51 駿也(SYUNYA) 「ちゃんと言った?」
「……い、言った、よっ」
三浦くんと柏木に並んで聞かれ、駿也が赤くなりながらも報告すれば三浦くんがにんまりと笑った。
「お前と違って五十嵐は素直だな」
「悪かったねっ!」
…え?
駿也は笑ってる柏木と顔を赤くして怒った風の三浦くんを見比べた。
生徒会の役員会があるというのでまたも駿也は三浦くんと柏木と一緒に泰明の終わりを待つ事になって三浦くん達のクラスで一緒にいた。
「で?」
「…で?」
さらに三浦くんが聞いて来たのに駿也が首を傾げた。
「六平さんもちゃんと言ってくれた?」
「あ……う、ん…」
かぁっと駿也が顔を赤くすると一緒に三浦くんまで顔を赤くした。
「柏木ぃ!五十嵐くんってさ!なんかこう…なんつぅの…?エロいって言うのと違うんだけど、なんか目惹かれるよね!」
「まぁ、お前より色気ある感じ?」
「どうしたらこうなる?」
「お前が?なんねぇだろ」
「え~~!!…副会長は?いっつもきりっとしてっけど」
「ゆき?」
副会長の名前が出たとたんに柏木がデレる。
うわぁ、と見てる方が恥かしくなりそうな顔で、自分もこんな顔になるんだろうか、と思わず柏木をじっと見てしまう。
「っていうか、ヤローばっかでこんな話おかしいだろ」
「だって学校にヤローしかいねぇじゃん」
あはは、と三浦くんが明るく笑い飛ばす。
「…ずっと秀邦なら分からなくもないけど…でも三浦くんも柏木も高校からなのに…」
「だって和臣は特別だもん」
「如だから、仕方ない」
それぞれがはっきり答えるのにぷっと駿也が笑った。
こんな風に笑いながら誰かと話出来るなんて今までなかったのに…。
「……全然印象違うんだけど…?」
三浦くんが駿也をじっと見ながら言った。
三浦くんを無視してた時、との事だ。
「…うん…。あん時は本当にごめん…ね…?俺…自分が悪いのに…全部三浦くんの所為にしてた…と、思う」
「いや、別に、いっけど!俺は何されたわけじゃないしっ」
あわわ、と三浦くんが慌てている。
「でも、ホラ!つんとした感じだったのに…今は全然…」
「俺…今まで…誰も友達とか、もいなかったし…分からなかった、から……。遊び行ったのも、泰明が…初めて…だし…。捻挫ん時もウチ忙しくて誰もいなくて…泰明が…。そんな人、今までいなかったから…。三浦くんにもちゃんと謝れ、って…だから」
「……全部六平さんのおかげ、って感じ?」
「ん」
駿也がこくりと頷くと柏木がう~ん、と唸っている。
「いや、少しつんとしてた方いいぞ?」
「え?」
「ぜってぇ六平さんイライラすっと思うなぁ」
「?」
柏木が教室に残っていたクラスメイトにちらっと視線を送っている。
一緒に駿也と三浦くんもそっちを見た。
するとじゃあな、とそいつらが慌てて鞄を持って教室を出て行った。
柏木が大きく溜息を吐いている。
「俺、貧乏くじだ…」
「?」
「なんでコイツらのお守しなきゃねぇんだ?」
お守?
「……って言っても仕方ねぇよなぁ…会長様には逆らえねぇし…」
はぁ、とまた柏木が溜息を吐き出していた。
それを帰り道に泰明に言ったら泰明がくっくっと笑った。
「これ以上ない適任だ」
「なんで?」
「なんでも。柏木の言う通りだ。ホント気が気じゃないな」
つっと泰明が駿也の頬に触れる。
その泰明の手を掴まえてそして縋りたい、と思ってしまった事に駿也は自分で何考えてるんだ、と顔を赤くして俯いた。
だっていつでも一緒にいたい、と思ってしまう。
もっと触って欲しいと思うし、キスもしたい。
いくらでもして欲しくて…。
どんなに自分は優しさとか好きという気持ちに飢えてるんだろう?
「駿也、ウチ来る?」
「う、ん…」
泰明の部屋に行ったら抱きしめてくれるだろうか?
また好きって言ってくれるだろうか?
キスもしてくれるだろうか?
すぐに駿也は頷いた。
「身体はひどくないか?」
耳元に泰明が小さく囁くのにさらに顔を真っ赤にしてしまう。
「だ、いじょう、ぶっ」
「う~~~ん…でもウチだと親いるからなぁ…できない、よな。まさか…。そうすると駿也の家の方がいいなぁ…。まぁ、今日はさすがに昨日今日で我慢出来るけど」
「た、た、たいめいっ」
一体何を言ってるのか!?
恥ずかしいっ!
「え?なんで?駿也はもうしたくない?」
そ、そんな事はないっ。
ふるふるとすぐに首を横に振った。
「嫌じゃないみたいでよかった」
くすと笑う泰明にやっぱりどうしたって泰明は余裕たっぷりだと思ってしまう。
テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学