「それより!なんで水野と!?」
「ああ~~~…とそれは、う~ん…」
尚が困ったように苦笑した。
「水野さんが色々教えてくれたんだよ…いつだったか大学の帰りに待ち伏せされてて。それと実家帰った後もお前の様子とか、ずっと」
「水野が!?………教えた……?なに、…を?」
大学の帰りに…?まさか…?
こくりと遥冬は唾を飲み込む。
「遥冬の状況」
「!」
尚は知ってた!?もしかして全部!?
「知って……っ!?」
「ああ…。遥冬から言ってもらえるの待ってたんだけど、言ってくれねぇんだよな…そのくせエロエロだし…」
エ、ロ……。
ぐわっと心臓が掴まれる位恥かしくなって耳まで熱くなってくる。
「あ、別にエロでいいよ?……ホント初めてのくせに誘惑して来るし…」
「は、じめ…て……って…」
「セックスしたの俺が初めてだろ?ちげぇ?」
「…………な、んで…?」
「だってそりゃあね…初めて遥冬の中入れた時遥冬ってば息止まりそうだったでしょ」
尚は分かってた…?
「あんな誘惑してきて初めてって…まったく…。…な?俺愛されちゃってるでしょ?」
でしょ、って…。
「誰もそんな事言ってない」
「言ってないけど~。…言ってくんねぇの?俺は遥冬を好きだし、愛してる」
尚の真剣な眼差しが遥冬を見つめているのにいたたまれなくなる。
そ、んな事言えるかっ!
顔が真っ赤になっているのは自分でも分かっていたけど尚を睨む。
「そんな顔で睨まれてもね…。それに学校でのエッチだって嫌でもないみたいだし」
「誰が!そんな事言ってないっ!」
「言ってないけど…。あ、勿論歓迎してるわけじゃないのは分かってっけど?」
「分かってて何が嫌でもないって!?」
「だってねぇ…遥冬サンってばすぐ感じちゃうし」
「っ!」
「煽ってくるのは遥冬の方なんだけどなぁ?遥冬の口から嫌だ、やめろ、って聞いた事ねぇもん」
……尚に求められて嫌なはずなんかない、から…。
「というか!今はそこじゃなくて、なんで水野が!?って話だ!水野は何を尚に言った?」
「う~ん…多分ほとんど、かなぁ?」
「ほとんど!?………僕が実家に戻った理由も…?」
「女とヤる為ってやつ?」
「…………」
尚は知ってた…。
「…………してもよかったんだ?」
「はぁ?」
「知ってたのに尚は何も言わなかったっ!」
「お前が言ってくんねぇんだもんよ。…なんも。俺の事を好きも言ってくれない、理由も言ってくんねぇ」
「……………」
「でもよくねぇからこうして来たんだろ。遥冬が何も言ってこなくたって女に渡す気なんかねぇよ?どうやってお前を家から連れ出そうかと思って…。そしたらやっと電話よこしたから」
「……我慢してた」
ずっと…。
遥冬は顔を俯けた。
「気分悪かった。具合悪かった…」
「うん。なんですぐ言ってこねぇんだよ?」
「だ、って!尚の家にまで迷惑かける事にっ!」
「そんなのどうでもいいけど?そうなったらなったで考えればいいんだ。なってもないのになんで我慢する?俺言ってただろ?何でも言え、って。望み叶えてやる、って。遥冬は俺にどうして欲しい?」
「…………い…っしょ……に、いたい」
「うん。あとは?」
尚が部屋に備え付けの立派とはいえないソファから立ち上がって遥冬の脇に屈み、遥冬の顔を覗きこむようにしながら肩を抱き寄せる。
「キス…したい」
尚が軽くキスした。
「あとは?」
「もっと…」
「いくらでも。でもちょい待って。お前食うの先。食欲ないっていつから?」
「…ずっと…。食べても戻すし…」
「あ?ずっと?」
「気持ち悪かった…何もかもが…」
「……馬鹿だな。自家中毒か?」
「知らないけど…。ああそういえば薬貰ってた…。上着に入ってる」
「取ってきてやる。まず食え」
あんなに実家では何もしなくても気分が悪かったのが本当に今は全然ない。
「ちゃんと食って、薬飲んで、今日はゆっくり寝ろ」
「だって…」
「だめ。ああ、風呂は一緒入って身体中にキスマークはつけてやる」
でもしたいのに…。尚を感じたいのに…。
「そんな目したってダメだ。体力ないだろ。さっきのキスだけでもぐったりしてるのに。ちゃんと食うようになってからだ」
…そんなに物欲しそうな目をしていたのだろうか。
ふい、と遥冬は尚から顔を背け、尚に言われた通りに残っていた食事を口に入れた。
テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学