尾崎から連絡が来たのは二日後だった。
どういうルートで話をしたのか克己には分からなかったが、どうやら特殊部の話は本当だったらしい。
一度一緒に来てもらえますか?と尾崎が克巳の大学まで迎えに来てそのまま警視庁に連れて行かれた。
尾崎が警察というのも本当で、尾崎は胡散臭いながらも確かに嘘はついてはいなかった。
色々検査とかされ、何かの時には警察に協力をという話になった。
誰か他に克巳みたいな人はいないのか、と思ったが誰とも会えずじまいで、そこには克巳は少しがっくりしてしまった。誰かいるのかと思ったがどうやらいないらしい。
まぁ、警察が表立って超能力者募集、なんてするわけないだろうしそんなものかと克己も思っただけだ。
警察に協力とはいっても何をどうすればいいのか…。
カードが見えたからといって何の役にも立たない気がする。
そして検査だとか何かあって克巳が呼ばれる度についてくるのは尾崎の仕事になった。
その尾崎は交番勤務から突然の警視庁の刑事課に特例で移動になったらしい。
そして何かあった時には克己の担当という事らしい。
尾崎の目論見どおりに事は上手く運んだらしく尾崎に感謝された。だが、克己には何も結局変わりはない。
克己が呼ばれなければ尾崎と関わる事も、警察と関わる事もなく、普通にただ大学生をやるだけだった。
検査の時は尾崎は黙って克己の傍についていた。
ESPカードを当てるのは勿論全部見えるのでパーフェクト。脳波を取りながらカードを当てたりした事もあった。
そんな克己に特殊部の担当だという人達は驚きながらも克己を認め、それでいて変な目を向ける事もなかった。
そこはちょっとへぇ、と感心した。
それに尾崎も。
見える事は言っていたが克己が淡々とカードを当てても何しても尾崎には興味がないのか驚きもしないし、変な目もしなかった。
…変わったやつだな、と克己は思っていただけだ。
でも奇異の目で見られないのは居心地がいいとも思えた。
変に自分を隠す事をしなくてもいいのだ。
それが劇的に変わったのは高校生の子が現れてからだ。
事件に巻き込まれた人の気持ちが読める子だった。
署で一緒に会って欲しいと言われて克巳は勿論頷き、どんな子なのだろうと期待しながら待つと現れたのはかわいい子だった。人見知りなのか連れてきた刑事の後ろに隠れるような子で、そしていい子だった。
仲間…。
克巳も思ったが、その子、紺野 唯くんもそう思ったらしい。
この子も本物で、克巳が触れて考えた事が口に出さなくとも唯くんに伝わったのは確認した。
初めて現れた仲間といっていい存在に克巳は自分からも積極的にメールしたりした。誰にもそんな事したことはなかったけど、仲間とも思ったし、唯くんだから、というのもあった。
可愛い、と素直に思えた。
弟なんていたらこんな気持ちだったのだろうか、と思う位だ。
事件の後も色々何かあったらしいがそれも全部解決しました、とメールがきて克巳も安堵した。
そして夏休み突入だった。
唯くんも夏休みで克巳と二人で色々力について試したいからとあらかじめ言われていて、勿論克巳は了承していたし、唯くんもだ。
誰かと色々話がしたいなんて思った事は初めてだった。
そんな夏休み初めて唯くんと一緒の日、唯くんは担当の武川刑事と一緒に姿を現せた。
「こんにちは」
唯くんが克巳を見てぱっと顔に笑みが浮かんだ。表情も素直に出て可愛い。自分があまり表情が変わらないのは分かっているが、唯くんはそんな事も気にならないのか克巳に対して好意的な目を向けてくれる。
「こんにちは」
「あれ?江村さんだけ?尾崎さんは?」
「尾崎は自分の仕事に行ったよ」
「そうなんですか…?…航さんはいいの?」
「いいよ」
唯くんは武川刑事の腕にくっ付いて聞き、武川刑事はそんな唯くんに甘い顔をしている。
あれ…?
唯くんの首にキスマークが見える。
キスマーク…?だよな…?
まだ高校一年で、その中でも幼いと言っていい位に可愛らしい外見なのにキスマーク…。
武川刑事と一緒に住んでるって言ってたけど…もしかして…?
じっと武川刑事を見るとその人が克巳に視線を向けた。
そして厳しい目で克巳を見たまま唯くんの肩をぐっと抱きしめていた。
…もしかして嫉妬を向けられているのでは…?
克巳は苦笑を漏らしてしまった。
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