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揺れる焔。 5

 智哉は一体どう思っているのだろうか?
 水野は結婚したとしても変わりはない、と言っていたけれど…。
 女を孕ませる役が遥冬に言い渡されているからそれでよし、と思っているのだろうか…?
 でも遥冬にとって兄がどう思っていようがそれはどうでもいい事だ。

 …しかし異様な風景だろう。
 上機嫌なのは親と女だけ。
 その相手の上座に座る兄は仏頂面。
 そして本当の相手は弟なんだから。
 それでよしとする女にも反吐が出そうだ。

 「智哉さん」
 「……触るな」
 女が隣に座る新郎となる智哉の腕に触れると智哉は腕を振り払った。
 それに女はむっと顔を醜く膨らませる。
 「まぁまぁ、智哉君だってほら、ねぇ…」
 女の父親がくすっと笑いながら含める言い方をした。

 全員承知の上なのか…。
 …吐きそうだ。
 くすくすと薄ら笑いを浮べる親達の目線が遥冬に向いた。
 逃げ出したい…。
 大きな声を出してここから…。
 そうしたら気が狂ってるとでも思ってくれないだろうか?
 …いや、もしそうだとしてもそれでも孕ませろ、と言われるだろう、きっと。
 本当に金に権力に狂っているんだ。
 きっと父は地位を手に入れるため、女の親は金を手に入れるため、女もまたそれに同意している事になる。
 ここでは自分の方がおかしいのだろうか?
 
 結納の品を渡して結納が終わる。
 「すごい指輪」
 場が堅苦しいのから座談に変わり、欲にまみれた大人は結納の品に群がっていた。
 女の母親が結納の品に含まれている指輪に釘付けになっている。
 「吟味して選びましたから」
 得意気なのは父と義母。
 「だめよ。お母様。私のなんだから」
 「分かってます」

 もう何もかもが遥冬の神経を逆なでしてくる。
 欲にくらんだ目にも醜悪な姿にも。
 「今日は早めに食事の用意をさせますから」
 父の言葉にそこにいた者の視線が遥冬に一斉に向いた。
 女の欲と媚を含んだ視線が汚らわしく遥冬の身体に纏わりついてくる。

 「…少し中座します。すみません」
 遥冬は吐き気を我慢出来ずにその場から一旦逃げ出した。
 でも逃げられない。
 嫌だ。
 そのまま遥冬はトイレに駆け込んだ。
 そして吐く物がないので胃液を吐き出す。
 ぜいぜいと息を吐き、頭を抱えて座り込んだ。
 そして携帯を取り出した。

 一度だけでいい。
 尚の声を聞いてもいいだろうか?
 そうしたら尚の為に我慢するから…。
 縋るものが何もない遥冬にとって尚だけが唯一だ。
 たった一人だけだ。
 遥冬の事を好きだと言ってくれた人は。
 心配してくれたのも尚一人だ。
 涙を一滴だけ落とし、そして最後にするから、と自分に言い訳して遥冬は尚の番号を表示させそしてその番号を押した。

 『もしもし!遥冬っ!』
 …名前を呼んでくれた。
 それだけで遥冬の目から涙が溢れてきた。
 尚の声だ。
 「な、お……っ」
 もっと呼んで欲しい。
 『遥冬…』
 「尚……尚……」
 うぐっと嗚咽が漏れた。

 『おま……泣いてるのか!?』
 「…いて…ない…」
 『嘘つくな。んっとに!……なぁ遥冬…どうして欲しい?』
 どう…?
 尚は何を言ってる?
 『…なんでも望み叶えてやるって言っただろ?言え』
 尚の甘い声が聞こえる。
 マンションから出た後尚を無視するようにして出てきたのに尚は全然そんな事に触れもしないで遥冬に甘い誘惑を投げかけてくるんだ。

 「あ、い…たい……ココ……や、だ……」
 『うん。あとは?』
 「あ、と…?」
 『俺にどうして欲しい?』
 「すぐ……むか、え…き、て……」
 尚の家からすぐに出たって3時間はかかる。ただ言ってみただけだ。
 「ごめ……嘘、だ……」
 涙が引いてきた。
 尚にそんな事言ったら本当に来そうだ。

 『嘘なのか?』
 「…………」
 嘘じゃない。遥冬は思わず黙ってしまう。
 『なぁ、お前ちょっと外出られるか?裏口からだぞ?』
 「裏口?」
 『そう。ちょっと言う事聞いてみない?』
 「いいけど……」
 なんで…?まさか…?
 遥冬は携帯を持ったままそっと外に出た。

 遥冬が具合を悪くしているのは皆分かっているらしく外の空気を吸ってくると言えば使用人は納得した顔をする。
 焦る気持ちを落ち着かせながら、挙動不審にならないように気をつけながら裏口に向かった。
 広い屋敷といっていい家の裏口だがほとんど使われる事はない。
 林と言っていいような木の合間を抜けて遥冬は裏口に回った。
 

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いいところで(笑)
続きに拍手コメお返事です^^ 
msz様
 パパ活躍ですか?(笑)
 一瞬私も考えましたけど(爆)
 さすがにそれだと尚の出番がなくなりそうなので
 やめました~(^m^)
 全部尚パパにもってかれそうで~(笑)
 ありがとうございます~^^

S様
 肉食母娘ですね~!
 いやいい男相手ならそうなるって~!(笑)
 あ、ウチの方も今日は34度位あったみたい~^^;
 暑いです(><)
 体調気をつけてくださいね~^^;

KRB様
 遥冬姫…やっと助け求めて…^^
 でも尚王子…?ちょっと変な感じ?(笑)
 尚も色々考えてるんです~許してね(^m^)
 ありがとうございます~^^

msm様
 悶々と…(笑)
 ありがとうございます^^
 それにそんなもったないお言葉(><)
 ありがとうございます(T-T)
 嬉しいです(泣)
 ありがたいお言葉に泣けてきそうですよ(;;)
 本当にありがとうございます~m(__)m

thz様
 パワフルです!羨ましい~^^
 私は全然気力がない↓暑いのは苦手です~(><)
 thzさんも冬生まれなのに~!(関係ない? 笑)
 可憐なお嬢様だったらそちらの親はこんなおかしな事
 認めないでしょ~(笑)
 カモ~ンと蛇のように狙ってる感じで^^;コワっ!
 ありがとうございます~^^ 

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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