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2012.08.06(月)
「いやだってさぁ…怜が人ここに入れるの初めて見た」
「…ハウスキーパーも入ってる」
「そりゃ違うだろ」
男に明羅は大量な荷物を手渡され、受け取ったがこれは何?と怜を見上げた。
「お前の服。俺のじゃでかいだろ。趣味に合わなくても文句言うな」
「別に言わないけど…でもこれ…ブランド物だよ」
「気にするな。着替えて来い」
怜は寝室の方を指差した。
確かに怜の服はぶかぶかでハーフパンツは再々ずり落ちそうになる。
黙って明羅は頷いて袋を持って寝室に行った。
出してみるとざくざくと無造作にTシャツやらハーフパンツが出てくる。
下着から靴まで何でも出てきた。
その中から適当に選んで着てみればやはりぶかぶかしないのにほっとした。
「怜さん、着てた服…」
「ああ、洗面所に置いとけ。あとで洗濯機回すから」
明羅が昨日着ていた服はスーツだったので洗えないし、家で着るものではない。だから買ってくれたのだろうけど…。
「あの、払い、ます。いくらですか?」
「いい」
「よくないです。だって今だって居候みたいなものなのに」
「自分で働いていないやつは大人しくしとけ」
怜がやんわりと断る。
自分で稼いだ分だってちゃんとあるけど、と思いながら明羅は黙った。
「…おもしれぇ」
男はにやにやして怜を明羅を見ていた。
「俺は生方 広樹」
「…明羅です。苗字はちょっとまだ」
「まだ?言う気はあったんだ?」
怜がちゃちゃを入れてきたのに明羅は頷いた。
「ちゃんと言うよ。でも…ちょっとだけ、待って…」
怜はどうでもよさそうに肩を竦めた。
「ええと明羅君はどこで怜と知り合ったの?」
「……」
何と言ったら正解なのだろう?知っていたのは10年前から。でもこうしているのは道端でお持ち帰りされたからだ。
明羅が考え込んでいると怜が口を開いた。
「あれだ。明羅はあの子供だ」
「……え?もしかしてずっと…ガラコンサートから来てたっていう?」
生方が怜と明羅を見比べた。
どうやら明羅の存在を生方も知っていたらしい。
「へぇ~…で?ナンパしてきたの?」
「…当たらずも遠からずって感はあるが…」
怜も苦笑しながら答えた。
「ファンをお持ち帰りはダメではないのかね?」
「ファンではないらしいぞ」
「は?」
「や、…ファンで、いいで、す」
執着と言われるのもちょっと嫌だ。
「なんだぁ?分からんな。ファンじゃないならなんで10年も?しかも小さい頃から?」
それは怜に伝えるべきの事でこの人に言うことではない。
明羅は黙った。
「こいつに教える必要はない。こいつなんて音楽なぞ何も分からないんだから」
「そ、なの…?」
怜が助け舟を出してくれたのに明羅はほっとした。
「失礼な。上手いか下手かは分かる」
「ば~か。だから素人なんだよ。そんなの誰だって分かるだろうが」
怜の言葉に明羅も頷いた。
上手いか下手かで言ったら明羅だって上手い部類に入るのだ。
でもそうじゃないんだ。
「こいつがコンサートの企画やらなにやら雑用をやってくれているんだ。ああ、明羅がPCのやつやってくれるって」
「おお!まじか?今時ないだろう?ブログの一つもやってないなんて」
その言葉には明羅も頷いた。
「そしたらどこでシークレットライブするとか、載せるの?」
「それはやだ」
怜がごねた。
「じゃ意味ないだろうが。まったく協力的じゃないんだよな…」
ぶつぶつと生方がぼやく。
「とりあえずしばらくは何もないけどブログ立ち上げといて。本当は公式オフィシャルサイト作りたいんだけど」
「年1回のコンサートだけで?」
「だから増やせば」
「いやだ」
「……俺ももっと聴きたい…」
明羅が小さく呟いた。
「お前はここで聴きゃいいだろう」
「だって今までは年1回しか聴けなかったんだもん!」
もっと聴きたかった。あの音が欲しかった。
必死な顔になっていたのだろう。怜は黙って明羅の頭を撫でた。
「なんだよ。やっぱりファンじゃん」
「違う!」
そんな簡単なものじゃない。生方の軽口に明羅は思わず否定した。
「……可愛いだろ?」
怜が生方に向かってくっくっと笑っていた。
可愛い?さっきは美人で今度は可愛い?
明羅はむっとした。
その明羅の表情にまた怜は噴き出すのだ。
「……やっぱり男にいくのか?」
「んなわけあるか。ば~か」
明羅は可愛いには納得できないが、んなわけあるかまで言われれば明羅はどことなく複雑な心境になった。