水野の運転の車の後部座席に遥冬は座って外を眺めていた。
実家までは車で3時間。でもそれよりもなによりも実家になど行きたくなどなかった。
ふっと外を眺めていた視線を俯け袖口を捲くってみる。
そこには尚につけられた所有の証が刻まれていた。
「遥冬さん」
呼びかけられて慌てて袖口をおろす。
「かなり重要なお話ですから心しておいて下さい」
「……そんなに重要って何が?」
「私の口からは言えません」
昨日の電話でも同じ事を言われたがその言えませんという返答に苛立つ。
「内容が分かりもしないのに心して、って無理だろう」
「…………」
それでも水野は告げる気はないらしい。
チッとつい遥冬は舌打ちが出てしまう。
昨日はあんなに幸せだと思えるような時間を初めて過ごせたのに日が明けてこれでは嫌になってくる。
そう、初めてかもしれない。
あんなに心が浮き立ったのは。
遥冬は自分の顔を隠すように口元を手で覆い、窓から外を眺めるふりをする。
外なんて全然見えていないのに。
見えているのは脳裏にいる尚だった。
岳斗くんは別に付き合ってる人がいたのに安堵した。
そして尚があんなに自分を欲していたのも初めて知った。
我慢出来ない、と。
昨夜の事を思い出すだけで遥冬は身体が疼きそうになる。
身体中に残された尚の刻印から熱を感じそうだ。
好きだ、と。
愛してる、とまで言われた…。
でもそれ以上尚は答えを求めて来る事はない。
…どうしてだろう?
嘘じゃないのか、と思うけれどあんなにずっと尚の手は遥冬の身体を離さないで、そして何度も尚を受け入れた。
まだ後ろには尚が入っているような感じさえしてきそうだ。
正直身体がかなりだるい。
でもそれが嬉しい。
いつも一回きりでそれで満足なのだと、溜まった欲情のはけ口だろうと思っていたのに、違った。
我慢してた、と。
学校でされた時だってそんなに待てない位に欲しいと思われているならと嬉しかった位だ。
……人に聞かれるんじゃないかという所にはさすがに恐怖は感じたけれど、それ以上に尚が自分に反応するのが嬉しかった。
そして昨日だ。
あんなに…。
風呂場で、ベッドで…。
身体中に尚の手の感覚、唇の感覚が残っている。
どうしようか…。
思い出しただけでもまた欲しいと思えてくるのだから。
思わず家の事を漏らしてしまう位に尚はすでに遥冬の中に深く入り込んでいた。
それに顔も…。
人の前では崩れた事などなかったのに、尚の前だと崩れっぱなしだ。
止めようと思っても止まらないんだ。
そして尚もいちいちそれを指摘しないで全部自然に受け止めていてくれるのが、さらに崩れる原因なんだ。
笑った、と指摘されればそこで思いとどまれるのに尚はただ黙って一緒に笑っている。
だから止められないんだ。
それにあの言葉。
言ったら叶えてあげる、と。
なんでも、…と。
あれはどういう意味だ?
尚は余計な事をあまり言ってこないし、聞いてこない。
それなのになんでも遥冬の事は分かっていそうな気がしてならない。
「水野」
「はい」
「……まだ兄さんとは続いてるのか?」
「ええ。一応」
「………」
遥冬はそれ以上口を開くのをやめた。
いったいどういうつもりで水野がいるのか遥冬には分からない。
「……少し寝る」
「はい、どうぞ」
遥冬は窓に頭をつけて目を閉じた。
「遥冬さん、到着しました」
声をかけられてはっと遥冬は目を覚ました。
寝不足と疲れで思わずぐっすりと寝入っていたらしい。
携帯で時間を確かめれば午後二時を回ったところだ。
遥冬は静かにもう一度目を閉じ、心を落ち着けてからゆっくりと目を開けた。
何を言われようがいい。
今はここに帰ってくる必要などないのだから。今はマンションが遥冬の帰る場所だ。
遥冬は車から降りた。
田舎の慣れ親しんだ空気。
そして無駄に大きな家。
戻ってきたくない場所だった。
玄関に遥冬が姿を見せれば義母が出迎えた。
「あら、いらっしゃったの?来なくてよかったのに」
「…来たくはありませんでしたが」
「あ、相変わらず人形のように!」
そりゃそうだ。いちいち相手などしていたら神経はとっくに切れてなくなっていたはずだ。
「お父様がお待ちです」
父親というのは皆あんな感じなのだろうか?
子供は自分のいう事を聞く人形と思っているのだろうか?
遥冬は奥の座敷へと向かった。
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S様へ続きに~^^
地震はね~誤報でもいいと思うけど。
だって本当に大きいかどうかは分からないわけで…
小さかったらよかったね。と思えばいいと思うんだけど~
この間震度5の時、揺れ終わってからビロビロ言ってた。
遅いっつぅの^^;
コメは消せるけど(多分)
消さなくてもいいよ~^^/
尚かっこよくなってるぅ~?^^;
うっかり好きだ、はないっす!(笑)
そして尚はモチロンイライラ中ですよ?(^m^)
尚父はなんかすっげぇカッコよくなってます~(笑)
あれれれ?と思ってた~^^;
ありあとうございます~^^
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