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泡立つ波。 7

 孝明は大学が始まってからぴたりと来なくなった。
 鍵を渡そうか、と千波はかなり悩んだが、結局渡せないまま日曜日の夜に大学の準備があるから、と孝明が帰っていってそれきりだ。

 そりゃそうだろう。
 ずっと実習で大学は行ってなかったし、帰りもほとんど千波の部屋にいたのだから。
 合鍵をポケットに入れていつ渡そうか、と何度もタイミングを計ったのに結局渡せなかったのだ。
 ずっと持ったままの合鍵…。
 教職の千波と学生の孝明では生活の時間帯が違う。
 きっと千波の仕事が終わる時間あたりから孝明はバイトがあるだろうし…。
 千波は携帯を見ては何も電話もメールも入っていないのにただポケットに携帯を戻す。
 来なくなったどころか、連絡すらもない。
 …忙しいのだろう、と自分からも連絡は入れない。

 そんな感じで1週間も経ってしまった。
 土曜日で学校も休み。
 千波はごろごろとミューと遊んで時間を潰していたがどうにも鬱屈としてくる。
 「…ちょっと出かけてくる。お前のご飯も買ってこないとな」
 ソファーで眠っていたミューを撫でてから千波は出かけた。

 いつも行っている学校近くのペットショップではない所に行ってみる。
 そういえばこっちは千尋のマンションが近いな、と思っても千尋の所になど行く気にもならないけれど。

 「あ!千尋先輩のお兄さん!」
 「…岳斗くん?」
 ミューのご飯を買ってぶらぶらと店を覗きながら歩いていたら声をかけられた。
 「今日はタカ先輩いないの?一人?」
 「…ああ。教育実習も終わったから」

 人懐こい笑顔で岳斗くんが千波の隣に並んだ。
 「タカ先輩と一緒いたのにすっごいびっくりした~!」
 「…そうだな。千尋と同級生ってのに僕も驚いた」
 いつも岳斗くんはにこにこ顔。こんな風に素直に感情を出せればまた孝明の反応も違うのだろうか?
 「千尋先輩は今日取材でいないんだけど、千尋先輩のお兄さん、時間あります?ウチちょっと来ます?」
 「え?」
 まさか岳斗くんから誘われるとは思ってもなかった。

 「あのね~!タカ先輩ボーカルのCDありますよ?」
 ぷぷぷ、と笑って岳斗くんが言ったのに心が惹かれた。
 「高校の時の!Linxってバンドで!」
 「……行く」
 思わず千波は頷いていた。
 「今も歌ってますけど、声がLinxの時の方若いんだよね~」
 「……今も歌ってる?」

 「え?知らなかった…?今もバイトでライブハウスで歌ってるんですよ!千尋先輩が紹介したんだけど!でも毎日じゃないみたい」
 「…そう、なんだ」
 バイトが毎日じゃないとは聞いていたけど、バイトがそうだったとは、そんなの知らない。聞いてない。
 何も自分は孝明の事なんて知らないんだ…。
 「千尋先輩のお兄さん…?」

 どうかしたのかな?と岳斗くんが心配そうな顔をして見ていたのに苦笑した。
 「いちいちそれ、呼ぶの長いだろう?名前でいいよ」
 「…ええと、千波さん?」
 「…うん」
 へへ、と岳斗くんが嬉しそうに笑った。
 …可愛い。

 「千尋先輩と全然似てな~い!千尋先輩はかっけぇ!だけど千波さんは綺麗!美形兄弟だ…」
 「…そう?そんな事言われた事もないけど…」
 「学校の先生って…生徒からもてもてでしょう?」
 「いや?全然そんな事ないよ?」
 軽い会話をしながら岳斗くんと一緒にマンションへ。
 セキュリティ付きのマンション。なんの因果か、千尋は芸能人なんてしているから仕方ないだろう。

 「ミューちゃん!大きくなった?この間はチョーーーーー小さかったけど!」
 「なったよ。あっという間にもう体はふた周りも大きくなってる」
 「そうなんだ~!いいな~…可愛かった…」
 「可愛いよ?帰ると玄関で待っててくれる」
 「うわ~~~~」
 岳斗くんが頬を紅潮させている。
 …ほんと可愛い、な。
 千尋が傍に置くのが分かる気がする。

 「どうぞ~」
 「お邪魔します」
 岳斗くんに案内されて部屋に入った。
 ここで千尋と岳斗くんは暮らしてるんだ。
 男同士…。
 ……岳斗くんなら違和感ないけど。

 「これこれ!」
 リビングのデッキにCDをセットして千波もソファに座って耳を傾ける。
 「コレ、歌ってるのが…孝明?」
 「うん。タカ先輩」
 なんとなく違う感じ。でも孝明の声。高校の頃の。
 「……岳斗くん、コレCD、もらえない、…かな?」
 「え?……千波さんは千尋先輩の身内だし……いいかな…?」
 ああ、ベースが千尋なのか。全然気にしてなかった。

 「千尋には興味ないし」
 「え~~~~!!!千尋先輩のベースかっこいいでしょ!?今はもっともっといいんだよ!?」
 「あのね…兄の俺が弟のベースべた褒めってそれもどうかと思うけど?」
 「…そうかなぁ???だっていいものはいい!と思うもん!ま、いいや。じゃ、ちょっと待っててくださいね~。コレはダメなのでLinxの分だけ落としますから」
 「…ありがとう」
 岳斗くんがPCをたちあげすぐにCDをおとしてくれた。
 
-------------
続きに拍手お返事です^^
MR様
 実習終わって孝明不足です。
 でもすぐ現れるけど^^;
 え~?自然ですか?
 自分じゃう~~~ん……って時も
 あるけど…^^;
 だいたい私がいいかも!って思う所は
 拍手が少ないです……(--;)
 ダメって事ですよねぇ?↓
 ま、いいけどさ……
 ありがとうございます~^^

KRB様
 あともう少しなんですけどね~^^;
 ふふふ…
 ミューは相変わらずおりこうさんです♪
 ありがとうございます~^^

JN様
 お久しぶりです~^^
 毎日……ありがとうございます~(T-T)
 嬉しいです…(><)
 孝明、いいですか?
 敬語いいですよね?(笑)
 あ!分かった!
 私元々年下攻めってあんま好きじゃなかったんだけど、
 敬語が好きなんだ^^;
 宗は敬語じゃなかったけど…(笑)
 ありがとうございます~^^

S様
 や~~~~ん!!!爆笑!
 絶対言ってる~~~~~!!!(大笑)
 私はミューちゃんかなりの猫っかぶり
(猫だけど)
 だと思うんだ~(^m^)
 ほら~?イイコでしょ?って顔に絶対なってると思う…
 千波ちゃんお仕事でいない時
 イタズラしないわけないよね?^^;
 しれ~っとして絶対やってそう…
 でもばれないイタズラないか…^^;
 テーブル乗っかったり位かな?
 ばれないのって…(笑)
 ありがとうございます~~^^

nck様
 おひさしぶりです~^^
 そうなんです~^^;二人どうしても素直になれない…(--;)

 え?猫スリスリしませんか?^^;
 ウチの子達かなり激しくスリスリしますけど^^;
 1匹は、時にはヨダレ垂らしながらすりすりします…(笑)
 呼ぶとわりと来るし~^^
 病院の時は逃げますけどね…(--;)
 ありがとうございます~^^

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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