はのんのBL部屋

　そのままいつの間にか尚の腕の中で遥冬は先に眠ってしまったらしい。
　ずっと遥冬が眠るまで尚の手が遥冬の背中を撫でていたのが分かっていた。

　はっと目覚めれば日はもう中天。
　寝るのが遅い時間だからそれは当然だけど、そして、尚はまだ眠っていた。
　目の前にある尚の顔に遥冬は自然に口元が綻んだ。
　まだ尚は眠っているから今なら遥冬がどんな顔をしてても尚に見られることはない。
　規則正しい寝息を漏らす尚の頬にそっと手を伸ばして触れた。
　大学でも一際目を引く存在で、誰にでも声をかけられて。
　気さくで遥冬なんかにも普通の態度。

　…優しいから。

　きっとだから遥冬なんかにも付き合ってくれるのだ。
　それでも大学の他の友達よりも自分が尚の中で優先されているのはわかる。
　大学では、だ。
　じゃあ岳斗くんとだったら…？
　尚は岳斗くんに自然に触れている。
　それに岳斗くんも尚に遠慮してるような感じもないんだ。
　やっぱり岳斗くんは尚にとって特別なのだろうか…？

　それでもいいんだ。
　今こうして遥冬の横にいるのだから。
　それに…昨夜は夢中になりそうだ、なんて言ってた。
　溜まってた、って言ってたから、きっとそれでだろう。
　ちょっとの好意と身体だけの関係でもいい。
　それで今の尚を独占出来るなら。
　どうせ遥冬が自由になるのも今のうちだけだろうし。
　「ん…」
　尚が声を漏らしたので遥冬は手を尚から離し、自分の顔も取り繕う。

　「…遥冬…？」
　「……はよ」
　尚が目をしばたかせながら片目を開けた。
　「…身体は？」
　「平気」
　そしてすぐに尚が遥冬の耳元にキスする。

　…恋人同士でもないのになんでコイツはこんな事をするのだろうか？
　「う～ん…朝一番で遥冬の顔…いいなぁ………」
　「……もう朝じゃない」
　「まぁ、確かに！朝じゃないけどな。でも起きたばっかなんだから俺にとっちゃ朝だろ」
　くっと尚が笑っている。
　尚はいくら遥冬がつっけんどんな態度をとっても全然平気そうなんだ。
　普通の人はそれでもう興ざめした、という顔をするのに。
　「遥冬さ～ん…キスしていい？」
　「………」

　したけりゃすればいいのに。
　「だめ？」
　「…別に」
　くっくっくっと尚が笑いながら遥冬の身体の上に覆いかぶさってきた。
　「遥冬…可愛いなぁ…」
　可愛い！？
　なんだそれは！？
　思わず遥冬の眉間に皺が寄ってしまう。
　「なんだその顔？」
　尚が笑いながら軽く唇を重ねてきたのに遥冬は目を閉じそっと尚の身体に手を這わせた。
　「あ！」
　「ん？どした？」

　遥冬はさらにキスしようとしていた尚の身体を押しよけ、半身起き上がると尚のＴシャツに手をかけた。
　「やだ～！襲われる～」
　「ふざけるな」
　そのまま尚のＴシャツを剥いて背中を見た。
　「う、わ……」
　結構ぎっしりと遥冬の爪痕がそこに残っていたのに思わず声が出てしまった。
　そして慌てて口を押さえる。
　「ああ…傷？別にたいした事ねぇよ？」
　「…すまない…」
　「謝んなくていいって言ってるだろ。それよりキスしたい」

　ふざけていた尚の声がふざけをやめて遥冬の頤に手をかけてきた。
　そしてそのまま唇を合わせる。
　身体を引き寄せられ、抱きしめられながら舌を交わし遥冬の身体を下に尚が組み敷いてくる。
　起きがけから舌をねっとりと絡ませ舐られるキスに遥冬の息は上がってしまう。
　「んっ！あっ…！」

　尚の手が遥冬のＴシャツの中にもぐりこんできて遥冬の肌の上を弄っていく。
　濃厚なキスは互いの唾液が入り混じり遥冬の口端を伝っていく。
　舌が絡まるたびに水音が部屋に響き耳を刺激し、そして尚の手は遥冬のＴシャツを捲り、身体中を撫でられる。
　胸の突起を時折尚の手が引っかくようにして通り過ぎるのに、もっとそこを嬲ってほしいと思ってしまう。
　「ぁっ…」
　わざと尚はつんと立ち上がった飾りを手を引っ掛けているんだ。
　「ここ？触って欲しい？」
　「…別に」
　「素直に言っていいのに…」
　きゅっと指で抓られると遥冬の身体がびくんと反応してしまう。

　女みたいにここで感じるものなのか、と初めて知った。
　いや、尚にされているからか？
　その証拠に触られているどこもが気持ちイイ。
　でも尚はきっと今はバイトがあるからそれ以上はする気がないのは確かで、これ以上されたら自分から求めてしまいそうだ…。

　「…いいかげんにしろ」
　遥冬は力の半分抜けた身体で無理に尚を押しのけた。
　「え～？なんだよ～…」
　尚が不満の声を出していたが、遥冬はさっさと尚から離れてベッドを降り、すたすたと洗面所に向かった。
　そこで一人になってはぁと溜息を吐き出す。
　…溺れるな。
　そう鏡の中の自分に言い聞かせた。
　

　
-----------------
続きにお返事です^^
(7/27,28分）

テーマ : ＢＬ小説
ジャンル : 小説・文学