19 駿也(SYUNYA) 目を開けたら椅子だけで六平の姿がなかった。
帰った、んだ…。
いつの間にか駿也が眠ってしまっていたのにつまらなくなったんだろう。
そして寝てた間も自分はイルカをずっと抱きしめたままだったらしい。
それに顔を埋めればしんとした部屋に心細くなってきた。
熱のせいだ。
今までだって別になんでもない事だったのに…。
額にはタオルが乗っていて六平がいた事を知らせているのにその人はいない。
「……っ」
声が漏れる。
バカみたいだ…。
自分なんか誰も気にしてなんかくれるはずもないのに。
父親だって義兄だって駿也を気にするのは会長に繋がるかどうかが気になるだけだ。
学校でだってあんなに駿也の気を惹こうとした奴らが誰もいなくなった。
サッカー部でも問題の多い阿部達にでさえ自分は見放されたんだ。
それは歓迎出来る事だったけれど、それ位自分がいらない者だと言われているみたいだった。
誰もいない家なら駿也が声を出して泣いた所で誰も知らない、気付かないはずだ。
「ぅ……」
自分の情けなさが嗚咽となって漏れた。
するとがちゃりドアが開いて慌てた様子の六平が駿也のベッドに近づいてきた。
帰ったんじゃなかった…?
「五十嵐?どうかしたか!?」
「む、六平…?かえ、ったんじゃ…?」
「いや、洗面器の水替えに行ってただけだ、が…」
涙で潤んでいる駿也の目を六平が手を伸ばしてきて涙を指で拭ってくれたのに心臓が苦しくなった。
「どうした?具合悪いのか?」
「ちが……かえ、った…とおも…たから」
心配そうな六平の表情。
「……黙って帰らない。…水飲むか?」
…黙って帰らない…?
いなくなった六平の姿に子供みたいにバカみたいに不安になって泣いたなんて恥ずかしい。
「ん…」
小さくなって駿也が頷くと六平は駿也背中に手をかけて身体を起こしてくれる。
うわっ。
駿也は六平の体温を間近に感じて心臓がさらに苦しくなってきた。
六平の顔が近い!
しっかりとした腕が駿也の身体を支えている。
「水」
「…ん」
コップを手渡されると六平の腕が離れた。
それがまた心寂しく感じるのはどうして…?
六平は部屋の外に置いていたのだろう洗面器を持って駿也の額のタオルを浸した。
水を飲み終えると寝ていろ、と声がかかったので駿也は大人しくベッドにまた横になった。
そしてイルカをまた抱きしめる。
何かに縋っていないとおかしくなりそうな気がした。
「…あのな、黙って消えたりしないから安心しろ」
ずっと駿也の視線は六平を追っていた。
「……ん」
「具合は?」
「……だい、じょうぶ……」
自分から六平の姿を追っていたのに六平から視線を向けられれば駿也は視線を逸らせてしまう。
そしてまた六平が洗面器から絞ったタオルを額に乗せてくれた。
乗せてくれる時、六平の顔も近づいてきて思わず駿也はぎゅっと目を閉じてしまう。
顔が余計熱くなった気がする。
「顔赤いな…熱上がったか?体温計は?」
「あ、ここ…に…」
ベッドの小さな引き出しから出すと六平に測れ、と言われたので言われる通りに脇に体温計を挟んだ。
ピピッと音がしてみてみれば7度5分。
「…7度5分」
「微妙だな。やっぱ大人しく寝てろ」
それはいいけど…。
そう言って六平が椅子に座ったのに駿也はほっとしてしまった。
「あ、の……むつ、ひら…」
「何?」
「え、……ありが…」
半分布団に顔を隠しながら言えば、とう、は消えてなくなってしまったように聞こえただろう。
でも六平はうっすらと笑みを浮べた。
「いいから寝てろ」
「……ん…」
「いや、寝てろはいいけど、お前、食欲は?冷蔵庫勝手に覗かせてもらったけど何も入ってなかったぞ?」
「え、と…多分もうそろそろ家政婦さん来てくれるはず、……。昼と夜の分、用意してくれるはずだと…。多分。俺はあんま食欲ないから、六平は作ってもらって食べて…?」
六平が眉間に皺を寄せる。
何か面白くない事でも駿也は言ってしまったのだろうか…?
すると階下から物音が聞こえてくる。
そしてこんにちはぁと家政婦のおばちゃんの声。
「五十嵐は寝ていろ」
六平は立ち上がって部屋を出て行くと階段を下りていく音がする。
そして少しすると六平が戻ってきたのにほっとしてしまう。
どうにも六平の姿が見えないと落ち着かない。
いたらいたでも落ち着かないんだけど…。
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続きに拍手コメお返事です^^
MR様
おうちでナニ…
お熱あるので致しません(笑)
なかなかのろのろスピードでスミマセン^^;
ありがとうございます~^^
CHM様
副会長編では憎まれっ子役でしたが^^;
可愛くなっちゃいました(笑)
朝のチェックも、毎日もありがとうございます////
お宅訪問もなかなか進展せず…^^;
スミマセン(><)
ありがとうございます~^^
S様
はい、オちました(笑)
そりゃヤられちゃうでしょう~?(^m^)
ありがとうございます~^^
okw様
お世話様でございますm(__)m(笑)
弱ってると割増し可愛くなるでしょう~(笑)
寝てる間にお触りでした(^m^)
私はイルカが欲しい…(--;)
誰にも買ってもらえないから~(爆笑)
可愛いもありがとうございます~^^
テーマ : 自作BL小説
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