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立ち上る焔。 4

 「…泊めるのはいいけど、客用布団なんかない」
 「いいのいいの!冬じゃねぇし、床と屋根さえありゃ大丈夫」
 尚が遥冬の肩を離したのに遥冬はほっと安堵して息を小さく吐き出した。
 「そう?」
 「ああ!お前もバイトGW中ラストまでなんだろ?」
 「…そのつもりだ」
 普段はバイトは12時位までにしてもらってたけど、学校がないGW中はラストの午前2時まで。
 「じゃ、休み中もまた行動一緒って事だな…つうか、どこに行っても常に一緒って事か?大学なってから一番遥冬といる時間がなげぇな…」
 …確かに。
 「ま、別にお前といるの苦でもないしいっか」

 「…………」
 遥冬は尚の言葉に思わず眉間に皺を寄せた。
 「なんだよ?その顔」
 「え…ああ…そんなの言われたの…初めてだったから」
 いつも辛気臭いとか、疲れるとか、そんな事ばかり言われていた。
 「そうか?でも、俺はいいけど、お前は疲れるか…」
 「……そう、でもない…」
 尚といるのはそういえばあまり疲れないかもしれない。尚がずかずかと
遥冬の中に入ってくるわけでもないからだろう。
 いつでも遥冬の空気を読んで、これ以上聞くな、という所を読んでくれているからかもしれない。

 「あっそ?ならいいけど」
 にっとまた尚が笑った。
 「…もう知らないヤツじゃねぇ?」
 くっと笑って尚がイヤミったらしく言った。どうやら入学式の時の事を尚は覚えていたらしい。
 「…さぁ?」
 「ちぇっ!素直じゃないなぁ~」
 尚が遥冬の頭に手をかけて髪の毛をごしゃごしゃにする。
 「やめろ…」

 泊めるのをいいと言ったのはバイトを紹介してもらったからだ。
 …だからだ。
 まさかそれで知らないと断りも出来ないからだ。
 GW中も岳斗くんは来るのだろうか…?
 いや、別に来たっていいじゃないか。
 また気にしすぎてる自分に苛立ち、そして尚を見た。

 「ん?どうした?」
 「なんでもない……。後は…?今日はステージに立つ?」
 「いいやぁ。28日は50’S休みだから29日からだな。そこからよろしくな!そういや28日はここも休みだから遥冬も休みだろ?何してるんだ?」
 「…何も」
 「何も!?」
 「出かける所もないし、ネットしてるかそんなもんじゃないか」
 「……実家かえ…」
 「帰らない」
 尚の言いかけを遥冬が思わず力をこめて遮ると尚が黙った。

 「……よし、なら俺ん家来るか?お前飯もまともに食わない気だろう?どっか遊び行って俺んち」
 「……え?」
 「だって俺ばっか泊まったらわりぃだろ?何も用事ないならいいよな?そんで29日は一緒にウチから出ればいいだろ」
 何もないと言ったけど…。
 「ウチには言っとくよ」
 「……尚は実家…」
 「そう。じゃそういう事で!俺帰るな。また明日学校でな」
 ポンと遥冬の肩を叩いて尚はギターを背負うとオーナーや他の人に挨拶して呆然としてる遥冬にもう一度じゃ、と手をひらひらさせて帰って行った。

 自分が泊まる?
 尚の家に!?
 どこかに遊びに行って!?
 その次の日からは尚が遥冬のマンションに!?
 今まで生きてきた中で一番ありえない状況に遥冬の頭がパニックを起こしそうだった。

 今は余計な事考えるより仕事!と遥冬は頭を切り替えようとしたけれどどうにもうまくいかない。
 それに…嫌でもないような気がするし、ちょっと興味もある。
 尚の部屋とか、家族とか。
 自分の育った環境が普通でない事は重々分かっている。
 尚をみれば真っ直ぐで気さくで面倒見がよくて、きっと普通の家で育ったのだろうと思う。
 自分とはきっと似ても似つかない家庭環境だろう。

 今まで人の家など行った事もないし、行って、どんなか見たいとも思った事などなかったけれど…。
 思わぬ偶然で、たまたま履修科目が重なり、席も無意識で近くに座ったりしてた所為で何となく一緒にいる事が多くなっただけのはずだったのに、いつの間にか自分のマンションに入れ、今度は遥冬が尚の家に行って泊まって、GW中もずっと一緒…?

 何がいったいどうしてこんな事になっているのだろう…?
 遥冬は自分で自分が分からなくなってきた。
 それに…尚に気にされるのは悪くない。
 さっきも、飯も食わないつもりだろうって…。
 そして何より岳斗くんの存在が気になる。
 まさか、自分が?
 そして、どうしても尚の事を考えているのに、遥冬は頭を抱えた。
 「…嘘だろ」
 相手が男という所に違和感は感じない。
 でも自分が!?とは思う。
 男が、という問題じゃなく、人を好きになる事など絶対ないと思っていたのに…。
 
 
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拍手コメお返事です^^
(7/19午後7/20午前分)
SW様
 ジェラシーでしょう~(^m^)
 残念は残ったままな感じなのですが~(笑)
 ありがとうございます~^^

KRB様
 いい兆候ですか?^^
 尚がいいヤツ…ですね(^m^)
 ありがとうございます^^

AKR様
 そうですね!スピンオフだと本編とのつながりがあるので^^
 私も読み返しながらおかしくないか確認作業でした^^;
 ツン好きなんですね(^m^)
 ありがとうございます~^^

S様
 いっぱいきてました(笑)
 酔っ払いですから仕方ないですね~(爆笑)
 不憫神どっか行ったでしょうか~?^^
 ありがとうございます~^^

HRN様
 あら~遥冬くんと同じですか…
 ホント似てますね~お名前も~(^m^)
 でも今は頑張ってますし、
 これから輝いていくのでしょうから^^b
 応援してますね~~~~^^/
 ありがとうございます~^^

テーマ : BL小説
ジャンル : 小説・文学

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