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焔の行方。 5

 「あ…っ」
 はっとして遥冬が尚を見た。ばつが悪そうに。
 言う気がなかったのか不安げな瞳で尚をじっと見た。
 「……変、だろ…?」
 「まぁ、普通じゃないな」
 尚は遥冬を穿ったままでそのまま安心させるように抱きしめキスした。
 「尚は…嫌じゃない…?」
 「何が?」
 「だって…そんなの…おかしい…って……」
 「別におかしいからってお前の事嫌になるなんてあるわけないだろ。何余計な心配してるんだ?……前に言っただろ?覚悟しろって。そんな小さい事で今更なんとも思わねぇよ?」

 「……小さい…か?」
 遥冬が不思議そうに首を傾げた。
 「小さい小さい。遥冬に何も関係ねぇし。エロいのは大歓迎」
 「あ、ぅんっ!」
 下から腰を突き上げると遥冬が白い喉元を仰け反らせた。
 「ただし俺にだけ、というならな?」
 「…尚にだけ、…だ…」
 安堵したように笑みを浮べた遥冬に尚が唇を重ねた。
 まったく、どれだけ遥冬の中に不安が巣食っているのだろうか?

 「馬鹿だな…。お前の事ならどんな事でも受け止めてやる。遥冬に覚悟しろって言ったけど、俺も覚悟した、って言っただろ?何でも言っていい、とも望んでいいとも言ったはずだ」
 「…ん…」
 遥冬は分かっているのかいないのか、小さく頷いた。
 頷くけれどこれ以上遥冬は家の事に関しては口を開く気はないらしい。
 「尚…して…?…いっぱい…ほし…」
 眦を染めてそんな可愛くねだられれば尚の理性も飛んでいってしまう。
 「あ、ああっ!」

 遥冬の腰を抱きしめ、喉元にキスし、鬱血の痕を残しながら下から突き上げた。
 遥冬も腰を揺らし官能に従順に溺れている。
 半開きになった口から覗く赤い舌に誘われその舌を絡めとる。
 …溺れているのはすっかり自分だ、と尚は心の中で苦笑する。
 それでもいいんだ。
 「遥冬…好きだ」
 「んんっ!あ、ああっ!」
 尚の声に反応するように遥冬が声をあげた。
 「遥冬…俺の言った事ちゃんと覚えとけよ?」
 「お…ぼ……え……ん、はぁっ…!」
 遥冬の身体を捕まえるようにしながらさらに深く、激しく遥冬の身体の奥を衝き上げ貪るようにキスを交えた。


 しかしそれ以上遥冬はやはり口を開くことなく、日数だけが経っていく。
 尚は焦りを隠せない。


 「尚?どうかした?」
 試験日程も無事終わり遥冬の部屋に帰ってくれば遥冬はすぐに尚ににじり寄ってきた。
 もう遥冬は実家に帰ってしまうのか?
 結局遥冬から何も聞き出せなかった。
 いつも聞きだそうとしても遥冬は話すよりも尚を欲しがった。
 「…いつ実家に?」
 「……どうしようかな……?そんな事より、尚…」
 連日遥冬は自分に尚を刻むかのように尚を欲しがるんだ。ソファに座った尚の膝に自分の膝を乗せ尚の頬に手をかけ綺麗な顔を近づけてきた。
 しかしホント美人…。

 別に自分はそこまで面食いというわけでもないはずだが、遥冬には性別を超えた美しさがあると思ってしまう。
 退廃的な美しさとのような、もしくは俗世から離れた美しさというのか、とにかく誰でも遥冬の人とはかけ離れたような美麗さに見惚れるだろう。
 尚も遥冬に惹かれて止まない。
 でも尚はただ綺麗だから遥冬が欲しいわけじゃない。
 「遥冬…」
 エロく誘うところも物欲しそうな目で尚を見るのも挑戦的に仕掛けてくるのも、とにかくどこだってイイんだ。
 「責任とれよな」
 「責任?」
 「そう…」
 くすっと笑いながら遥冬の唇を啄ばみながら言えば遥冬もくすりと笑った。

 その時遥冬の携帯が鳴った。
 「…出れば?」
 どうしよう、という顔をした遥冬に尚が促すと無粋だ、と言いながらも遥冬は携帯を耳に当てた。
 「……はい」
 相手は多分水野だろう。第一こんなにずっと遥冬といても遥冬の携帯にかかってくるのは水野からだけだった。
 尚の膝から降りようとした遥冬の身体を抱きしめ、尚は離さなかった。
 「…明日…?……ああ…分かった」
 明日迎えか?
 尚は遥冬のTシャツを捲ると胸の淡い色をした乳首に口をつけた。

 「…っ!………いや、なんでもない」
 遥冬の身体がびくんと反応したのに気をよくして尚はさらにそこを甘噛みし、舌先で遥冬の敏感にツンと立ってきた先を転がす。
 やめろ、と遥冬が手で尚の頭を押しのけようとするが尚は勿論止めるはずもない。
 「…え?……あ、ああ…いる………けど……。え!?なぜ?………。……尚」
 「うん?」
 「……水野が、代われ、と…」
 遥冬が差し出してきた携帯を尚は黙って受け取った。
 
 

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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