「千波さん…」
孝明が何度も千波の名前を呼んでくる。
なんで?
………好き、でもないのにこんな事をしてるんだろう…。
「あ、あっ」
孝明が腰を進めてきて千波の中に納まろうとしてくるのに千波は孝明の首にぎゅっと力を入れて抱きついた。
なんで…。
そう思いながらも千波は孝明の好きにさせているんだ。そして…待っているんだ…。
だって…心地いい…。
そう…。
孝明といるのが心地いいんだ。
話し方も空気感も。
動揺する事はあるけれどマイナスと、嫌だと拒絶を感じるところがないんだ。
今までこんなにすんなりと千波の空間に違和感なく存在する人なんていなかったんだ。
さっき来た千尋でさえなんとなく部屋の中に入れるのに違和感を覚えたのに。
孝明はすんなりと自分から入れたんだ。
「…何考えているんです?」
「え?…ん、ぁっ!」
「余裕あるんですね?」
孝明がぐいと千波の後ろを指で衝いてくる。
「やっ…!」
「嫌じゃない、でしょう?ほら?前がまた勃ってきてますよ?」
後ろを指で刺激されればその奇妙な背徳感と与えられる疼きにも似た快感にどうしても刺激され感じてしまう。
「んんぅっ」
圧迫が大きくなったのに腰が引けそうになる。
「指増やしました…でもまだ2本ですから…奥までちゃんと解さないとね…」
そんな事いちいち言わなくても…!
千波は孝明に抱きついていた腕を離すと自分の顔を隠すように覆った。
「…隠さないで。感じていい、って言ってるでしょう?」
「だ…て…こ、んな…っ」
みっともない姿…。
嫌だとか言っといて男の前で足広げてイってよがってる姿なんて!
「綺麗ですけど?もっと感じて乱れていいです。腰振って喘いで求めてくれていいですよ?」
そんなのするか!
きっ、と思わず孝明を睨むと孝明が婉然と笑った。
「やっぱり随分余裕あるようですね…?二回目だから?じゃあもう入れてもいいかな…?」
「や、めっ!」
「…嘘ばっかり。ほら?あなたのココは待ってる…。…でしょう?中はひくひくとして収縮を繰り返してますよ?先週のよかったのを覚えているんですよね?」
「ち、が…っ!」
「いいのに…。まぁ素直じゃないのは上の口だけで身体も下も全部素直ですからね」
「あ、ああっ!」
くすと孝明が笑いながら指を引き抜くとその中から抜ける感覚に千波の身体が震える。
「ほらね?これも感じるんでしょう?」
違う!と言う間もなく孝明はすぐにすっかり屹立していた自身を千波にあてがってきた。
「んっんんぅ…!」
「…声、我慢しなくていいですって言ってるのに。俺しか聞いてませんよ?」
だからなんで聞かせなきゃないんだっ!男のよがってる声なんて興ざめなだけだろう!
「千波さんの声はイイ、ですよ…?キます…」
千波の考えが分かったかのように孝明のちょっと掠れた声が色気を伴って千波の耳元に囁いた。
「千波さん?声出して?…ほら…」
「あ、ああっ!…んっ」
ぐいと孝明自身が千波の中に押し入ってきたのにその圧迫感から逃れようとして声が漏れた。
「もっと…聞かせて」
さらに奥へと孝明が身体を押し付けてくる。
「千波さん」
孝明が耳元で名前を呼ぶのにその声がさらに千波を煽ってきたのにぞくぞくと千波は快感の波が押し寄せてくる。
さらにゆっくりと孝明が抽送をはじめ、内壁を擦られるのにざわりと肌が色めき立ってきてしまう。
自分が男にヤられてこんな風になるなんて…。
そう思いながらも声は止められない。
孝明が千波の頬を手で包み、そしてキスしてくる。
穿たれながら交わされるキス。
舌が絡んで吸い上げられ、声が吸収されてしまう。
「んっ…ぁ…」
身体が段々と激しく揺さぶられてくる。
「イイみたいですね…ほらもうすっかり千波さんのココ、勃ちあがってる」
はっと孝明も短い息を吐き出しながら手をつっと千波の身体を伝わせ、そして衝かれ穿たれながら震える千波を掴まえた。
一度出して敏感になっている身体はそれだけでももう出したいと訴えてくる。
「ダメです。…まだですよ?」
とろとろと先から透明な液を零しているのに孝明は根元をぎゅっと握った。
「やあっ!」
「ダメ。もっと感じて、腰振って、あなたからねだってくれないと…」
そんなの…!
「我慢するところもそそりますけど官能に身を任せたとこも壮絶にいいですからね…」
何がいいものか!
そう思っても漏れる声は全部熱い熱のこもった声しか出なかった。
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