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会計クンは鷹揚自若 5

5 駿也(SHUNYA)

 六平と仲良くなれ、と言われたけれど…。

 どうしていいのか駿也には分からない。
 2年生がぶつかってきて持っていた物をぶちまけた時に六平が近くにいて話しかけられたけど…。
 同情のような六平の言葉に自分の態度が悪かったような気がする。
 でも正直駿也にはどうしたらいいか分からないのだ。

 父親から言われるのは秀邦にいる間に一条会長と懇意になれ、だけ。
 どうやって?
 …知らない。そんな事。

 学年も違うし、懇意にと言われても一条会長相手じゃ気軽に話す事なんて無理に決まっている。
 会長の方から話しかけてもらえるならいいけれど、未だそんな事は一度だってない。
 
 今まで小学校からずっと勝手に駿也に纏わりついていた奴ら。
 それが高校に上がった途端なくなった。
 そんなのももう今は別にいい。
 どうせ家でも一人だ。

 むしろサッカー部の奴らに解放されたんだから…。
 ふっと駿也は自嘲を浮べる。
 そいつらにさえも見捨てられた自分。
 家でだってあれなのにそれで一条会長と懇意に?

 …無理に決まっているだろう。
 一条会長が無理そうで、だから今度は六平?
 六平は会長に指名されたくらいなんだから六平も優秀なのだろう。

 自分とは違う。
 選ばれた側の人間だ。
 それにしたっていっそ一条会長の気を引けなんて駿也にいいつけるなら自分でどうにかすればいいのに。
 父も兄もあまり一条家に気に入られていないらしい。
 それで駿也にまでお鉢が回ってくるのだ。

 …駿也だって一条家の人じゃないけれど父も兄も好きではない。でも五十嵐の家にいて世話になっている身では突っぱねることさえできないのだ。
 学校での態度と家での自分の態度の違いの差は滑稽だろう。
 でも六平は何も言ってはいないみたいだ。
 …そして学校でも六平の視線を感じるようになった。

 話しかけこそしてこないけれど廊下ですれ違う時に六平から意味ありげな視線を感じた。
 六平はどう思っているんだろう…?
 いや、きっと駿也の事だって別に気にしているわけではないのかもしれない。駿也が六平と懇意にと言われたから駿也が過剰に六平を気にしてそう感じているだけかもしれない。
 …きっとそうだ。
 自分なんかに誰も興味持つはずなどないだろうから。

 日曜日でもどこに出かけることもなくじっと自分の部屋でただ時間を過ごす。
 それが一番理想の形だ。 
 父親は自分の地位を守るための付き合いでほとんど家にはいないし、義母もそう。義兄も結婚の準備に忙しいみたいだしほっとする。
 そう思っていたのに…。

 「駿也出かける用意をしろ」
 がちゃりとノックもしないで部屋に入ってきたのは義兄だった。
 出かける…?
 机に向かってただ座っていた駿也は突然部屋に入ってきた義兄を訝しんだ。

 「由梨の弟と出かける約束をとったから。お前は六平の息子と懇意にして一条とも繋がるようにしてこい」
 何を勝手な事を!
 「…六平が、俺と…?そんなわけ…」
 「聞いていなかったのか?出かける用意をしろ」
 傲然と言われて駿也はそれに抗う事もできず財布、携帯など必要な物を持った。

 「出かける…って…」
 「俺は由梨と式場に行く。どこにも出かけない弟が、って話題を振ったら由梨の弟も同じだと。なら二人で出かけたら?と言ったんだ」
 六平と出かける?
 なんで六平とまともに話もしたことないのに勝手にそんな事になってるんだ!?
 「お前がさっぱり役に立たないからお膳立てしてやったんだろう」
 ふん、と義兄に鼻をならされた。

 そのまま車に乗せられて六平の家に向かう。
 「いいか、お前などどこにも役に立たないただの金のかかる居候だ。せめて一条にいい印象を残せる位の仕事はこなすんだな。歳が近くとも一向に一条の息子と懇意になれないんだからせめてその取り巻きから近づけ。由梨の弟は生徒会役員で一条の息子と一緒だな?」
 「……一緒です」
 義兄は駿也の返事に満足したように頷いている。

 六平と万が一仲良くなったからといってそこからどうして会長に繋がるはずあるのか、そのわけの分からない構図が駿也には理解できない。
 しかし六平と出かける?
 義兄が駿也を連れて行くというのに六平は頷いたのだろうか?まさか勝手な義兄の思い込みではないのか?と穿った考えを浮かべてしまう。
 だって六平が同意したのが信じられない。

 

テーマ : BL小説
ジャンル : 小説・文学

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