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2013.07.31(水)
「何弾くの?」
「う~ん…何いいかな…?明羅何がいい?指輪は勿論だけど、あとは?」
「楽譜出す?2台ピアノだと…やっぱ協奏曲とかかなぁ?俺はピアノソロは弾かないから。怜さんショパンコンクールで協奏曲何番弾いたの?」
「1番」
「1番…難曲~…できる…かなぁ…?」
「いいけど…普通の2台ピアノ用の曲でも」
「それだと俺がメインに出る時もあるでしょ。それやだ」
「別にいいだろぉ」
「ヤダ。怜さんの音と競えるわけないでしょ!もう断然響きが違うのに!だから協奏曲みたいなの!ソロは怜さん!それだって俺はあんまりピアノ弾いてもないんだから指動かないし、思い切り弾けないからね!」
「全然いいです。いいね~…明羅と二台ピアノ!やっぱ俺もう一台買おうかな…」
「無駄な事しなくていいです。はい。いいから!」
最初はオーケストラからなので明羅が有無を言わさず弾き始める。そこから怜さんと合わせて2台ピアノ。
一回弾き始めたらやっぱり楽しくて…。
基本ピアノは一人で弾くのが多いけど、合わせて弾くのって楽しい。
怜さんも家では乗らないと言ってたけど楽しそうに弾いている。
「次ラフマニ2番!」
怜さんから声がかかる。
「え~~~!」
「はい、行くよ?」
始まりはピアノから。怜さんのラフマニノフの協奏曲2番!バックが明羅なのが残念だけど、聴けるだけでいいかも~~~~!
そしてまた次、次、と挙句にはジャズまで出てきてアレンジまで入ってくるのに明羅はついていくのがやっとだ。
「や~~~~~!疲れるっ!」
「ああ、悪い!…でもやっぱいいかも…。明羅く~ん!お願い!しばらく付き合ってくんない?ああ!あと2台ピアノの曲なんか作って?お前今忙しい?」
「今?ううん。依頼は小さいのしかないから全然余裕だしいいけど…」
2台ピアノの曲。
丁度1年…。
作ってと言われてたし…。
「…………うん。作ろうかな…。前は怜さんの前で弾くの嫌だったけど、今はこうして一緒に弾くのもいいか、な…」
「ああ。俺はピアノはお前以外の誰かと連弾でも2台ピアノでも弾きたいとは思わない。俺と明羅だけの2台ピアノの曲が欲しい」
怜さんの誕生日も近い…。そしてなによりそんな事言われたら…。
「うん!作る!」
明羅が頷くと怜さんが八重歯を覗かせてにっと嬉しそうに笑った。
「…楽しみだ。どんなのかな」
本当に嬉しそうな怜さんの顔に明羅も満足する。
曲を怜さんに気に入ってもらえるのが嬉しい。
今まで作った曲をみんな怜さんは気に入ってくれているから。
「怜さんの音があればいくらでも」
今日の一緒に弾いた感じからすでに明羅の脳裏に音があふれ出してくる。
怜さんの音と自分の音。
怜さんと自分の為だけの2台ピアノの曲。
思わず明羅も楽しくなってきてしまう。
「怜さんっ!帰ろ!」
「え?もう?」
「ん!早く曲作りたいかも!」
「お?やる気満々?」
「うん!だって怜さんと俺だけの為の曲でしょ…?」
ピアノの蓋を閉じ、帰ろうと怜さんを急かすと怜さんが明羅の肩を抱き寄せた。
「ああ。俺と明羅の為だけの、だ」
怜さんの低い声が明羅の耳を擽ると明羅はきゅっと目を閉じた。
声もいいんだよなぁ…。
…というかどこもいいんだけど。
燕尾服の姿は勿論、髪ぼさぼさにしてたって何だって怜さんだったらいいんだ。
「やっぱ…早く帰ろ?」
キスしたい。
抱きつきたい。
そう思ったのが伝わったのか怜さんもああ、と頷いてくすと笑った。
「明羅」
「う~ん?何?」
車の中ですでに頭の中で音を組み立ててると怜さんが声をかけてきた。
いつも明羅が考え込んでいる時は放っておいてくれるんだけど。
「8月4日の俺の誕生日…」
「うん」
「明羅の一日全部ちょうだい?」
「え?」
誕生日のプレゼントはもう瑞希さんと買いに行った。
渡すだけだったけど…。
「いいよ?勿論!怜さんが欲しいので俺が出来る事ならなんでも!だっていっつも俺は怜さんにもらってばっかりだから…」
「ばっかり、ってわけでもないけど。…一日全部だぞ?朝から晩まで。俺の言う事全部聞いてくれる?」
「いいよ」
「……………即答だな」
「勿論!」
「…………変態プレイ強要してもいいのか?」
「はぁ!?な、な、何いってんのぉ!?…………で、で、でも………れ、怜さんが、…ど、ど、…どうしても…って言う、なら………」
「あ、ごめん。嘘です。そんな事思ってません。いつもの明羅君で十分です」
「……ふざけすぎッ!」
怜さんそんな事思ってたの!?と真剣に思ったのに!!!
運転する怜さんの腕をどんどんと叩いた。
「おわ、危ねぇって!」
くっくっと怜さんが笑っている。
タチ悪いんだからっ!