「誰にだ?」
 怜が興味ひいたように聞いてくるのに明羅は笑みを浮べた。
 「俺1枚、両親に1枚づつ。宗に1枚。1枚は自分で買う」
 「買う?買わなくていいだろ。…いいけど、宗に?」
 「ん。あ、チケットは俺と伊藤さんと宗と怜さんのお父さん分ね!」
 怜はそれに嫌そうに顔を顰めたが、生方は笑って了解してくれた。
 その生方が帰って明羅は早くCDを聴きたくてうずうずする。
 「怜さん、あっちで聴こう?」
 パソコン部屋のほうだ。折角スピーカーもいいものなのにあんまり活用されてないから。
 カウチソファに怜に抱きかかえられるようにして音量を高めにして聴いた。
 「…変な感じだな」
 聴きながら怜が呟いた。
 「そう?やっぱり生じゃないからぞくぞくはないけど怜さんの音だ…。これあったら夜よく眠れそう」
 「お前はいつでもよく寝られてるだろうが」
 怜が口元に笑みを浮べながらそう言うのに明羅は恥かしくなる。
 「そうだけどっ」
 「明羅」
 怜の音に包まれて、そして怜が唇を啄ばんだ。 
 「怜さん…」
 「ん?」
 「本当にコレでいい、の?」
 明羅は空を指差した。音を指差したつもりだ。
 「いいに決まってる。伊藤さんと生方の絶賛を聞いたろ?」
 「でも、…」
 「別に売れなくたっていいだろ。クラシックで売れる事なんて滅多にないし。売れたほうが多分困るぞ」
 「そう?」
 怜の唇が明羅の首を伝った。
 「怜さんの演奏はいいんだけど…。自分の曲ってのが…なんか微妙…クラシックがよかったなぁ…。そしたら純粋にうっとり出来るのに」
 「そうかぁ?」
 「うん。絶対」
 「ま、機会があれば」
 「…嘘でしょ?」
 「さぁ?」
 怜の手がいつのまにか長袖に変わったTシャツの裾から忍びこんでくる。
 「だめ、だよ。聴くんだから」
 「聴きながらでいいだろ」
 もう何度も何度も怜と肌を合わせた。
 それでも慣れることはなくて、やっぱり恥かしい。
 「……」
 かぁっと頬が熱くなってくると怜がふっと表情を緩めた。
 「…慣れないねぇ。でも随分感じるようにはなったけど」
 「言わ、なくて…いい、でしょ…やっ…」
 くりと胸の飾り物の乳首を抓られれば飾り物だと思っていたそこから疼きが湧いてきて声が出てしまう。
 それが途轍もなく恥かしくて怜にしがみついた。
 「怜さん…」
 甘えた声が漏れてしまう。もう怜さんは明羅の中で絶対の存在だ。
 怜に甘えている。それが信じられない。
 「怜さん」
 ぐりと怜の胸に頭を押し付けた。
 「なんだ?」
 怜は胸をはなすと明羅の身体を抱いて頭を撫でてくれた。
 ちゃんと分かってくれるのが嬉しい。
 「甘えられるの…怜さんだけ」
 親にだって甘えるなんてした事などない。きっと愛情が足りていないんだと思う。
 
 だからこうして怜から与えられる愛情に飢えたように反応してしまってもっと欲しいと思えてくるのだ。
 「ごめんなさい…」
 「何が…?」
 「だって、怜さん独り占めしてるから」
 「……じゃ俺も?明羅独り占めしてるし。わざわざ家から引っ張り出していけない事イタシちゃってるし。…俺のほうがよっぽど悪いだろ。でも悪いな。離せないから」
 「いいんだ。俺嬉しいから」
 「じゃ、俺も同じく。だから謝るな、ばか」
 怜が明羅にキスすれば明羅もそれに応える。
 部屋に怜のピアノの音が鳴り響く中で明羅の身体が怜によって横たえられた。
 唇は離れないまま怜の手が明羅のTシャツをめくっていった。
 
 
 

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