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会計クンは鷹揚自若 8

8 駿也(SYUNYA)

 可愛い…。
 アザラシの所でまた駿也は止まってしまった。
 アザラシの所に来るまでもさっきからずっと色々な所で足を止めては見入ってしまっているんだけど…。
 アザラシは目が黒くてきょろんとしててチョー可愛い。
 そして泳ぐスピードが早い!
 でも可愛い!

 「ああ!」
 ずっと六平は何も言わないでただ駿也の傍にいただけだったんだけど、その六平が隣でぽん、と手を打って一人で納得していたのに思わず駿也が六平を見上げた。
 「お前似てる!」
 「…似てる?」
 何が…?
 「アザラシと!」
 ぶふっと六平が一人で笑ってた。
 「真っ黒い大きな目!」

 …似ていると言われて駿也がアザラシをじっと見ているとアザラシも駿也をきょとんと見ていた。
 六平はウケてるのか一人で口を押さえてずっと笑っている。
 可愛い、と駿也が思ったアザラシに似ていると言われて喜んでいいのか悪いのか…。
 微妙だ、と首を捻ってしまう。

 「…似てない」
 「いや、似てる」
 六平に言い切られてしまった。
 子供達が親に連れられて厚いガラスにへばりついてる中に駿也も混じっているのにはっと気付いてちょっと恥かしかった、とガラスから離れる。
 「五十嵐、イルカショーあるから。いくぞ」
 「え?あ、…ん…」
 笑いを止めた六平に言われて駿也が頷くと、また六平が駿也の腕を掴んだ。

 イルカショーの会場までその腕は離さないらしい。
 別に引っ張られなくても歩けるけど、と思ったら途中であちこちに駿也は視線を取られそうになってその度に六平に腕を引っ張られた。
 「イルカショー見たらゆっくり見ていいから」
 苦笑されながら言われて、腕は駿也がよそ見してはぐれない為だと分かってちょっと恥かしくなってしまって顔を俯けた。
 ずっとあちこちでじっくりゆっくり堪能していた駿也に六平は急かす事なくずっとただ横にいてくれたのだ。
 何も言わないでただずっと隣にいて…。
 六平はこんなんで楽しいのだろうか?
 駿也はかなり満足していたのだが…。

 イルカショーの会場に来て座席に座るとちょっと待ってろと六平がまたそう言っていなくなった。
 周りは小さい子供連れ家族とカップルばかりだ。
 その中に男二人って…。
 もしかしてちょっと恥ずかしい…?
 駿也は水族館に夢中で全然気付かなかったけれど、六平はどう思っているのだろう?
 少しして戻ってきた六平はジュースを買ってきてくれたらしい。

 「はい」
 「あ、俺の分…」
 「いいから」
 払うと言いかけたら六平に止められた。
 「……すみません…」
 小さい声で呟いてから受け取る。
 「勝手に買ってきたけど。…よかったか?」
 こくんと駿也は頷いてストローに口をつけた。入場料も払ってもらって飲み物まで…。

 「まだ始まるまで時間あるからな」
 いいのだろうかと思っていたけれど六平は気にした様子もなく隣で長い足を組んで同じようにストローに口をつけていた。
 男二人でこんなトコいて恥かしくないか、とか、つまらなくないか、とか聞きたいと思った事もあったけれど口に出来ない。
 駿也は顔を俯けて黙ってジュースを啜った。


 そのうちにイルカショーが始まってまた駿也の目は釘付けになった。
 小学校の時も見ているはずなのになんでこんな新鮮に感じるのだろう。
 「ゎっ…」
 思わず小さく声を上げる。
 イルカの高いジャンプ。指示通りにボール追いかけたり、回転したり。

 「ぅわっ!」
 水飛沫が飛んできてかかりそうになったら目の前が暗くなった。
 え…?
 目を大きく見開けば六平が駿也に覆いかぶさるようにして水飛沫がかからないようにしてくれていたのだ。
 「…結構濡れるな…」
 ふるっと六平が頭を振ると水滴が飛んでくる。
 「ぁ……」

 ありがとう、というべきなのか、でも言葉が出なかった。
 駿也を濡れない様に庇ってくれた六平は何事もなかったようにまた普通に隣に体勢を戻す。
 心臓が何故か早く鼓動を打っている。
 ……きっと驚いたからだ。
 六平はいったいどういうつもりでここにいるんだろう?
 義兄に言われて仕方なく?

 「ほら、お前手挙げなくていいの?」
 「え?」
 六平がくっと笑いながら駿也の耳に囁いた。
 イルカの調教師が誰かボールを投げてくれるお友達いませんか~?と声を客席にかけており、小さな子供達がはいはい!と手を挙げている所だった。

 「お前も挙げたら?」
 「……挙げません」
 駿也がむっとして答えたら六平は思い切り隣で笑っていた。
 「ほんとはしたいんだろ?」
 「…別に」
 つんとして六平からそっぽを向いた。
 …ほんの少しはしたいかも、と思ったなんて言えないけれど。

 「イルカとタッチできるぞ?」
 「え!?ほんとに!?」
 ぐりと六平の方を向けば六平がまだくっくっと笑っている。
 「ああ、あとのイベントであったはず」
 触ってみたい。
 「あとで申し込もうか」
 駿也は小さく頷いた。
 
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