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熱視線 1st Anniversary 7

 ショパンのピアノ協奏曲第一番ホ短調。
 オーケストラの分を明羅が弾く。

 怜さんのソロが入るまでが長い。早く怜さんに来て欲しい。
 不安が過(よ)ぎるけれどふと顔を上げれば怜さんが向いで満足そうに笑みを浮べている。
 それに安心する。

 そうだ。明羅はオーケストラ。主役はあくまで怜さんのソロなんだ。どっしり構えていなければいけない。
 長い明羅のオーケストラ部分が終わり、怜さんの圧倒的な音が明羅の耳に響いてくる。
 ああ、一緒に弾いているんだ。
 同じ時を刻んでいるんだ。
 このステージと言う特殊な舞台で。

 いつもは聴いているだけでも明羅の心臓はいつも大きく鳴り響くのに、さらに今日は一緒に…。
 怜さんの息遣いが分かる。
 怜さんの音がまた輝いている。
 泣けてきそうだ。
 こんな事を怜さんが考えてたなんて。

 明羅の誕生日に、なら分かる。でもそうじゃなくて、怜さんは自分の誕生日に、だ。
 明羅の全部が欲しいと、言ってくれている。
 いくらでも!
 なんでも明羅のあげられるものならなんでも!
 その代わりに怜さんをちょうだい!怜さんの全部を明羅も欲しい!
 こんなにもらってばっかりなのになんて欲深いんだろう。

 明羅の音楽は全部怜さんが与えてくれるものなのに。
 怜さんがいなかったらきっと明羅の音楽は薄っぺらな音楽でしかないんだ。
 自己満足で終わっていた世界だ。
 それが明羅が今こうしていられるのは全部怜さんのおかげなんだ。

 あっという間に曲が終わってしまう!
 なんてこと!
 長い曲なのにこんなに短く感じるなんて。

 そして明羅の作った協奏曲の指輪。
 これももう何度も弾いている。
 自分の曲であってそうじゃない。
 全部怜さんの為だ。
 明羅のすべては怜さんにあるんだ。

 ちょうだい?
 そんなの当然!
 もっと言って!もっと欲しがって!
 いくらでも!
 自分が客席で聴いていた時はあんなに長く感じたのにどうして今はこんなに短く感じてしまうのだろう。
 もうどこもかしこも夢のようだ。

 怜さんの音が明羅の音と混じっている。
 ぴったりと。
 怜さんの音が明羅を包む。
 明羅の音も怜さんに寄り添っているだろうか?
 何度も怜さんと視線を合わせた。
 分かるんだ。全部。

 怜さんはこう弾きたい。…ほらね?

 これはステージでの特殊な同じ時間の共有でしか味わえない空気だ。
 そしてあっという間にラストになってしまう。

 明羅の作った二人だけの為の曲。
 誰の前でも弾く気なんかなかったのに!発表する気もなかったのに。
 タイトルなんてないのに…。
 怜さんと明羅、かなぁ?

 …そんなタイトルさすがに言えないけど。
 だって二人だけの曲って言ったから…。

 最初の10小節は怜さんのソロ。
 ここは明羅の見てきた怜さんの10年だ。
 怜さんのコンサートに行って10年。ずっと子供の頃から客席で見てきた10年。
 その怜さんの音を追いかけて追いかけて…。

 明羅のピアノが入る。
 まだ怜さんの音を追いかける。
 追いつけなくて。こんなに求めているのに追いつけなくて。
 それがいつの間にかあっという間に怜さんが明羅を包んでくれていたんだ。

 あ……。

 優しい深い怜さんの音だ。
 怜さんの音が明羅の音を包み込んでくれる。そう。いつも怜さんが明羅にそうしてくれるように。
 顔を上げると怜さんがかすかに頷いていた。
 分かってる、と言わんばかりに。

 2台ピアノの曲に何も怜さんは言わなかった。
 でもちゃんと分かってくれている。
 怜さんの弾くプリモのピアノは明羅が見る怜さんだ。
 その怜さんのピアノが壮大にゆったりと明羅のピアノを包んでくれる。
 優しく、甘やかすように。
 そして音が重なる。
 ずっと追いかけてばっかりだった自分だけど、そればかりじゃなくなったんだ。
 でもそれを与えてくれるのも全部怜さんだ。

 ぴったりと二人の音が重なってさらに深い音を奏でている。
 そう…一緒にこの先もいたいんだ。ずっと、ずっと。
 今だけじゃない、これからも怜さんの横に立っていたい。
 追いかけるばっかりだった自分を怜さんが捕まえてくれた。そして解放してくれた。
 こうしていつも怜さんは明羅の事を考えてくれるんだ。
 深く深く包んでくれて。
 いつも怜さんの傍は居心地がよすぎるのに明羅に出来る事は何もない。
 怜さんがいなければ何もないんだ。
 そうじゃない、というように怜さんの音が明羅の音を包んでくれる。
 そしてさらに明羅の拙い音を怜さんが引き出してくれる。

 陶酔。
 絶頂。 
 歓喜。

 それをも与えてくれるのも全部怜さんなんだ。
 未来へ向かう一音。
 その意味を込めて最後の音はったった一つの単音にした。
 怜さんの単音と明羅の単音が重なって和音を作る。
 これから先もこうして重なっていけるように…。
 そんな願いを込めた一音。

 怜さんもその最後の一音を大切に大切に弾いてくれた。
 重なる小さな音がしんとした会場に伝わり、ピアノの音が消えるとぱらぱらと拍手がおき、それが大きな拍手となって会場を包んだのに明羅はピアノの前で天を仰いだ。

 照明が眩しい。
 その眩しい光がゆらゆらと滲んで見えた…。
 
 
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続きにお返事です^^
名無し様
 まさかのコンサートでした^^
 嬉しいお言葉ありがとうございます~////

AHN様 
 本編読んでないと意味通じないと思いますけど…^^;
 でも長いですからね…(--;)
 スミマセン…(><)
 お祝いありがとうございます~^^

 そしてあちらもですか~~!(汗)
 あっちはなかなか誤字脱字も多いし
 ちょっとかなりヘボいです…
 書き直したい…とこの間読んで思った^^;
 でもしないと思うけど(笑)
 ありがとうございます~^^

TK様
 お祝いありがとうございます^^
 怜と明羅も…喜んでいただければ幸いです~
 ありがとうございます~^^

RI様
 娘さん~~~~~!!!(^m^)
 いや~~~~!!!////母!ダメでしょう~(笑)
 でも見るよね^^b
 いいわぁ~若いって~~~!!!プププ…
 ウチでしか?(笑)書いてる私はどこでも味わえません^^;
 でもお届けできるようにがんばります~(笑)
 ありがとうございます^^

thz様
 こちらこそ~~~!ありがとうございます~~^^
 嬉しかったですぅ~(^m^)
 私攻め様見るのが好きなのですが(笑)
 わりと皆様受けスキーみたいなので…
 カッコイイイラスト本当にありがとうございます~^^

 一年は本当にマッハに過ぎていきます(苦笑)
 今年もあと4ヶ月しかないってどういうことでしょう~?^^;
 いつの間にこんなに過ぎても~たのか…(--;)
 年取るとそんなもんですね^^;
 本当にありがとうございました~~~^^/

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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