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冷やされる焔。 4

 「遥冬」
 尚がベッドで遥冬を抱き寄せた。
 「………いいよ?して」
 「いや。お前だって今日身体たりぃだろ。昨日俺もちょっと暴走しすぎたの分かってるし。別にしたいから一緒いるんじゃない、って…毎週土曜はオアズケ状態で我慢できなくていっつもがっついてたけど。こうしてるだけだっていいんだ」
 「………」
 尚の声が優しく耳に響くのがツラい。
 そしてそうされればされるほど遥冬の中で尚の存在は大きくなっていくのに。
 望んじゃいけない、と分かっているのに…。
 ただの友達、という存在でさえも遥冬にしたらなかったことなのに、尚はさらに恋人の域だ。

 まだ遥冬が答えを尚に出していないからそうじゃないけれど、遥冬の心の中ではそうなっている。
 少しの間、少しの間だけでいい。
 幸せ、という時間を遥冬も…。
 尚…。
 遥冬が尚にしがみつくように尚の胸に顔を埋めると尚も遥冬の背に回した腕に力を込め力強く抱きしめてくれた。

 何があった?なんて尚は聞かない。いつもそれに助けられる。
 …言っても無駄だから…。
 あの人はなんの関心もないんだ。
 遥冬が男に抱かれようが別に何とも思わない。
 そんな事よりも自分にとって重要な事が優先されればどうでもいい事なんだ。
 兄の結婚相手を孕ませろ…なんて…。

 きっと父は自分が元気だったら自分でしたのかもしれない。
 …考えてみれば加々美の家の存続が遥冬にかかっているではないか。
 散々正当な子じゃないと蔑まされたのに。
 く、っとその皮肉さに遥冬は笑った。
 そしてぞっとする。
 あの家に囚われるモノを新たに作り出せ、と言うのか。
 このままでは尚に迷惑をかけてしまう。
 やはり尚とは離れた方がいい。
 …こんな満ち足りた気持ちは今だけだ。
 尚の体温を感じながら遥冬は目を閉じた。



 どうしても父に言われた言葉と尚に挟まれて遥冬は考え込む事が多くなった。
 分かっていたはずなのに。
 そして尚から離れればいいのに。
 それなのに学校でもほぼずっと一緒。それでは自分から突き放すのが辛い。
 ……遥冬自身が尚といたいと思っているのだから。
 考えこむのが多くなった遥冬に尚は勿論気付いている。

 尚が問いただしていいか、という雰囲気を匂わせる事があったが、遥冬はそれを気配で撥ねつけた。
 空気を悟るのに長けている尚は遥冬が壁を作るとそれ以上決して踏み込んではこないのだ。
 それに甘えている。
 尚に好きだと、愛しているとまで言われて、それがどんなに遥冬の心を浮上させてくれているかなんて尚は知らないんだ。
 勿論それを尚に伝えていないし知らないのは当然だけど…。
 応えられればいいのに…。
 応えたい。
 我欲が遥冬を苦しめた。

 かなり落ち込んでいたはずの岳斗くんは元通りキラキラ眩しい笑顔に戻り、それが羨ましい、と思ってしまう。
 配達に来た岳斗くんを思わず遥冬は凝視してしまう。
 家の事がなかったにしても遥冬はどうしたって岳斗くんのようにはなれないだろう。
 「何ですか?」
 凝視していた遥冬に岳斗くんが頭を傾げた。

 「……尚に聞いたんだけど……千尋って人が恋人…?」
 「な、な、な……何、尚先輩、余計な事、言ってんのぉ!」
 岳斗くんが瞬時に顔を真っ赤にしたのが可愛くて遥冬は思わずくすりと笑みが漏れてしまった。 
 すると岳斗くんが顔を赤くしたまま今度は遥冬を凝視している。
 「何?」
 「いえ…う~わ~…遥冬さん、チョー綺麗…。…いいなぁ…。あのね!あのね!…千尋先輩ってすっげかっこいいんだ~!」
 岳斗くんが熱に浮かされたようにぽわんとした感じのまま言葉を出した。

 「いっつも俺不安で…。遥冬さんみたいだったらよかったのに、って会う度に思う」 
 「岳斗くんは岳斗くんで、僕からしたら羨ましいのに…」
 互いを羨んでるのが可笑しい。
 岳斗くんもぷっと笑った。
 「でも~いいんだ!千尋先輩が俺でいいって言ってくれるし!……って…あの…遥冬さん…?」
 岳斗くんが遥冬を窺うように見ていたのにああ、と遥冬は頷いた。
 「偏見ないし…。僕が好きな人も男だよ」
 「えっ!!!ホントっ!?…う、わ…でも遥冬さんに好かれるなんてきっとすっごいレベル高そうだ~」
 尚だよと言ってしまいたいけど、…それは言えない。それは遥冬の中に閉じ込めておかなければ尚に迷惑がかかってしまう。

 でもちょっと言ってみたくてつい岳斗くんにそんな事を言ってしまっていた。
 好きな人、なんて初めてだったから…。
 
 
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続きに拍手お返事です~^^
S様
 尚父はかっこいいよ~(笑)
 後からもちょいと出てきます^^b
 昼ドラきた?(笑)
 なんとなくそんな感じでしょ?知らんけど^^;
 キャラ表マジで?^^;
 すげぇいっぱいになりそうなんだけど…
 ありがとうございます~^^

KRB様
 尚父かっこいいでしょ?(笑)
 遥冬父はダメですね^^;
 ブリーダーだね!ほんとだ!^^;
 兄ちゃんちょっと出てきますけど
 私も分かりません(笑)
 ありがとうございます~^^

みらい様
 尚父かっこいい?^^
 そう!尚父がこんなだから尚が出来上がったのかと
 思いますが…なんで残念賞になっちゃうんでしょう~?^^;
 それで遥冬は助かってる部分はあるとは思うけど(笑)
 冷たくしてもめげないし…(笑)
 もちろんハピエンです~^^
 大団円ではない感じだけど^^;…多分?
 まぁ遥冬と尚がよければいっか、的な(笑)
 ありがとうございます~^^

テーマ : BL小説
ジャンル : 小説・文学

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