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熱視線 無伴奏~ア・カペラ~4

 「俺も貰ってる。目に見えない物をいっぱいな。コンサートの前だっていつもはもっとひどい状態になるんだがお前がいたからならなかったし、曲だって…昨日、俺は初めて演奏会で自分が総毛だった。あんな思いは始めてした。宗もなんだか知らないうちに寄ってくるようになったし…。親父も…。あんなに苦手で顔を見るのも、声を聞くのも嫌悪してたのが、お前がいればそうでもなくて…。いや、ただの馬鹿に見えるからだが」
 明羅は黙って怜の胸に顔を埋めて聞いていた。
 そんな風に怜が思っていたなんて全然知らなかった。
 「でもとりあえず今日も明羅くんちょうだいね?」
 「…………え?」
 「だってほら、指輪、プロポーズのつもり、だったんだけど?受けてくれたんじゃないの?」
 怜が冗談めかして言った。
 「そっ……それ……」
 かぁっと顔を隠したまま真っ赤になる。
 「それこそ明日はずっと起きなくていいから。今日は無理やり連れ出しちゃったけど」
 「そ……っ……」
 「だめ?」
 ダメなはずはなくて。
 明羅は小さく首を振った。
 「じゃあ、クリスマスプレゼント~という事で!」
 「そんなのっ!とっくの前から…あげてる、でしょっ」
 「だっていつも気を遣ってるし。ほら、昨日は後ろでも感じれたみたいだし…。冬休みで学校の事考えなくてもいいし!好きにさせてくれる?」
 さらに顔は赤くなって耳まで熱くなってくるが、拒否なんて始めから考えてないし、怜に言われれば何も言えなくなる。
 「い、くらでも……いいよっ」
 ぶぶっと怜が噴き出す。
 「ほんと可愛いね~~」
 「…絶対、それ、おかしい…よ」
 照れくさくて、恥かしくて、明羅は顔をあげられない。
 「おかしいのはお前のほうだろ。どうみたって高校生の男子にゃ見えない」
 明羅はむっとして思わず顔をあげた。まだきっと顔は赤い。
 「どういう意味?」
 「いいやぁ?」
 怜が明羅から視線を逸らした。
 「………いいけど。…怜さん…」
 「ん?」
 「……これ、…それと、これも」
 明羅は指輪をそっと撫で、そして鍵を握った。
 「……ありがとう。でも…いいの…?」
 「いいに決まってるからやったんだろ。返品不可だ」
 返品不可って。
 明羅はぷっと笑った。
 「…さっきは冗談っぽく言ったが、心情的には嘘はないぞ」
 怜の目が真っ直ぐ明羅を見ていた。
 プロポーズ、と言った言葉に対してだ、と明羅はすぐに気付く。
 「怜さん…」
 「それも拒否はなしだがな」
 「…拒否なんてするわけないでしょ。…俺も何か怜さんにあげたい…」
 「まぁ、そのうちに」
 怜がくすくすと笑って体を起こした。
 「お前は夜に備えて動かないでゆっくりしていてくれ」
 「……だからっ…そう、いう事…」
 言わなくていいのに。
 かっとまた顔が赤くなる。
 「だって恥かしがる顔が可愛いから」
 「もう。ふざけないで!」
 「ふざけてないけど。…さて、落ち着いた所で昨日の反省会でもするか」
 「反省会?昨日の?演奏の?昨日はどれも……あ…」
 「なんだ?ダメなのあったか?俺的にも昨日はどれも悪くはなかったと思ったけど。一番よかったのは自分でも<ハッピバースデイ>だ」
 「うん。それはそうなんだけど……<エロワルツ>にエロ入れたのがだめ」
 「…やっぱり分かっちゃった?」
 怜の目が笑ってる。
 「当たり前でしょう!」
 「だって気分的にエロで弾きたかったから。でも明羅に怒られるなぁと思って抑えたんだが。でも昨日は今までにない位全部気持ちよく弾けたな」
 「うん…すごく、よかった」
 ソファで並んで座ってただこうして話をしている時間でも幸せだ。
 そっと指の指輪を触る。
 まさかこんなサプライズが待ってるとは思わなかったけれど。
 でも昨日の演奏会を思い出すとまた明羅に感動が甦ってきて、それが治まると音が鳴ってくる。
 あんなものじゃない。
 もっと、もっと。
 足りない。
 「怜さん、やっぱりピアノ協奏曲しない?」
 「は?」
 怜が目を丸くした。
 「おま……ピアノ協奏曲まで作る気…?」
 「ん~…出来そうな気がする。オケの音が怜さんのピアノさらに壮大にしてくれる…」
 明羅の頭に音が鳴るのに思わず一人で酔いしれそうになる。
 「…やっぱどうしたって普通じゃないだろ」
 怜が呆れてた。
 

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