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白立つ波。 9

 「う、…っ!」
 千波が食べ終わったと同時位に孝明の手が千波の足を触ってきた。
 「ちょっ…何…っ?」
 「いえ。肌の色白いですね?体毛も薄いし?」
 体毛って!
 孝明に言われた事にかっとして千波は身体を震わせた。

 「……シャワー使います?」
 孝明がもしかしたら拭いてくれたのか、昨夜の吐いた匂いが残っているわけではないけれど、なんとなく酒臭い感じがしてキモチワルイ。
 人の家で…しかもキスもされてるのに抵抗があるが…どうにも主導権を握られて千波に選択肢はあまりないようだ。
 「あ、……貸して…ください」
 こっちです、と案内されるのにTシャツの裾を気にしながらついていく。
 「タオル、はい。歯ブラシとかも、…どうぞ。シャンプーとか勝手に使っていいですから」
 「…ありがとう…」
 何から何まで世話かけっぱなしだ。
 それで余計に何も言えなくなってくる。

 「…あと帰る…」
 「いいえ?帰さないです、って言ったでしょ?ま、いいや。まずシャワーどうぞ」
 にこりと笑う孝明の顔が怖い。
 「そういえば…眼鏡、かけてない、けど…?」
 いつもは真面目そうな印象なのに、髪型、服装が違って眼鏡がないというだけで驚くほど印象が違いすぎる。
 「目はいいです。いつもは伊達。真面目そうに見えるでしょ?」
 小さく千波は頷いた。いつもは演じている、のだろうか…?

 風呂場で一人になって千波は息をほうっと吐き出した。
 どうやって帰ろうか?
 いや、なんか明日は帰すって言ってたけど…。
 なんでこんな事になったのか…。
 一体自分は何してるのだろうか…。
 そう思いながら熱いシャワーを浴びた。

 洗面所でなにやらごそごそと孝明が動いている。電子音がするのに洗濯機を回しているんだと分かった。そして人影がなくなったのにほっとする。
 入ってこられたらどうしようか、と思ったけれどそうではなかったらしい。
 …いったい何の心配をしてるんだ、と千波はくすと笑ってしまう。
 いや、…キスされてる、じゃないか…。
 でも何でもないような事を言っていた。
 じゃなんでキス?
 訳が分からない。

 そしてなかった事どころかすでに何回もされているらしいのだ。
 そういや初めてだった、と泣いたとも言ってた。
 ……恥ずかしい。
 世話になってるだけでもどうかと思うのに、キスも初めてまで知られて千波の面目なんてもうどこにも皆無だ。

 孝明に対し、いったい自分はどんな態度をとればいいのか…。
 これで指導教員です、なんて大きな顔をしろと?
 恥かしくて出来そうにない…。
 はぁ、と何度も溜息が出てしまう。
 考える事がありすぎて頭を掻き毟った。
 佐藤先生の愚痴になど付き合わなければよかった。
 今更何を言ってももう遅い事だけど…。

 熱いシャワーを借りて身体も頭も気分もかなりすっきりした。
 そう思いながら風呂場から洗面所にあがり、用意してもらったタオルで身体を拭いた。
 やっぱり洗濯機が音を出して回っている。
 きっと千波のせいで孝明の服を汚してしまったかもしれない、と思えば申し訳なってくる。
 この迷惑をかけた分はきっちり返さなきゃいけないな、とまた溜息だ。

 「あ、れ…?」
 さっき借りたTシャツはあるけど、それしかない。
 きょろりといくら見渡しても、洗濯籠をひっくり返してもやっぱりTシャツしかなかった。
 ゴォンゴォンと回ってる洗濯機をじっと見た。
 まさかパンツも洗濯機ん中か?
 どうしたってそれしか考えられないけれど…。

 とにかくTシャツだけは着る。
 前が気になって仕方ないけれど、そっと洗面所から顔を出した。
 別に男同士だし気にする事はない、と思う…けれど。
 キスまでされているのにどうしても身構えてしまう。
 「あがりましたか?」
 すぐに孝明が気付く。

 すでに千波が平らげたお茶漬けの茶碗も片付けられ、孝明はまた教科書を広げていた。
 熱心で、真面目ではあると思う。
 だからこそ文句がないような指導案も作れるのだろう。
 それはいいけど…。
 心許ない前を気にしながら洗面所を出た。
 「ああ、洗濯してますから」

 くすと千波がもじもじといっていいような態度に当然ですが、といわんばかりに孝明が告げた。
 それにお礼を言えばいいのか、余計な事をして、と言えばいいのか。
 結局何も言えなくてどうしたらいいかと裾を気にしながら立っていた。
 「椅子もなんもないですし、クッションもコレ一個なんで、ベッドにでも座っててください」
 そそくさと言われた通りにベッドに腰かける。ヘッドボードに本を見つけた。
 「…コレ、読んでていいか?」
 推理小説らしい。
 「どうぞ?」
 千波は何もする事もなくて本に集中する事にした。
 しかしあまりにもおかしな状況なのに、なんで自分は大人しくしているのか。
 いや、強気にはどうしたってなれない、けど…。
 
 
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続きに拍手コメお返事です~^^
AHN様
 孝明クンいい感じになってます~(^m^)
 下克上!(笑)なるほど!と思わず納得^^b
 イメージですか?全然ないです~(笑)
 私いっつもそんな感じなので^^;
 ありがとうございます~^^

T MT様
 いつもご訪問ありがとうございます^^
 千波可愛くなってますか?^^
 千尋先輩の兄とは思えないような初心っぷりですが(笑)
 全然似てない兄弟!という事で~(^m^)
 ありがとうございます~^^

KRB様
 泣きじゃくってる様子浮かびますか?
 きっと絡んでたんでしょうね~(笑)
 そうそう据え膳です^^b
 策士ですよ~(^m^)
 ふふふ…
 ありがとうございます~^^

MR様
 あ、よかったです~^^
 話はいきなりの展開でした~(笑)
 面倒見はいいですね(いつものように 笑)
 放置だと進まないので^^;
 あ、私は大分よくなりましたよ~^^
 ほんとびっくらこきましたが…^^;
 びっくらというかキモッ!って感じでしたが(笑)
 ありがとうございます~^^ 

テーマ : BL小説
ジャンル : 小説・文学

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