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焔が燻る。 10

 「大魔神のようだねぇ」
 じろりと遥冬に睨まれた。
 遥冬の携帯が鳴ってマンション前に車のお迎えが到着したらしい。
 一緒に遥冬の部屋を出てエレベータで降りている最中だったが、遥冬の顔は見事に冷ややかなそれに変わっていた。
 「遥冬、何かあったら連絡。いつでもいいから」
 「ああ、……うん…」
 またふわりと遥冬の周りの空気が和らぐ。大分尚に対しては遥冬の境界線が緩んでいるらしい。

 「…可愛すぎる」
 思わず尚は遥冬の頭を抱き寄せ髪にキスした。
 「やめろ」
 ぴっと遥冬に手で払われて仕方なく手を離す。
 こういうとこはホント冷たい。
 多分これから実家に行くというのが前提であるからだろうけれど。
 それを思って何も尚は言わなかったのだが遥冬が不安そうな目で尚を見ていた。

 「……何?」
 「…怒ったか?」
 「は?何で?」
 「手…払った…から」
 「………あのね。そん位で怒ったりしねぇよ。これから実家で気ぃ張ってんだろ。待ってるから。帰ったら連絡ちゃんとよこせ」
 「……ん」
 ほっと安心したように遥冬が頷いた。

 「俺そこまで狭い男じゃないと思うけどな…」
 そんな事を言っている間にエレベーターが開いてエントランスを抜ければ立派なセダンが止まっており、そのセダンの脇にはやはりスーツの男が立っていた。
 尚が小さく頭を下げるとスーツの男も頭を下げ、そして後部座席のドアを開けた。
 「じゃ、遥冬。連絡」
 「ん。分かった。じゃ」
 簡単に挨拶して遥冬は車に乗り込んだ。
 スーツの男はもう一度尚に小さく頭を下げて運転席へ。
 あの男と二人かよ、と尚は少々面白くないが、それを言っても仕方ない。今はただ遥冬が初めては尚だったという事を信じるしかないのだ。
 尚は走り去る車を後ろからただ眺めているしかなかった。


 「ただいま~」
 家に戻ると珍しく父親の車があったので、尚はギターを置いて父親の書斎部屋に向かった。
 「親父ぃ、ちょっといい?」
 「なんだ?珍しい」
 話の分かる父親でギターもぽんと買ってくれた位だ。
 それも勿論尚が小遣いを貯めてやっすい中古のギターを大事に大事に使い、そして熱心に練習していたのを知っていたからだ。
 努力を認め、評価してくれ、惜しみなく与えてくれる。
 バンドする、と言った時にそのギターではもの足りないだろうと今のレスポールを買ってくれた。
 自分は親にも恵まれている。
 そのレスポールは未だに尚の一番の宝物で、大事にしているのも勿論親も分かっている。

 「なぁ、親父結構顔広いっしょ?」
 「まぁ、それなりに」
 地元では名の知れた会社の社長様だ。一応。
 「加々美って地方の議員知ってる?」
 「………直接は知らないが、名前は。なんだ?どうして?」
 座れ、とソファを指差されて尚がぼすっとそこに座った。
 「俺泊まって厄介になってるのがその議員の息子なんだ。なんか訳ありっぽくて…自分をコマだって言うんだぜ?」
 「……ああ……」
 父親が眉を顰めて頷いた。

 「……いい噂は聞かないな」
 「だろうけど」
 分かっている事だけど、やはり…。
 「収賄、贈賄の噂も聞く。表立ってはいないし本当かどうか私は知らないが」
 一応社長様で客が来てもいいように応接セットのソファが置かれてて父親と向かい合わせで顔を合わせる。
 「知らないって…親父がそんな事言う位ならよっぽど、って事だろ」
 滅多に人の良し悪しを口にしない父親がそんな事を言うんだから確実な線だ。

 「……その人からうまい話が来ても手を組むな、断れ、とは知り合いから忠告は受けた」
 父親は建設関係の会社なのでやはりそういう所での噂は聞こえてくるのだろう。
 「……大丈夫かな…?」
 「…万が一父親が捕まったとしても息子さんまで、という事はないだろう」
 「げ。そんな?」
 「うん?収賄贈賄だったら当然捕まるだろうが」
 「うわ……。でも自分をコマなんて言ってる位じゃその方いいのかも…。自分に興味なんかないってさ。…本人あ言うんだぜ?」
 父親がふっと笑って尚を見ていたのに尚は何となくばつが悪くなる。

 「うちに泊まりにきた子だろう?」
 「そう」
 「お母さんが綺麗綺麗って騒いでたけど」
 「ああ、マジ美人。でも人形みたいって。それも自分で言ってた。最近はいくらかマシんなってきたけど」
 「力になってやりなさい」
 「…なれればいいけど」
 「なれる」
 「…ああ、うん…。その。アリガトゴザイマス」
 妙に照れくさい。
 「じゃ!」
 そそくさと尚は父親の書斎を後にした。
 親にお前を信じてる、的な目で見られるのがどうにも嬉しいが照れるだろう。
 
 
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拍手コメお返事です^^
(8/7、8分)
 
みらい様
 エロいのは遥冬くんのせいです~(><)
 いただいた遥冬くんのえろ気がムンムンだったのと
 エロ多めのお言葉にこんなんなってました…^^;
 いいのですかね?(--;)
 ありがとうございます^^

KRB様
 そうなのね^^;
 好きも言わないでおいしくいただきまくりでした(笑)
 アカンですよねぇ?
 ありがとうございます~

S様
 コメ欄見てないかな?
 尚はね~…だから続かないのよ!
 常に残念感が漂ってるでしょ?(笑)
 ハピエンですよ?決まってるじゃないですか^^;
 尚の残念感がなくならないって事です~
 ありがとうございます^^

okw様
 可愛いですか~?(^m^)
 やっと剥がれてきたって感じですかね?^^
 尚はもう十分幸せな感じですけど~(笑)
 ありがとうございます~^^

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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