美人だよな…。
尚は目が覚めて、まだ自分の腕の中で目を閉じて眠っている遥冬の顔をじっと見つめていた。
これでさらにエロい顔なんてほんとヤバイ。
昨夜の遥冬のイった時の顔を思い出すとまたイタズラしたくなってきてしまう。
…いくらなんでも怒られるか?
バイトで疲れたのとセックスまでして疲れたのか遥冬は熟睡しているらしい。
静かに寝かせてやりたいとも思って尚は大人しく我慢するけど、どうしても自分のものは大きく反応してしまう。
…ヨカッタ。
かなり。
「んん~~~……」
小さく尚が唸ると遥冬の瞼がひくひくと反応した。
やべ、起こしたか?
じっと遥冬の顔を凝視していると静かに遥冬の目が開いていく。
初めは綺麗だけど人形みたいなヤツだと思ったのに、今は全然だ。
「…はよ」
その綺麗な顔に尚は顔を近づけ、そしてキスした。
「…っ!」
はっと遥冬がはっきり目を開けると尚の腕に抱かれたままの状況に怪訝な表情を見せ、そして昨夜の事を思い出したのかかっと頬に朱を散らせたのに尚はぷっと笑ってしまう。
…可愛いだろ。反応が。
キスしてそのまま何度も遥冬の唇を啄ばんだ。
「………なにしてる」
「キス」
遥冬がぐいと尚の顔を手で押しのけた。
「なんだよ?昨日はあんなに応えたのにつれねぇな」
真っ赤になるかと思ったら遥冬は冷やかな視線を尚に向けてきたのにおや?と尚は目を瞠った。
自分が慣れてる振りを続けるのか?
それに尚は付き合ってやればいいのか?
「バイトまで時間あるだろ。お前は寝てろ」
「…っ!」
尚が遥冬の身体を離して起き出そうとしたら遥冬が小さく引き攣るような声をあげ、傷ついたような目で尚を見た。
なんだ?
「…どうした?」
「……なんでもない」
だがそれはほんの一瞬だけ。
もっと出せばいいのに。
遥冬は何が言いたかったのか?
尚は布団の上からもう一度遥冬の身体を抱きしめ、遥冬の耳を食んだ。
「バイトでも立ち仕事なんだから少しでも休んでろ」
「……そうだね」
遥冬はふいと尚に背を向けて布団の中に潜り込んだ。
その耳が仄かに赤くなっているのに気付いて尚の顔が緩んでしまう。
やっぱ可愛いじゃないか。
さっきのは尚が遥冬を離したからだろうか?
自分から押しのけたくせに尚が離すのは気に入らない?
やっべぇな、と尚は顔がにやついてしまう。
「……尚…」
「あ?何?」
ベッドから起き出して尚が伸びをしてると遥冬が布団から顔を出して尚をじっと見ていた。
「…そ、れ……」
尚の勃ちあがってる所をそっと指さす。
「うん。勃ってるけど?遥冬の中に突っ込みてぇなってさっき思ってたから」
「……………」
遥冬が眉をしかめて少し逡巡を見せる。
「………する…?」
「は!?いいって!夜まで我慢する。…夜はいいか?」
「…………別に」
昨日の朝も出そうか、と聞いてきて、夜も今もする?とまで聞いてくるのに答えは別に、…って。
嫌なら自分から言うはずないだろうからいい、って事だろうか?
分かりやすいのか分かりづらいのか…。
「…遥冬は?痛くねぇ?」
「………平気、だ」
「ホントかぁ?」
ふい、とまた遥冬は布団の中に隠れてしまった。
尚は笑いが出そうになるのを抑えて自分の持ってきた荷物から服を出して着替えを済ませる。
「洗濯もまわしてきてやるよ。お前はゆっくりぐだぐだしてろ」
それにも返事もよこさない。
照れてるのか?
遥冬にハマリそうな予感がして来る。
いや、もうハマっているのかも。
なにしろずっと遥冬の事ばかり考えているのだから。
そういや大学で一番初めに顔を覚えたのは遥冬だ。
それからどこに行くんでも気にしたのは遥冬だ。
表情もなく自分の事など認識されているのかも分からないようだと思っていたけれど、いつの間にか遥冬が隣にいるのが普通になっていた。
遥冬も尚の事は隣にいるものだと、そう思っているのだろうか?
今は少なくとも好意は見える、……と思う。
…多分。
嫌じゃなかったら自分から、はないだろうから。
自分から誘惑して来るくらい尚の事を好き、と言い切る自信まではさすがにないけれど。
なんにしてもどういう訳で自分に身を任せたのか尚には計り知る事は出来なさそうだ。
聞いても素直に答える事はないだろう。
でも好かれてはいる。
それは分かる。
「やべ~…なぁ…」
尚は顔が笑っていた。
テーマ : 自作BL小説
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