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会計クンは鷹揚自若 40

40 駿也(SYUNYA)

 足はもう泰明の手を煩わせることがない位によくなっていた。
 まだ痛みはあるから走ったりとか体重をかけるのは無理だけど、庇いながら歩くなら支障はもうほとんどない。

 泰明のお母さんが日曜日に車で家まで送ってくれて、泰明はお母さんを帰し、自分はそのまま駿也についてきてくれて、一緒に家に入った。
 1週間ぶりの自分の家、そして部屋。
 相変わらず家には誰もいない。それはそれでかえっていいのだが、自分の部屋はなんかさらに寒さが増したような気さえしてしまう。

 部屋で1週間留守番してくれてたのは泰明に貰ったイルカだ。
 ベッドにころりと横になっていたイルカを駿也は抱いた。
 「…なんだ?俺がいればイルカはいらないと言ったのに」
 「…だって…」
 駿也は泰明がいてくれたから寂しくはなかったけど…。

 「………駿也と三浦くん並んでるととてもじゃないがウザイ男子高校生には見えねぇな…」
 くっくっと泰明が笑っている。
 「駿也、足は大丈夫だな?」
 「ん」
 泰明の目がやさしく駿也を見ているのにドキドキしてしまう。
 こんなふうに見られるから自分は誤解してしまいそうになるんだ。
 思わずふっと駿也は視線を逸らせた。
 足はよくなった。
 家は誰もいない…。
 
 「………」
 駿也は考え込んだ。
 手を出す、って泰明は言ったんだからする気はある、んだよ、な…?
 昨日は結局キスもしてもらえなかったけど…。
 「駿也?」
 イルカを抱きしめたまま泰明に近づいた。

 「泰明…キス…して、くんない…の?」
 誘うように言った。
 「足、よくなった…よ…?」
 こくりと駿也は唾を飲み込む。
 自分からこんな事言うなんて…。
 でも泰明と一緒のベッドで眠った時、体温が気持ちよかった。
 泰明となら…。

 「駿也」
 泰明の手が駿也の頬に触れ、そして顔が近づいてきた。
 啄ばむように泰明がキスする。
 ああ、泰明はキスが嫌、じゃない、んだ…。
 ほっとした。 
 そして嬉しいと駿也の心が震えた。
 だって絶対嫌な、嫌いな相手だったらキスなんか出来ない。
 何度も何度も泰明がキスを重ねる。

 駿也はイルカを片腕に抱いて、もう片方の手で泰明の服を握ると泰明の腕が駿也の背中に回って力を入れて抱きしめられた。
 「ぁ…」
 小さく声が漏れたらその合間に泰明の舌が駿也の口腔に入ってきた。
 「んっ…」

 初めての濃厚なキスだ!
 泰明の舌が駿也の舌を掴まえて絡めてくる。
 粘着質の音が部屋に響き、寒いと感じた部屋だったけれど温度が上昇したように感じてしまう。
 いや、温度が上がったのは駿也の身体だ。
 夢中で駿也も泰明を求めた。
 好き…。
 もっと、して。駿也にだけ!

 他の人にはヤダ!
 強い思いが湧いてくる。
 「んっ……ぅ…」
 すると泰明もますます貪るように、駿也の口を覆うようにして激しく求められる。
 泰明がこんなにしてくれるなんて…。
 それだけで駿也は力が抜けそうになってくる。
 舌を絡めて、吸われて…。
 息が上がってくる。
 顔も身体も熱い。

 「た、い…め…」
 好き。
 いっぱいして…ほしい。
 泰明の腕がきつく駿也を抱きしめ、力の半分抜けたような駿也の身体をしっかりと抱きしめてくれていた。
 角度を変え、何度も…。
 昨日も一昨日もキスしてくれなかったのに…。
 まるで足りなかったといわんばかりに何度も何度も。

 ずくんと身体が震えてくる。
 そんな駿也を分かったのか泰明の背中に回っていた手がつっと駿也の背中を撫でるように下がっていった。
 「ぁっ…」
 小さく声が漏れる。
 身体が感じている。
 ヤバイ…。どうしよう…。
 思わず唇を離して泰明の胸に顔を埋める。

 「駿也…」
 泰明の声も上擦っていてさらにその声に駿也は反応してしまう。
 そして上気して頬が熱くなってるのが自分でも分かっていたけれど顔を上げて泰明を見た。
 「たい、めい…」
 泰明が…、泰明の目がぎらりと駿也を見ていた。
 いつもの平静な泰明の目と違う。
 熱に浮かされたような瞳。
 泰明もしたい…って思ってくれてる…?
 「泰明…」
 もっとキス…して…ほしい…。
 そう思ったら、泰明がもう一度キスしながら駿也を抱き上げ、駿也はイルカを持っていない方の腕を泰明の首に回した。
 
 

テーマ : BL小説
ジャンル : 小説・文学

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