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2014.04.05(土)
「高宮ぁ、寝てたわけでもなさそうだったのにどうした?」
休み時間になって後ろの席の戸田が話しかけてきた。
同い年のはずなのに先生と同じ位背の高い戸田と並ぶと日和はまるで子供みたいだ。
戸田は一見いじめっ子のようなイメージで最初は日和はすごく苦手だった。
はきはきして自分に自信があるようで背も高くて身体もがっしりしていて…小学校の時からずっと苛められてたやつにタイプが似てて、戸田を見た時日和はまたいじめられるんじゃないかと思ってぞっとした位だ。
日和は自分が内向的でおどおどして人前ではっきりと話すことも出来ないし、身長も男子の中では前から1、2番目でどうしても積極的という言葉からはかけ離れているのは分かっている。
そしてそんなのがはきはきした人にイラつく、と言われるのも分かる。
だから最初は戸田が苦手だ、と思ったんだけど、戸田はずっと日和を苛めてきたヤツとは違ったらしく、もずもずと日和が話すのにもイラつく様子もなく話しかけてくれるのに自分の偏見だったと反省した。いつも気さくに話をしてくれるしにこにこと笑顔でゆっくり話す日和の事を待ってくれる。
高校で新しい友達なんて出来るのだろうか、と不安だったけど、そんな戸田のおかげでクラスに馴染んできたと思う。
「え…と…ちょっとぼーっとしてた」
「寝てるんだったら背中突いて起こしてやるけど、頭上がってたしどうしたのかと思った」
ぷっと戸田が笑う。
高校に入ってもう二ヶ月になる。
それなのに先生と話しなんか出来ていない。
このまま夏休みに入っちゃう?そしてこのまま3年間過ぎちゃうの?
…そんなのヤダ…。
前みたいに話ししたいのに…。
日和だけのおにいちゃんでいてほしいのに…。
きっと戸田みたいだったら気軽に誰にでも話しかける事が出来るし、日和みたいにぐじぐじしていないだろう…と羨ましくなる。羨ましがったって日和が変わるわけじゃないけど。
日和が顔を俯けると戸田がどうした?と日和の顔を覗きこんできた。
「え!あ、なんでもないよ!」
「そう?何かあったら言えよ?相談乗るぞ?…何?高宮、もしかして好きな子とかできたのか?」
「な、な、な、…何…言ってっ」
かっと日和の顔が熱くなってくると戸田も気づいてにたっと笑った。
「お?図星か?」
「ち、違う、よ!」
好きな子…なんて…。
そんなどこじゃない。気になるのは先生の事ばかりなのに!
…先生を好き…って事なら合ってるかもしれないけど…。どうなんだろう?自分でもよく分かってないんだ。
だってずっと小さい頃から日和にはおにいちゃんだけがすべてだったから。それは今でも変わってない気がする。
頑張って頑張っておにいちゃんが高校で先生してるって聞いて、頑張ってようやく入った学校だったのに。誉めてくれるかと思ったのに…。
入学式で日和の顔を見て先生は大きく目を見開いたんだ。
だから絶対日和だって分かったはず。名前だって!
それなのに…全然…。
「高宮?」
「え?」
「どした?泣きそうな顔になってるぞ?」
「……なってないよ?」
「そうか?」
先生が話してくれないって一人でぐじぐじしてるなんて…。
だからきっと先生は日和に話しかけてもくれないんだ。また日和の面倒見るのが嫌だから、きっと…。
じゃあ、どうしてあんな事したんだろう?
じゃあどうしていいよ、なんて言ったんだろう?
あれはいつだった?
日和がまだ小学校に入ったばっかりの頃だっただろうか?
そうすると先生は…高校一年位?丁度今の日和と同じ位?
…でも子供っぽい日和と違って先生はもっと大人だったように思う。
自分が小さかったから大人に見えたのだろうか…?
ううん…きっと今の日和より先生のほうがきっとずっと大人だ。
そしてその差はさらに広がっている気がする。
年は今はもう日和が15、先生は誕生日すぎてるので25。学年は9コ違いだけど、誕生日が日和が3月生まれで先生は4月生まれだからいつも10歳違うのと同じだ。
誕生日の日もおめでとうと言いたかったのに言えなくて。
クラス担任になって女子に囲まれてセンセー誕生日おめでとう、なんて言われてて…。
すごい嫌だった。
小さい頃はそんな事なんか思った事もなかったのに。
今はすごく自分が自分を嫌いだ。
自分から話しかけられないのも。そのくせ先生を独り占めしたくてしょうがなくて、それなのに見てももらえないのが情けない。
でもやっぱり頑張って先生のいる学校に入ってよかった。
授業中だったら…名前だけでも呼んでもらえるから。