「おはよ」
「……………はよ」
「お前……」
尚が遥冬を見てさらに周囲をきょろきょろと見回していた。
「ちょ…席移ろう」
そう言うと尚が遥冬の腕を引っ張り、窓際の後ろの端の席に遥冬を押し込み、遥冬を隠すかのように自分はその隣に陣取る。
「…なんで?」
何がどうしたのか遥冬には分からなくて首を捻った。
「お前…エロ…っていうかフェロモン垂れ流してる」
「…はぁ?」
小さく囁くように尚に言われた事に遥冬は眉を顰めた。
「……そんなの…尚が勝手に思ってるだけじゃないの?」
「いや、違う。ほら、あっちのヤツ、遥冬の事ちら見してるし」
尚がくいと親指で指した方に遥冬が視線を向けると慌てて視線を逸らすヤツがいた。
「う~~~~ん…やべぇな…」
尚が頭を抱えているのに遥冬はくすりと笑った。
確かに朝、あんな状態のまま我慢してたというのはあるかもしれない。
「尚が悪い」
「ああ?」
「あんな状態で帰るし?責任取って?」
そっと尚の耳に顔を寄せて耳に息を吹きかけるようにして囁いた。
「~~~~~~~っ!!」
尚が顔を真っ赤にするのに思わず遥冬は見惚れた。
…可愛いじゃないか。
案外尚はそれなりに遥冬の事は意識しているらしいのに遥冬は上機嫌になってしまう。
最近尚はよくヤバイとか、綺麗とか、エロいとか色々言ってくるけど、そう尚が感じるのは大歓迎だ。
そのまま講義が始まって遥冬は意識をそちらに向けるが尚は貧乏揺すりをひっきりなしに繰り返していた。
「おい」
長い講義を終えると尚が遥冬の腕を引っ張って教室を連れ出した。
どこにいくのか…。
尚が無言で遥冬を引っ張っていくのに周りが視線を向けている。
「くっそ…目立つな…」
苛立ったように尚がずんずんと足を大きく出して歩くのに遥冬はついていくのがやっとだ。
人影があまりない専門教室が並ぶ棟まで連れて行かれると尚は周囲をきょろりと見渡してトイレに連れ込まれる。
「ちょ…?尚…?」
「責任取る。お前も取れ。煽ったんだからな?」
「ま、さか…ここで!?」
「…大きい声立てるなよ?」
狭いトイレの個室で後ろから抱きしめられて遥冬のベルトのバックルに尚の手がかかり、かちゃかちゃと外される。
「な、お…っ」
「いやか?遥冬がどうしても嫌ならお前の部屋まで我慢すっけど?」
小さく耳に囁かれ、耳を食まれればぞくりとすぐに感じてしまう。
「…別に…」
尚が我慢出来ない位に遥冬を欲しいと思っているのならそれでいいんだ。
「なんだ…お前も半分勃ってるじゃん」
…当然だ。朝だって我慢したのに尚にそんな事言われたら…。
「…ゴムつけるから待ってろ。まさか中に出せねぇしな。お前にもゴムつけてやる」
尚は常備しているのか、ポケットの財布から小さな袋を取出し開けた。
その時間がいたたまれないと思いながらも、後ろから尚が手を伸ばして遥冬にもゴムを装着しながらキスして来るのに遥冬は顔を横に向けながら応えた。
尚の手が遥冬のものを触っているのにどうしても身体は反応してしまう。
トイレには誰もいなく、すでに次の講義も始まったのだろう。どこか喧騒としていた空気も治まっているように思えた。
「…っ!……ぁ……」
遥冬は自分の口を手で塞いで声を我慢する。
「舐めてやりたいけど無理だな。痛くねぇか?」
尚は自分の指を舐め唾液を絡ませると遥冬の後孔を突き、そして中で蠢めかせる。
それに遥冬はこくこくと頷いた。
「うん…やわらけぇな…ずっとしてるからか…?遥冬の中ひくひくしてるけどこんなシチュに興奮してるだろ…?」
興奮してる、というかこんなトコでも尚が自分を欲しいと思っているのが嬉しいだけだ。
立ったまま尚が後ろと前を刺激してくるのに腰が揺れてくる。
「いい、から…はや、く…」
思わずドアに寄りかかるようにして腰を突き出すと尚が遥冬の腹に手をかけて引き寄せた。
「こっち…。立ちっぱひでぇだろ」
尚が蓋を閉めた便座の上に座り自分のベルトを緩めると、そのまま遥冬も後ろ向きで引っ張られた。
「腰ちょいあげろ…ゆっくり…」
「ぁ……っ!!」
口を押さえ、声が出ないようにと必死に我慢する。
尚が後ろからゆっくり遥冬の中に入ってくる。
下から突き上げられるように奥に尚を感じて遥冬は背中を尚に寄り掛けると尚はぎっしりと遥冬の身体を後ろから抱きしめた。
「入った…。動くぞ?」
学校で、なんて…まさか…。
思ってもいなかったけれど、尚がそれほどまで我慢出来ない位だったんだ。
遥冬は顎を仰け反らせながら口を手で塞ぎ、声を押し殺した。
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