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ライオンとウサギ 134

ウサギ

 「……動けない」
 「うん。いいですよぉ。雪兎さんは今日は動かなくて」
 獅王のベッドの中で獅王が雪兎を抱きしめながらキスする。
 結局昨夜はそのまま階下に下りる事なく眠ってしまった。
 「ん……?」
 汗と体液でぐちゃぐちゃになってたはずなのになぜか身体がさらさらだ。

 「朝方風呂場で流しましたよ?ちなみに今はもうお昼近く。勝手にで申し訳ないですけど図書館には電話しておきました」
 「え…お昼!?」
 「そう」
 頬にも湿布が張られており雪兎が意識を失うように眠った後も獅王は色々甲斐甲斐しく動いてくれていたらしい。

 「おなかすいたでしょう?母親は丁度買い物に行ったみたいだし下行きます?」
 「……ん」
 顔を合わせづらいと思っていたので丁度いいと雪兎は頷いた。
 「獅王大学は?」

 「自主休講。雪兎さん放っておけないですもん。今日位はね。代返頼んだし大丈夫です」
 獅王は雪兎を軽々と抱き上げて部屋を出て階段を降りていく。
 「雪兎さんドア」
 廊下も階段も広いので雪兎を抱いたままでも壁にぶつかる事もなく雪兎が手を伸ばしてリビングのドアを開けた。

 誰も家にいないと思ったからこそ獅王にお姫様抱っこされたまま甘えていたらリビングにクライヴの姿があって雪兎は驚いた。
 「ウサギ…大丈夫?」
 クライヴは携帯で音楽を聴いていたらしくイヤホンを外しながら雪兎に碧い瞳を向けた。
 「だ、だ、だ、…いじょうぶ…」

 …って何がだ?
 クライヴが雪兎を気遣う…!?

 雪兎は大きく目を見開いたまま獅王に抱かれていて、慌てて下ろせと暴れると獅王が笑いながら雪兎をクライヴとは向いのソファに座らせてくれた。
 「ご飯こっちに持ってきてあげますね」
 獅王がそういってキッチンの方にいなくなってしまうとどうにもいたたまれない。

 「動けない?だろうね?連日だし?昨日なんてずっとだし?」
 ひくっと雪兎は息を飲み込み、顔をこれ以上ない位に熱くさせた。
 「あ…ぁ……の……ごめ…」
 どうしよう!と慌てていると獅王のパジャマを着せられていた雪兎の首元を見てクライヴが呆れたように溜息を吐き出した。
 
 「別に?…独り身のこっちにしたら目の毒耳の毒だけど」
 「ご、ご…ごめ…」
 頭がくらくらしてきてしまう。
 「あんなのに付き合ってたらアンタ壊れちゃうんじゃないの?」
 「いや…平気」
 今だって本当は動こうと思えれば動けるんだけど、獅王に甘えただけだ。

 「案外タフなのな…。声もエロかった…」
 え、え、…エロ…い…って。
 クライヴが鼻をかきながら雪兎からつっと目を逸らす。
 「真面目そうで面白みなさそうと思ってたけど…今も…エロいな…。なるほど…純和風もいい…」

 クライヴが手を伸ばしてきて雪兎のホクロのある目元に触れた。
 どうしたんだろう?なんか打って変わって好意的な気がする。

 「僕はあと一週間でイギリスに帰るけど今度来たら?」
 「え?…ああ…と、獅王が一緒に行こうって言ってた」
 「ふぅん」
 いいけどクライヴの手が雪兎の顔を撫でている。

 近くで見るとますます綺麗な王子様みたいな顔だ。物語に出てきそうな、と乙女チックな事を思ってしまった。
 獅王の髪も金髪かかっているし、目もはしばみ色で綺麗だけどクライヴは金髪碧眼でちょっとどきっとしてしまう。
 「頬…痛いか?」
 「あ?いや?そうでも…」
 「…悪かった」
 素直に謝罪を口にしたクライヴに雪兎は目を瞠った。

 「こら!雪兎さんに触るな!雪兎さん!なんでそんな簡単に触らせてるの!」
 「…え?」
 獅王が食事を手に持って顔を顰めている。
 「いいだろう?だって家族なんだろ?レオの嫁から僕の嫁になっても家族には変わりないじゃないか」
 「あるにきまってるだろう!ふざけるな」

 ちょっと待て?獅王の嫁は…まぁ分かる。
 だけど…。
 雪兎が獅王の方にゆっくり視線を向けた。

 「ん?何?雪兎さん」
 「変じゃないか…?」
 「僕の事?別に変じゃない。僕は後ろでも前でもどっちでもいけるし。ウサギは僕を見捨てないから…守ってくれるって言ってくれたからな」
 「ちょっと待て。クライヴ?いい加減にしろ?」
 獅王がクライヴに向かって騒ぎ始める。クライヴも負けじと言い返している。

 「あ、僕は三人でもいいぞ?」
 「誰も頼んじゃねぇ!」
 雪兎は頭を抱えてソファに沈み込んだ。
 なんか…変…。
 
 そこに帰ってきた獅王のお母さんはおっとりして雪兎の取り合いをしているまるで小さな子のような二人にただ笑っていた。


※明日朝おまけとあとがきです~


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