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白立つ波。 4

 出来るし、仕事も早いし、要領もいい。
 気さくでもあり、生徒に捕まっている事も多々ある。しかしそれもなし崩しにはせず、きちんとある程度の壁をつくっているのも見え、森に関して何も心配するところは見えない。
 そして授業も浪々とした声で進め、どこも迷ったところもなく、問題なしだ。
 頭も凝り固まったところもなくて生徒からの質問にも臨機応変に対処出来ている。
 よく教育実習生だと緊張からか、答えが一つしかないと凝り固まった考えをする者もいるらしいが、森は生徒の答えも聞いて、それを否定する事なく正しい方向へもって行く事も出来ている、と思う。
 
 「やっぱり君は教職採ったら?向いていると思う」
 次の授業の指導案を見ながら千波は言った。
 「そうですか?」
 「ああ」
 相変わらず指導案に直す所は少ない。
 嫌味な位だな、と思ってしまう。千波には楽でいいけれど。このまま千波の指導がなくたって十分やっていけそうだ。
 「生徒達とも節度があるし。これはよく生徒と仲良くなると忘れがちだけど、大事な事だ。君は自然にそれも出来ている」
 「…ありがとうございます」

 「僕なんか必要ないくらいじゃないか?」
 「まさか!こうして指導案が直されるようじゃまだまだという事です」
 直すってほどじゃないけど…と千波は思う。
 森は本当にそう思っているのか殊勝な態度だ。
 こういう所も千波には好感がもてる。
 天狗になってもいいところなのにそうはならない。
 こうしてこんなに長い時間一緒の空間にいて苦痛じゃない人は初めてかもしれない。
 
 コンと数学研究室にノックの音が響いた。
 「篠崎先生」
 立っていたのは週に何回か質問にくる男子生徒だった。
 「分からない所でも?」
 「授業で、ではないんですけど…いいですか?」
 手には問題集を持っていた。
 中に入れて問題の解き方を教えてやる。
 なるほど、ちょっと捻った問題だった。

 「…とこうなる。わかったかな?」
 「はい。ありがとうございます」
 そう言ってちら、と森の方を見てから千波に頭を下げて出て行った。
 ふっと向かいにいる森を見ると今生徒が出て行ったドアを睨んでいた。
 「森先生?」
 「あ、…今のは3組の生徒ですよね?」
 「ああ。週に何回か質問に来るんだ。数学が好きらしい」
 「数学ぅ?」
 森が声を素っ頓狂に上げた。

 「違うでしょ」
 「え?違う?」
 千波はきょとんとする。
 「……あ、気付いてないのか…」
 気付いてない?何が?
 「………篠崎先生、あの生徒に気をつけてくださいね?」
 「気をつける?何を?」
 「アイツ、ガタイよかったですけど、何かやってるんですか?」
 「バスケ、だったかな」

 う~ん、と森が顎に手をかけて考え込み、ちらっと千波を見た。
 何だ?
 「篠崎先生…もしかして…疎いですか?」
 「疎いっ!?」
 何が!?
 「………だよな…」
 うん、と森が頷いている。
 「ご自分の事自覚なされた方いいかと思いますけど…」
 「あ?何をだ?」
 「性の対象にされるって事に」
 「?????」
 何を言ってるんだ?

 「…無自覚…」
 森が呆れたような溜息を吐いていた。
 「あの生徒は篠崎先生が好きなんですよ」
 「はい?」
 千波はきょとんとしたままだ。
 「ええと…?意味が分からないけど?好き?好かれるのは先生だったらまぁ悪くないと思うけど?」
 「……意味違います。あのね、中学生って一番性に対して興味あるっていうか、そんな時期でしょ?」
 「まぁ…」
 早い子は色々知ってるヤツもいたな、と自分の中学時代を思い出す。

 …………ん?そんな意味で好き?
 「まさか。僕が女の先生ならまだしも」
 いくらなんでも女に間違えられたことなどない。
 「いえ、そういう事じゃなくて…」
 カタンと森が立ち上がって千波の横に立った。
 どうした?と千波が見上げると森がぐいと千波の顎を掴んでキスした。

 「こういう事です。篠崎先生は男、女、関係なく人を惹きつけると思います。その綺麗な怜悧な表情を崩したいと男は刺激される。だから生徒であろうが気をつけてください。ガキでもヤローですから」
 森がそっと千波の顎を離して席に戻る。
 千波は呆然としたまま固まった。
 何された?
 キス?
 何で?
 「篠崎先生、次の授業の準備は?」
 「え?あ、ああ…する…」
 心は動揺していたが、表には出さず、千波は機械的に動いた。


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続きに拍手コメお返事です~^^
 
TNT様
 ふふふ…谷村くんではなかったです(笑)
 意表をつけて私はちょっと嬉しいデス(笑)
 というか「千波」という名前を使いたくて
 「千尋」がいたので必然的に兄いたじゃん!
 …と安易に兄の名前になったのでした(^m^)
 ありがとうございます~^^

KRB様
 狭い準備室なのでここでエロはないです(笑)
 一応先生なので~(^m^)
 あ、一応じゃないか、ちゃんとだね^^;
 ありがとうございます~^^

S様
 Sクサイ?(爆笑)
 あら?でもなくなった?^^;
 狭い部屋ですけど、一応マジメにやってますよ?(笑)
 ちょっとは考えたんだけど、モラル的にイカンだろ!
 …と思って(笑)
 生徒が相手だったらアリですけど(^m^)ププ
 千尋先輩の才能に…ですね^^;
 ありがとうございます~^^

msmm様
 いえいえ~!全然大丈夫ですよ~^^
 はい。タカ先輩でした~!
 …というか、そんなに翼で出てきてないのに
 皆様ちゃんとお分かりになるんですね~~~(笑)
 ネーミング…ありがとうございます~!
 嬉しいデス!何を隠そう一番力入れてるのソコかも(笑)
 あ、でも尚もそうだけど、孝明も主役にくる予定なかったので
 適当名前なんですけど…^^;
 これは「千波」という名前を使いたくなって兄が出来たのでした(笑)

 え~~~~!岳斗みたいなんですかぁ?/////
 ありがとうございます~!嬉しいデス~~~(^m^)

MR様
 顔も全部似てないです~(^m^)
 名前にう~ん???とは思ってますが気付いてません(笑)
 色々そこ等辺は後で出てきます~♪♪♪
 
 やっぱ治ってないので^^;一応病院行ってきます(><)
 めんどくせ~~~…^^;
 ありがとうございます~^^

okw様
 よかったです~^^
 私は毎回新しい話になるとどうだろう…?
 ってドキドキなのですが…(--;)
 でもいつも書き終わってるのでどうしようもないです(笑)
 気に入っていただけるといいのですが~~~(><)
 お心遣いもありがとうございます~^^
 そしてこちらこそありがとうございました~m(__)m

テーマ : BL小説
ジャンル : 小説・文学

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